『THE BATMAN－ザ・バットマン－』タイムリミットは３時間！？嘘と暴力が蔓延る謎解きに挑戦してみては。

2022.03.09

◆今週公開の注目作
『THE BATMAN－ザ・バットマン－』

文：片山大輔（映画と珈琲とキット・フィストー）

映画をあまり観ない、観るけどそこまで詳しくないという方でも、コウモリのエンブレムを掲げ、漆黒のスーツに身を包んだ彼の名は知っているのではないでしょうか。これまで、数々の俳優が演じ、個性の異なる監督によって実写映画化されたDCコミックの人気ヒーロー「バットマン」。待望のシリーズ最新作となる本作では、5代目バットマン役に『トワイライト』シリーズなどで知られるロバート・パティンソンが抜擢されました。『トワイライト』シリーズで魅力溢れるヴァンパイア役を演じた彼が、コウモリのダークヒーローを演じる。この繋がりにネットでも公開前から期待感を募らせる反応が見られました。

舞台はハロウィンの日のゴッサム・シティ。街は仮装をした人で溢れるなか、市長のドン・ミッチェルJr(ルパート・ペンリー＝ジョーンズ)が殺害されます。犯人は自分のことをリドラーと名乗り、現場にバットマン宛てのメッセージを残します。これを受け、バットマンことブルース・ウェインは、刑事のジェームズ・ゴードン(ジェフリー・ライト)とともに事件の捜査を開始。ある日、リドラーが残したメッセージには、「次の犠牲者はバットマン」という文字が。捜査が進むにつれて、マフィアのペンギン(コリン・ファレル)やナイトクラブで働くセリーナ・カイル/キャット・ウーマン(ゾーイ・クラヴィッツ)も絡み、リドラーの目的や陰謀、ゴッサムシティの謎など、事件の暗部に深く入り込んでいきます。まさに謎解きサスペンス・アクションとなる本作は、歴代のバットマン色とは異なる作品に仕上がっています。

メガホンをとったのは『クローバーフィールド』『猿の惑星』シリーズで知られるマット・リーヴス監督。本作はDC映画(DCエクステンデッド・ユニバース)とは、独立した内容になっているのが特徴です。そのため、最近のDC映画とは、雰囲気も演出もかなり異なっており、ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』(19)に近い、キャラクターの内面を描いた芸術路線の映画になっています。映像・音楽・アクションのどれもがカッコよく、主演のロバート・パティンソンは、歴代のバットマンを演じた俳優たちと比べても勝るとも劣らない素晴らしい演技を魅せてくれました。

前述のとおり、本作の最大の特徴は謎解き・サスペンスの要素が濃いことです。それもそのはず、知能犯リドラーが仕掛ける殺人事件は、実際にアメリカで起こったゾディアック事件を基にしていると監督は言います。そのため、作風や事件の流れはブラッド・ピット主演の映画『セブン』(95)に似ています。なので、『バットマン』シリーズ未体験の方でも問題なく没入できる内容になっています。また、本作は3時間近い長編であり、『ダークナイトライジング』(12)を抑えて、バットマン単体の映画としては、史上最長になるという点も特徴の一つです。3時間の時間制限付きで、謎を解いた先に「これが観たかった！」そんな答えがあるのか、シリーズ最新作『THE BATMAN－ザ・バットマン－』という謎解きに挑戦してみてはいかがでしょうか。

【ストーリー】
世界の《嘘》を暴け。本性を見抜け。
優しくもミステリアスな青年ブルースは、両親殺害の復讐を誓い、夜は黒いマスクで素顔を隠し犯罪者を見つけては力でねじ伏せ、悪と敵対する存在の“バットマン”になろうとしている。ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラー。ヤツは犯行の際、必ず“なぞなぞ”を残し、警察や世界一優秀な探偵のブルースを挑発する。いったい何のために犯行を繰り返すのか？そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪…。追い詰められたその時、彼の心の中で、何かが音を立てて壊れ始めた―。あなたは世界の嘘を暴き、人間の本性を見抜けるか――。

【キャスト】
ロバート・パティンソン、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ゾーイ・クラヴィッツ、ジョン・タトゥーロ、アンディ・サーキス、ジェフリー・ライトほか

【スタッフ】
監督：マット・リーヴス
脚本：マット・リーヴスマットソン・トムリン