『ナイル殺人事件』ミステリーの“金字塔”が再び劇場に帰ってくる！ナイルは愛憎渦巻く殺人事件をどこに運ぶのか。

2022.02.23

◆今週公開の注目作
『ナイル殺人事件』

延期に次ぐ延期を経て、ついに本作『ナイル殺人事件』が公開される。「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの『ナイルに死す』を原作としており、映画としては2017年の『オリエント急行殺人事件』の続編となる。名探偵エルキュール・ポアロの名やタイトルは知っていても、これらの原作が書かれたのはもう90年近くも前のことだ。ミステリーゆえ、オチを知る方にとってはどうしても面白さが半減してしまうが、原作未読の方も多いだろうし、実はそれほど多くない古典ミステリーの映画化だ。ありがたい企画である。

前作で豪華列車、オリエント急行で起きた事件を解決したポアロはまたしても、エジプトのナイル川を行くクルーズ船での殺人事件に遭遇する。エジプトと言えばピラミッド、日本語で言えば金字塔だ。そしてピラミッドと言えば三角形(正しくは四角錐だが)。そう、今回重要となるのは登場人物の三角関係だ。大富豪の娘で新妻のリネットが殺されるが、その夫サイモンは元々リネットの親友ジャクリーンの婚約者だった。ジャクリーンの恨みによる犯行の線が濃厚だが彼女には確固たるアリバイがあって…。

ちなみに、「ライバル(rival)」のスペルは「リバー(river)」と似ているが、語源は本当に川を指すラテン語だ。その派生語が「水という共通の資源を奪い合う関係」を意味するようになり、「ライバル」へと至ったのだ。今回奪い合われたのは水ではなく愛だったが、なくては生きていけないものという意味ではどちらも同じだろう。愛を手に入れたはずのリネットが死に、奪われたはずのジャクリーンが生きているのは皮肉だが。とにかくナイル川は三途の川と化し、金に困っていないリネットはそのまま渡し賃を払って向こう側へ行ってしまった。

『オリエント急行殺人事件』と同じく、本作も豪華な仕上がりだ。リネット役は『ワンダーウーマン』のガル・ガドット、サイモン役は『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー、ジャクリーン役はNetflixオリジナルドラマ『セックス・エデュケーション』のエマ・マッキーと、きらびやかなクルーズ船にも負けないゴージャスなキャスティングで、犯人が読めないオールスター映画となっている。監督のケネス・ブラナーが自ら演じるポアロのチャーミングさも健在で、彼に関する新たな過去も掘り下げられる。

実は、アガサ・クリスティは自分の作品に最も多く登場させたこの名探偵のことを気に入ってなかったと言われているが、ポアロのシリーズを全て読破したケネス・ブラナーのポアロ愛を始め、本作は確かに愛に満ちている。憎悪も愛の裏返しだし、水のようにいつだって愛が人を生かし人を殺させるのだ。事件は解決できても、この愛というミステリーはポアロにすら解けない難解な謎なのかもしれない。さあ、ナイルの流れに身を任せよう。決して沈まぬように、でも愛に溺れながら。

【ストーリー】
アガサ・クリスティ原作“世界一の名探偵”ポアロが挑む、エジプトの神秘ナイル川をめぐる極上の《ミステリー・クルーズ》。大富豪の美しき娘の新婚旅行中に、クルーズ船内で起きた連続殺人事件。容疑者は、結婚を祝うために集まった乗客全員…。豪華客船という密室で、誰が何のために殺したのか？そして、ポアロの人生を大きく変えた≪衝撃の真相≫とは？愛と嫉妬と欲望が複雑に絡み合う、禁断のトライアングル・ミステリーの幕が開く。

【キャスト】
ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー、エマ・マッキー、トム・ベイトマン、レティーシャ・ライト、アネット・ベニング

【スタッフ】
監督：ケネス・ブラナー
脚本：マイケル・グリーン
製作：リドリー・スコット、マーク・ゴードン、サイモン・キンバーグ、ケネス・ブラナー、ジュディ・ホフランド
製作総指揮：マシュー・ジェンキンス、ジェームズ・プリチャード
原作：アガサ・クリスティ (原作：「ナイルに死す」)

配給：ディズニー
© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト：https://www.20thcenturystudios.jp/movies/nile-movie

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屋我平一朗

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