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『猿の惑星/キングダム』ヒトなど、言葉も喋れない獣に過ぎない。今や、“彼ら”こそが新たなるAPEx Predator。

◆今週公開の注目作

『猿の惑星/キングダム』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

洋画でこれまで最も長期間続いているシリーズと言えば、すぐ思いつくのは『007』(1962~)や『スター・ウォーズ』(1977~)などだろう。今回さらなる新作が公開となる『猿の惑星』シリーズ(1968~)もそうである。有名すぎるそのオチは、映画本編を見たことがない方ですらもご存じかもしれない。人種問題や支配する者・される者の逆転をテーマにしており、旧シリーズは『猿の惑星』『続・猿の惑星』『新・猿の惑星』『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』の5部作となっている。その後に、旧シリーズとは無関係のティム・バートンが監督したリメイク……いや、彼の言葉を借りればリイマジネーション作品(基本設定は残しつつその他はオリジナル設定)となる『PLANET OF THE APES/猿の惑星』も作られた。

そして、2010年代には再びシリーズがリブートされ、新たな3部作が誕生した。現代の地球を舞台に、地球が“猿の惑星”へと変貌していく様子を描いた『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の3作だ。話を簡単におさらいしよう。アルツハイマー病の新薬開発における動物実験により猿(エイプ)の知能が劇的に上昇した後、猿は自分たちを虐げてきた人間と対立。新薬は人間にとって致死的な「猿インフルエンザ」感染を引き起こし、人類は絶滅の危機に瀕する。シーザーと名付けられたリーダー猿は戦いを避けようとするものの、猿と生き残った人間との溝は深く戦争が勃発。同族を殺す人間と違って「猿は猿を殺さない」という絶対の掟を守っていた彼もそれを破る羽目となり、争いは壮絶なエンディングへ向かっていく……。

そしてシリーズ10作目となる最新作『猿の惑星/キングダム』。公式では“完全新作”と謳われ、あまりはっきりとは言われていないが、本作は『聖戦記』から約300年後の設定となっている。そのため、続編と呼んでも差し支えないはずだ。本作を楽しむ上で前作までの予習は必須ではないものの、一応お伝えしておくと、前作で猿インフルエンザの影響を受けた人間は生き残っても知能が低下し言葉を喋れなくなることが判明している。本作に登場するほとんどの人間はかつての猿のような状態になっているが、「メイ」と名乗るヒロインはなぜか言葉を喋れている。さらに、メイを演じるフレイヤ・アーランには「ノヴァ」という役名もついている。これは『聖戦記』に出てきた言葉を喋らない少女と同じ名前だ。300年も未来の話のはずなのに、謎が謎を呼ぶ。

暴力的な猿の軍団を統べるボスは「プロキシマス・シーザー」。「プロキシマス(Proximus)」はラテン語で「次の」を意味するので、彼の名は「次なるシーザー(皇帝)」となる。かつてのシーザーの名は300年後にまで語り継がれており、プロキシマス・シーザーは虎の威を借る狐……もとい猿のようだ。シーザーと、名前でなく「人類との共存」という姿勢を同じくしているのは主人公の猿・ノアの方であり、彼の力によって今度こそ両者は手を取り合えるのかが大きなポイントとなる。一説によれば実際の人類はエイペックス・プレデター(Apex Predator、頂点捕食者)だが、本シリーズにおいてはもう違う。まさしくエイプ(Ape)こそがエイペックス・プレデターなのだ。

これまでシーザーのモーションキャプチャーを担当してきたアンディ・サーキスは本作に関わっておらず、ノア役は若手俳優のオーウェン・ティーグに引き継がれているが、サーキスはCINEMABLENDのインタビューにて本作を絶賛している。元々、オリジナル版の『猿の惑星』では猿の特殊メイクが高く評価された。本作でも、猿の表情や動きなどは目を見張るほど精巧だ。ノアは、皆を救い出す方舟となれるのだろうか? ノヴァ(Nova、ラテン語で「新しい」)は、その名の通り人間にとって新時代の先駆けとなるのだろうか? かつて『2001年宇宙の旅』において、猿は他の猿を殺すことで人間へと進化したと描かれていた(今は否定されているキラーエイプ仮説に基づいている)。未来の猿は、獣となった人類にとっての希望となりうるのか。その答えは、劇場の白いモノリスの中にしかない。

【ストーリー】
今から300年後の世界、猿たちは絶対的支配を目論み、巨大な帝国<キングダム>を築こうとしていた。一方、人類は退化し、まるで野生動物のような存在となっていた。そんな世界で生きる若き猿ノアは、ある人間の女性と出会う。彼女は人間の中で“誰よりも賢い”とされ、猿たちから狙われていた。猿と人間の共存は不可能なのか。はたして、この世界で生き残るのは――。

【キャスト】
オーウェン・ティーグ、フレイヤ・アーラン 他

【スタッフ】
監督:ウェス・ボール

 

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