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『ベイビー・ブローカー』韓国映画界のオールスターが是枝監督作品に集結!

◆今週公開の注目作

『ベイビー・ブローカー』

 

文:大西D(ヒカセン兼業ライター)

 

世界中から注目を集めている韓国映画を日本人監督が撮る。そのメガホンを取るのは、カンヌに愛される男、是枝裕和だ。外交面では関係がすっかり冷え込んでいる日本と韓国だが、映画をはじめとするエンタメは交流が盛んだ。本作『ベイビー・ブローカー』は是枝裕和が脚本・監督などを務め、ソン・ガンホやカン・ドンウォンを始めとする韓国映画を代表する名優が集結したドラマ作品だ。

諸般の理由で親が育てることが出来ない新生児を預かるベイビーボックス。そんなベイビーボックスに預けられた赤ちゃんを高値で売りさばく「ベイビー・ブローカー」という仕事をしていたクリーニング店を営むサンヒョンと、児童養護施設出身のドンスはある日、預けられた赤ちゃんを連れ去るが、思い直して戻ってきた母親にバレてしまう。そして成り行きで、その赤ちゃんの養父母探しに付き合うことになる。

日本では「赤ちゃんポスト」として知られており、韓国にも実際にこういったものが存在する。是枝監督はそんなベイビーボックスに預けられた赤ちゃんを巡って繰り広げられる人間模様を、丁寧に描く。赤ちゃんを売るなんて、どんな極悪人かと思うかもしれないが、そこは是枝監督。決して彼らに悪人のレッテルを張り付けることなく、彼らの物語を丁寧に描き出す。そこには韓国社会の暗い部分が見え隠れしており、これは『万引き家族』を始め、これまでも是枝監督にも通ずる。『パラサイト 半地下の家族』などでも描かれているが、韓国は貧富の格差が激しい国だ。赤ちゃんを売るという後ろ暗い裏稼業には、そういった社会の闇を垣間見ることが出来るだろう。
韓国を代表する名優たちの共演も見どころだ。ソン・ガンホにカン・ドンウォンはもちろん、「国民の妹」と称される人気絶頂のIU(イ・ジウン)、日本でも大ヒットした『梨泰院クラス』のイ・ジュヨンも出演している。世界を席巻する韓国エンタメ界のオールスターが集まったと言っても過言ではないのだ。

そしてもう一人忘れてはいけないのがペ・ドゥナである。『リンダ リンダ リンダ』や『グエムル』などに出演する韓国映画界を代表する女優だが、何と言っても是枝作品は『空気人形』以来実に13年ぶり。『空気人形』では心を持ってしまったラブドールという役どころだったが、本作ではベイビー・ブローカーたちを追う刑事役。是枝作品でまたペ・ドゥナが見れるのは何とも嬉しい限りだ。(そしてソン・ガンホとは『グエムル』で共演しているではないか!!)

本作は先日開催されたカンヌ国際映画祭でも男優賞を受賞した。日本人監督であっても実績があれば、日本でなくても映画が撮れるし、映画が認められる時代になった。是枝監督は前作『真実』でもフランス映画を撮っているが、あちらは日本資本が入っている。しかし本作は100%韓国資本の韓国映画。実績さえあれば、日本でなくとも自分が撮りたいと思う映画を撮れる時代になったのだ。もしかするとこの映画は日本で活動する映画人の海外進出を後押しする大きなきっかけになるかもしれない。そういった意味でも見逃せない作品だ。
日本と韓国の才能が集結した『ベイビー・ブローカー』は間違いなく必見作だ。

【ストーリー】
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追うが……。

【キャスト】
ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン

【スタッフ】
監督・脚本・編集:是枝裕和

公式HP:https://gaga.ne.jp/babybroker/
2022年/韓国/130分
(C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

6月24日より全国公開

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