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『ノートルダム 炎の大聖堂』あの日の忌まわしい炎が再び燃え上がる。いざ、失われゆくものを守るための闘いへ。

◆今週公開の注目作

『ノートルダム 炎の大聖堂』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

2019年4月15日、フランスのパリにある世界遺産が炎に包まれた。「我らの貴婦人(聖母マリア)」の名を冠したノートルダム大聖堂だ(思えば、沖縄の首里城が火災に見舞われたのは同年の10月だった)。ノートルダムは宗教的な意味でも、またそれにとどまらない象徴的存在という意味でも、フランス国民にとって重要な場所だった。いや、ディズニーアニメ『ノートルダムの鐘』やビクトル・ユーゴーの原作小説『ノートルダム・ド・パリ』が世界中で愛されているのを考えると、まさしく世界の人々にとっての宝だったと言えるだろう。ノートルダムは1225年に建造された。実に794年の歴史が一夜にして焼け落ちたのだ。火は全ての文明の始まりと言われるが、今なお全ての文明を終わらせる力も持っている。

『ノートルダム 炎の大聖堂』が描くのは、この火災の始まりから終わりまでだ。しかし、『タワーリング・インフェルノ』や『バックドラフト』など多くの火災映画とは一線を画している。宣伝で用いられている「死者ゼロ」という謳い文句は、民間人を対象にして言っているのではない。もちろん民間人の犠牲も出なかったのだが、本作はむしろ多くの文化財が守られたこと、そしてそれ以上に消防士の犠牲が出なかったことを称えているのだ。

「下は大火事、上は洪水。これなーんだ?」というなぞなぞがある。もちろん答えは風呂だ(若者には理解し難いかもしれない)。「大火事」を溶岩と解釈するなら、温泉も答えになりうるだろう。では逆に、「下は洪水、上は大火事」、これは何だろう。答えは今回のノートルダムの火災だ。温泉と言えば地獄めぐりが有名だが、大聖堂にこの例えをするのも不謹慎だが、こちらも地獄としか言えない状況だった。

出火元は屋根裏だったため、消防隊は数百段ある狭い階段を上ってからでないと消火活動に当たれなかった。消火設備も老朽化しており、中々必要な水圧が得られず放たれた水は力なく地面に落ちるのみ。また、建物の至る所に鉛が使われていたので、それが溶け出した。鉛の融点は約327℃だ。空には硫黄を含む黄色い毒性の煙が上がり、消防隊員の頭上には瓦礫と鉛の雨が降る…といった具合だ。実物大のセットを建てそれを炎上させて撮られたというだけあり、実際のニュース映像の挿入も相まって、ドキュメンタリー的な、生中継を見ているような臨場感がある。崩壊していく象徴を呆然と眺める民衆が道路を塞いでいたり、文化財なので開かないドアも安易に蹴破れないことが消火活動の妨げになるもどかしいシーンもあり、すでに過去の出来事ながら画面からは常に緊迫感が漂っている。

当時、ある大国の元大統領がノートルダムの消火活動についてご親切なアドバイスをしたのだが、本作を見るとそれがいかに的外れだったのかが分かる。いつでも、何事も、作るより壊す方が簡単だ。それだけに、壊れゆくものを必死で守ろうとした人々の熱き勇姿は、残念ながらこれが初めてのノートルダム“観光”となった観客の目にも焼き付いて離れないことだろう。

【ストーリー】
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で大規模火災が発生。
いつものようにミサが行われていた火災当日の夜、警報器が火災の検知を知らせる。しかし、誤報だと思い込み、速やかな対応を取らない大聖堂の関係者たち。その間にも火は大聖堂の中を燃え広がっていく。消防隊が到着した頃には、大聖堂は燃え上がり、灰色の噴煙がパリの空高くまで昇っていた。大聖堂内の消火活動は狭く複雑な通路が行く手を阻み、かけがえのないキリストの聖遺物の救出は厳重な管理があだとなり困難を極めていく…。そしてついに、マクロン大統領の許可を得て、彼らは最後の望みをかけた作戦を決断する。大聖堂の外に集まった人々が祈りを込めて歌うアヴェ・マリアが鳴り響く中、決死の突入を試みる勇敢な消防士たちの運命は―。

【キャスト】
サミュエル・ラバルト、ジャン=ポール・ボーデス、ミカエル・チリニアン ほか 

【スタッフ】
監督:ジャン=ジャック・アノー(「愛人/ラマン」「薔薇の名前」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」)

(2021年/フランス・イタリア/110分/カラー/ビスタ/4K/5.1ch・7.1ch/フランス語/字幕翻訳:宮坂愛/字幕監修:サニー カミヤ /原題:Notre-Dame brûle)
配給:STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:notredame-movie.com
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4月7日(金)IMAX®️他全国劇場にてロードショー

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