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【今週公開の注目作】『プライベート・ケース』原因ってな、200種類あんねん。

◆今週公開の注目作

『プライベート・ケース』
7月24日(金)、HTC有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

科学は日進月歩で発展している。人間の脳内の映像をアウトプットする研究も進んでおり、すでにそれはある程度成功しているようだ。しかし、未だに他人の思考を完全に理解することはできない。身近な人相手に思考を2~3割読むのさえ、一朝一夕にはいかない。無意識の領域があるから、自分の思考ですら100%理解しているとは言い難い方が多いのではないだろうか。だからこそ、“隠された自分の本性”を教えてくれる占いや「○○診断」などが流行り続けているのだろう。我々は血縁のみならず、血液型にさえ縛られている。

本作『プライベート・ケース』では、名優ジョディ・フォスターが自身の幼少期からのスキルである流暢なフランス語を全編にわたって披露しながら、精神分析医リリアン役として患者ポーラの心の秘密に迫ろうとする。ただし、ポーラは不可解な自殺を遂げた後だ。生前にその原因に気づくことができなかったリリアンは、自身も原因不明の流涙に悩まされる。ポーラの夫シモンには恨みがましい目を向けられるが、治療にミスはなかったと確信しているリリアンは他殺の可能性を疑い、自己流の捜査を始めていく……。

 

ジャンルは大まかにミステリーと言って良いが、実際の感想としてはミステリーと同じくらいオフビートコメディの色も強い。何せ、会話から患者の心理を解きほぐしていくはずの精神分析医が、真相に迫ろうとして選んだ手段が「素人探偵」なのだから! 涙の理由を探すために訪れるのは眼科医の元夫ガブリエルで、途中から彼とよりを戻すのか戻さないのかのロマンティックコメディも始まりながら、リリアンが受ける催眠療法の映像もシュールな形で挿入され、スピリチュアルなテイストまで加わり始める。そのため、真相に迫っていっているというよりは、これらがどのような形で一本の線に繋がるのかが我々観客には分からないままの状態が続く。リリアンは別だ。

彼女は精神分析医の性かあらゆるものを原因として考え、それに沿うように結果を結びつける癖がある。他人や観客から見ていると必ずしも納得いく説明ではないので、真相に向かって……かは置いておいて、構わずストーリーは展開していく。もうお察しの通りだが、このリリアン自身が結構な曲者だ。ハッキリ言って、家族を含む周りの人にかなりの確率で嫌われている。患者を含む他人の心について深く理解しているつもりでも、本当はそうではない。それどころか、他人から自分がどのように見られているかも分かっていない。原因から解決法を探るのはひどく常識的なアプローチに思えるが、何事もひとつの原因から起こっているのではない。200種類、むしろ、原因とされた事柄にすらさらなる原因があるのだから、もしかすると200万種類の原因から結果は導き出されたのかもしれない。原因がひとつというのなら、言ってみれば全ての物事の原因はビッグバンだ。……いや、ビッグバンにすら原因はあるかもしれない。そうやって無限に後退りしていくと、真実は米粒にすら見えないほど遠ざかってしまう。

原因(真相)を探し求めるミステリーというジャンルでありながら、その滑稽さを聡明なイメージのフォスターに背負わせるフランス映画らしいひと匙の毒が効いている。しかも、目隠しされた状態で所構わず走り出すようなリリアンの捜査が辿り着くのは、意外や意外、非常にシンプルな答えだ。我々誰もが、似たような経験をしているだろう。そしてどうしても、その原因を追い求めてしまうのだ。「なぜそんな簡単なことに気づけなかったのだろう」と。

【ストーリー】
パリで精神分析医として成功を収めているアメリカ人医師のリリアンは、長年診てきた患者ポーラの突然の死の知らせを受ける。診察を通してそんな兆候は一切なく、違和感を覚えたリリアンはその死が単なる事故ではなく、殺人ではないかと疑い始める。しかし患者の“プライベートな領域”に関する守秘義務の関係上、警察を頼ることはできない。自ら真相を突き止めるしかないと決意したリリアンは、ポーラの死について調べ始める。一方で、ポーラの死をきっかけにリリアンは、状況に関係なく涙があふれ出る異変に悩まされるようになる。やむなく眼科医の元夫ガブリエルの元を訪ねるが、涙の原因はわからないものの、事件の捜査を手伝ってもらうことに。元夫を相棒に従えたリリアンは、益々大胆に探偵まがいの捜査に乗り出し、やがて危険な真実へと足を踏み込んでいく――。

【キャスト】
ジョディ・フォスター、ダニエル・オートゥイユ、ヴィルジニー・エフィラ、マチュー・アマルリック、ヴァンサン・ラコスト、ルアナ・バイラミ、フレデリック・ワイズマン 他

【スタッフ】
監督:レベッカ・ズロトヴスキ
脚本:レベッカ・ズロトヴスキ、アンヌ・ベレスト、ガエル・マーセ

 ©LES FILMS VELVET -BUENOS HAIR -FRANCE 3 CINEMA
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

 

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