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『サンクスギビング』血の滴る収穫の恵みに感謝しよう!ありそうでなかったホリデー・ホラーの誕生だ!

◆今週公開の注目作

『サンクスギビング』(2023)

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

祝日や祭日はとても大事だ。何かに感謝したり祈ったりする機会だから…ではない。ホラー映画に捧げる供物となるからだ! バレンタインデー(『血のバレンタイン』)だって、夏至祭(『ミッドサマー』)だって、ハロウィン(『ハロウィン』)だって、クリスマス(『暗闇にベルが鳴る』)だって、どれもこれもホラー映画の餌食となってきた。日本由来の祝祭日をテーマにしたホラーが思い浮かばないのが悲しいところだが、こういったおふざけは「ホリデー・ホラー」として我々ホラーファンを1年通して楽しませてくれる。そして今回犠牲となったのは、アメリカではカレンダーも赤く染まる祝日、11月の第4木曜日。いわゆる感謝祭(サンクスギビングデー)である。ちなみに、その翌日の金曜日が安売りで知られるブラックフライデーだ。

日本人にはあまり馴染みのないサンクスギビング(一応、英語ではレイバー・サンクスギビングデーと呼ばれる勤労感謝の日がそれに近い)。収穫の恵みに感謝する日だ。元々は17世紀、弾圧を恐れイギリスのプリマスからアメリカのプリマス(偶然同じ地名!)に逃れてきた清教徒たち「ピルグリム・ファーザーズ」が、現地のネイティブ・アメリカンの知恵を借りてもたらされた豊作に感謝したことに由来する。美しい話だ…ここまでは。この後、結局彼らの関係は悪化し、互いに血みどろになって戦う羽目になり、多くのネイティブ・アメリカンが虐殺される。これをホラーと呼ばずして何と呼ぶ?

さて、そんなサンクスギビングをテーマにしたホリデー・ホラーが本作だ。サンクスギビング・ホラーは、直前にハロウィン、直後にクリスマスがあるからか、ありそうで意外になかった。…いや、正確には1本あった。ただし、それは長編ではなく、短編ですらなく、ただの予告編だった。2007年、クエンティン・タランティーノを始めとする好き物の映画監督たちによる企画『グラインドハウス』に含まれた、“存在しない”映画のフェイク予告編5本のうちの1本として作られたのが、イーライ・ロス監督による『感謝祭(Thanksgiving)』だったのだ。フェイク予告編はすでに『マチェーテ』と『ホーボー・ウィズ・ショットガン』の2本が長編映画化されていたが、『サンクスギビング』はそれらに続く3本目。予告編から実に16年が経って、ようやく本編が到着した。

物語は、マサチューセッツ州プリマスのブラックフライデーから始まる。暴徒と化した住民のせいで死傷者まで出たその狂乱から1年が経ち、再び迎えたサンクスギビングで、「ジョン・カーヴァー」と名乗る仮面の殺人鬼によって次々に人が殺されていく…というスラッシャーだ(ジョン・カーヴァーは、ピルグリム・ファーザーズのひとりでプリマスの初代総督となった実在の人物)。しかも、殺し方はサンクスギビングの料理にちなんだオメデタいもの。ロスは、食人族を描いた『グリーン・インフェルノ』で味を占めてしまったらしい。「人肉って旨くね!?」と。ロスの師匠であるデビッド・リンチ監督の『イレイザーヘッド』には、ディナーの七面鳥がピクピク動きながら大量に血を流し続ける非常に気色悪いシーンがあるが、その影響もあるのかもしれない。

ジョン・カーヴァーの“調理法”はもちろんグロテスクなものの、オマツリ感があってどこか笑えてしまう。仕方ない。祭りで人は死ぬものだ。去年の個人的ベスト1映画は料理ホラー・コメディ『ザ・メニュー』だったのだが、再び年の暮れに美味なる料理ホラー・コメディに巡り会えたことに感謝している。犠牲者たちよ、この恵みをありがとう。そして、いただきます。

【ストーリー】
感謝祭(=サンクスギビング)発祥の地マサチューセッツ州プリマス。一年に一度の祝祭に沸き立つ人々だったが、突如、ダイナーで働く女性が 何者かに惨殺される事件が起こる。その後も一人、また一人と消えてゆく住民たち。彼らは皆、調理器具を凶器に、感謝祭の食卓に並ぶご馳走に模した残酷なやり方で殺害されていた。街中が恐怖のどん底に突き落とされるなか、地元の高校の仲良しグループのジェシカたちは、ジョン・カーヴァーを名乗る謎のインスタ グラムの投稿にタグ付けされたことに気づく。そこには豪華な食卓が用意され、自分たちの名札が意味深に配されていた…。

【キャスト】
パトリック・デンプシー、アディソン・レイ、マイロ・マンハイム、ネル・ヴェルラーク、ジェイレン・トーマス・ブルックス、リック・ホフマン、ジーナ・ガーション 他

【スタッフ】
監督::イーライ・ロス(『グリーン・インフェルノ』『ノック・ノック』『ホステル』)
脚本:イーライ・ロス、ジェフ・レンデル(『グラインドハウス』『キャビン・フィーバー』)
製作:イーライ・ロス、ロジャー・バーンボーム、ジェフ・レンデル

公式サイト:https://www.thanksgiving-movie.jp/

12月29日(金)全国の映画館で公開

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