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『アリスとテレスのまぼろし工場』”生きる”って何?哲学書を1冊詰め込んだような重み

◆今週公開の注目作

『アリスとアリスとテレスのまぼろし工場』

本作を観た直後の私は今、とても感動している。
感動する作品なんていくらもであるし、その一言だけでは、あまりにも語彙力がなさすぎて、どのように感動したのか具体的に説明してくれと思うだろうが、これが非常に言語化しづらい。言葉では表すことのできない何かが心につき刺さり、観る前と観た後の自分とでは何かが変わったような、そんな感じがしている。

14歳の菊入正宗が住む町では、ある日製鉄所で爆発が起きたことをきっかけに、外へと通ずる道の全てが塞がれ、時の流れも止まり、永遠の冬に閉じ込められてしまう。いつか元の世界に戻った時のために、彼らは「自分確認票」の提出を義務付けられ、自分の髪型や好きな人、嫌いな人まで記録し、誰もが変わらないように努めている。この町ではとにかく“変化は悪”なのだ。そんな独特な雰囲気が漂う世界観の中で、正宗は同級生の睦実と謎の少女である五実に出会うことで大きく感情が動き始める。正宗が何かに気付く度に、私自身も忙しない日々の中で忘れかけていた何かを取り戻してゆくような感覚がした。

本作のタイトルは、岡田麿里監督が小学生の時に哲学者のアリストテレスを同級生が「アリスとテレス」とふざけて言っていたことが記憶にあり、そこから付けられたようなのだが、私はこのタイトルがすごくピッタリだと思った。なぜなら、この作品には“生きる”とは何かという哲学的なことが丁寧に繊細に描かれているからだ。「生きるとは?」と聞かれると、何だかかっこよくて深いことを言わなければいけないような気がしてくれるけど、岡田監督はそれを難しい言葉や説教くさいようなストーリーではなく、正宗という人物を通じて感覚で、感情で教えてくれる。

だからこそ、私は久しぶりにすごく感動していたのだが、そこにさらに追い打ちをかけてきたのがエンディングで流れる中島みゆきの主題歌だ。これが非常に痺れる…!予告を一度観ただけでもメロディーを自然と覚えてしまうほどのインパクトがあるのは、みなさんご存知だと思うが、映画を観た後に改めてしっかり歌を聞くと、歌詞の一つ一つがとても心に響くのだ。エンディングまでこれほどずっしりと来る映画はそう多くはないだろう。私はそのような作品を観た時にだけに感じることのできる、しばらく現実に戻って来れない”あの”時間が大好きだ。

 

話が逸れたが、本作は日常に飽きたり、毎日になんとなく息苦しさを感じたりしている人にこそ見てもらいたい作品だ。そんな日常から抜け出すヒントをきっと本作は教えてくれる。

 

文:カカオ豆(映画とコーヒーとチョコが好物)

 

 

【ストーリー】
突然起こった製鉄所の爆発事故により全ての出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす中学三年生の正宗。いつか元に戻れるように、住人たちは変化を禁じられ鬱屈した日々を過ごす中、謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは喋ることのできない、野生の狼のような少女―。二人の少女と正宗との出会いが世界の均衡を崩していき、日常に飽きた少年少女たちの、止められない<恋する衝動>が世界を壊し始める―。

【キャスト】
榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲/八代拓、畠中祐、小林大紀、齋藤彩夏、河瀨茉希、藤井ゆきよ、佐藤せつじ/林遣都、瀬戸康史

【主題歌】
中島みゆき「心音(しんおん)」

【スタッフ】
原作・脚本・監督:岡田麿里
副監督:平松禎史
キャラクターデザイン:石井百合子
美術監督:東地和生
音楽:横山克
制作:MAPPA
配給:ワーナー•ブラザース映画、MAPPA
©新見伏製鐵保存会

公式HP:https://maboroshi.movie︎

9月15日(金)全国公開

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