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【今週公開の注目作】『スターヴ・エイカー 召喚』 1ならかなしみ、2はよろこび、3ならおなご、4はおのこ、5ならしろがね、6はこがね、7ならひみつ、だれにもいわず。

【今週公開の注目作】

『スターヴ・エイカー 召喚』
2026年9月11日(金)より全国順次公開
公式HP:https://mid-ship.co.jp/starveacre/
 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

都市と田舎では、どちらの方が怖いだろう。星の光をかき消すほど明るい都市であっても、そこかしこに様々な暗い都市伝説が溢れている。とは言え、それらの話はまだ新しい。不吉な響きが実体を持つに至るには、きっともっと長い長い時間が必要だ。対して、星明かりに照らされた田舎には、古い伝承が残っている。果たしてそれらはいにしえの真実を伝えているのか、嘘もまことに変わるのか、どちらにしてもただの与太話と切り捨てられない不気味さがある。

本作『スターヴ・エイカー 召喚』も、イギリス・ヨークシャー地方の田舎に移住した3人家族に降りかかる奇怪な出来事を描いている。ジュールズ(ジュリエット)とその夫リチャードは、幼い息子オーウェンの抑えられない攻撃性のためにヨークシャーの大都市リーズからリチャードの出身地へ引っ越してきた。しかし、ここでも問題を起こす息子に対しジュールズは戸惑い、リチャードは受容と正反対の姿勢を見せる。そしてある日、この地に伝わる禍々しい言い伝えと関係があるのか、オーウェンは喘息の発作で命を落とす。悲しみに暮れ、広がった夫婦の間の溝に落とされた暗い影は怪異の種となり、ふたりの涙で芽吹き始める。そうして、やがて怪異は大樹のように育っていき……。

冒頭のショットから、見渡す限り何もない田舎の平野が広がっている。だが、それは誤りだ。人工物が映っていないだけで、ずっと昔から淀んだままそこに残っているようなどこか重苦しい空気が、“空気感”として映像に焼き付いている。ストーリーからもエンタメ性が排されており、かなり雰囲気重視のフォーク・ホラーと言える。展開は非常にスローテンポで、次から次に意外な展開が来るのではなく、ある種決められた終わりに向かってずるずると這いながら進んでいくかのようだ。「スターヴ・エイカー(飢えた大地)」と呼ばれるこの地は、人々に豊穣をもたらす場所ではない。まずは人々が血と涙で潤してやらなければいけないのだ。

ジュールズ役には、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』でガラドリエル役を演じるまでにブレイクしたウェールズ出身のモーフィッド・クラークが配されているが、彼女が(ホラーファンに)大きく知られるようになったのは宗教ホラー『セイント・モード/狂信』で神狂いの女性モードを衝撃的に演じてからだろう。リチャード役のマット・スミスは、その特異な風貌も相まって『ゲーム・オブ・スローンズ』のスピンオフ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』において癖の強い存在感を発揮していた。このふたりが夫婦となれば、その結末は哀(あい)に彩られたものになるのは間違いない。重力などないようにゆっくりと、しかし抗えない力に引かれているとしか思えないほど確実に、ふたりは落ちていく。誰にも言えない、深い深いラビットホールへと。

【ストーリー】
英国ヨークシャー地方の人里離れた〈スターヴ・エイカー〉の地に移り住んだリチャードとジュリエット。息子オーウェンが“何かの声”を聞き始め、家族の日常は不穏に揺らぎ出す。やがて訪れる突然の悲劇。喪失に囚われた夫婦は、土地に眠る古い伝承へと引き寄せられ、夫は古いオークの根を掘り起こし、妻は亡き子の魂との交信に救いを求める。だが、彼らが知らぬ間に家の中へ招き入れてしまった暗く邪悪な力は、“失われたものを取り戻せる”というおぞましい可能性を差し出す――。

【キャスト】
マット・スミス、モーフィッド・クラーク、アーサー・ショウ、エリン・リチャーズ、ロバート・エムズ、ショーン・ギルダー、メラニー・キルバーン 他

【スタッフ】
監督・脚本:ダニエル・ココタジロ

 

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