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サム・ライミが帰ってきた。『スパイダーマン』3部作以来、マーベルを食わんばかりの恐怖と狂気がここに! 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

◆今週公開の注目作

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

さあ、またMCUの新作が公開された。マーベル作品は毎作毎作、見事なまでにハズレがないので、全世界の観客から本作にかけられた期待は相当なものだろう。振り返れば、今年はあの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』から始まった年でもある。『ノ―・ウェイ・ホーム』では様々な人物がカムバックを果たしたが、ミスター・スパイダーマンと言っても過言ではないある男の帰還がまだだった。本作の監督、サム・ライミのことだ。

MCUにはこれまで様々な監督たちが参加してきたが、大体いつも「その監督風味のマーベル作品」になる。故に毎作、「ユニバース」を謳うだけに同じ世界観の、期待した味が楽しめる。しかし今回は、ホラー要素をふんだんにまぶした、「マーベル風味のサム・ライミ映画」である。『ノー・ウェイ・ホーム』はスパイダーマン映画の集大成だった。ならば、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3部作以来、15年ぶりのマーベルへのカムバックであり、『オズ はじまりの戦い』から9年ぶりの長編監督作品となる本作は、サム・ライミ自身の集大成と言っても過言ではないだろう。

序盤、ガルガントスという名のタコのような一つ目の化け物が町を荒らし回る。タコと言えばやはり、『スパイダーマン2』のドクター・オクトパスが思い出される(ちなみに、DCの最新作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』にはヒトデ型の一つ目の化け物が出てきていたのが面白い)。『スペル』(呪文)のせいでマルチバースへの扉が開き、『ダークマン』ならぬ“ダークウーマン”や、『死霊のはらわた』に出てくるような悪霊たちに呪われた書物(ドラマ『ワンダヴィジョン』でワンダが最後に読んでいた)も登場。これまでマーベル作品にカメオ出演し続けてきた、『スパイダーマン』などの原作者である今は亡きスタン・リー御大の代わりに、サム・ライミの長年の相棒ブルース・キャンベルも顔を出している。

そんな夢のような映画だが、中身も(悪)夢の話である。「胡蝶の夢」という説話がある。人である自分が蝶の夢を見ているのか、蝶である自分が人の夢を見ているのか。それはどちらも正しい。夢の中の自分は別の世界、マルチバースに生きている自分だからだ。マルチバースは星のように無数に存在するので、無限の可能性に満ち溢れている。全てを手に入れた人生、そして…全てを失った人生。我々の知るドクター・ストレンジは、かつて全宇宙の半分の生命を滅ぼした強敵サノスからこの世界を救ったが、手に入れられなかったものもある。それは、本作の影の主人公であるスカーレット・ウィッチことワンダも同じだ。

マルチバースを飛び越える能力を持った少女アメリカ・チャベスが彗星のように現れたために、登場人物たちはその星に禁断の願いをかけることができるようになった。だがそれを誰が責められるだろう。「こんな人生だったら良かった」なんて、誰もが一度は考えるはずだ。夢見るだけならまだしも、夢と思っていたものが実在する様を見せられるのはなんと残酷なのだろう。世界を縦横無尽に行き来する際のめくるめく映像は「マルチバース・オブ・マッドネス(狂気のマルチバース)」の名にふさわしいが、「マルチバース・オブ・サッドネス(悲しみのマルチバース)」とも呼び表したくなる作品だ。

本作とほぼ同時に、マルチバースをテーマにしたミシェル・ヨー主演の映画『Everything Everywhere All at Once』が公開され話題となった(ミシェル・ヨーはマーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に出演している。同作は日本でも公開予定)。このタイミングの良さと「何でもどこでも一斉に」というタイトルが示唆するように、この世には必然しかないのか。それとも無慈悲な偶然だけが? ひとつだけ言えるのは、我々の世界の見方はいつだって恣意的だということだけだ。苦しみは生きているからこそ存在するが、人生に起こった出来事の点を繋ぎ直せば、どんな形だって描ける。我々の頭上に輝く星座だってそうなのだから。

【ストーリー】
元天才外科医にして、上から目線の最強の魔術師ドクター・ストレンジ。時間と空間を変幻自在に操る彼の魔術の中でも、最も危険とされる禁断の呪文によって“マルチバース”と呼ばれる謎に満ちた狂気の扉が開かれた──。何もかもが変わりつつある世界を元に戻すため、ストレンジはかつてアベンジャーズを脅かすほど強大な力を見せたスカーレット・ウィッチことワンダに助けを求める。しかし、もはや彼らの力だけではどうすることもできない恐るべき脅威が人類、そして全宇宙に迫っていた。さらに驚くべきことに、その宇宙最大の脅威はドクター・ストレンジと全く同じ姿をしていて…。

【キャスト】
ベネディクト・カンバーバッチ、エリザベス・オルセン、ベネディクト・ウォン、レイチェル・マクアダムス、キウェテル・イジョフォー、ソーチー・ゴメス

【スタッフ】
監督:サム・ライミ
製作:ケヴィン・ファイギ
製作総指揮:ルイス・デスポジート、ビクトリア・アロンソ、エリック・ホイサーマン・キャロル、スコット・デリクソン、ジェイミー・クリストファー
共同製作:ミッチ・ベル リッチー・パーマー
脚本:マイケル・ウォルドロン
撮影:ジョン・マシソン
美術:チャールズ・ウッド
衣装:グレアム・チャーチヤード
編集:ボブ・ムラウスキー ティア・ノーラン
音楽:ダニー・エルフマン
音楽監修:デイブ・ジョーダン
視覚効果監修:ジャネク・サーズ
ビジュアル開発監修:イアン・ジョイナー
配給:ディズニー
(C)Marvel Studios 2022

公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/dr-strange2.html

 

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