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【今週公開の注目作】『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』 人生の近道は地獄に続いている。

◆今週公開の注目作

『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』
2026年2月6日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開

鬱になる映画は山程あるが、そのランキングの常連として(悪)名高いのが本作『レクイエム・フォー・ドリーム』だ。「ダメ。ゼッタイ。」のコピーをそのまま映像化したような、主人公たちが薬物によって破滅していく“だけ”の作品としてよく知られ、また映画ファンの間では今敏監督の鬱くしき傑作『PERFECT BLUE』に影響を受けた作品としても有名だろう。まさに完全なる憂鬱を嫌と言うほど体感できるこんな映画をわざわざ、しかも4Kリマスターで見る価値があるのだろうか?

あなたが本作を未見の場合でも、すでに鑑賞してバッドトリップに陥った経験がある場合でも、その答えはYESと言わざるを得ない。かくいう筆者も本作を見る度に多大な精神的ダメージを負ってきたが、それでも、今でも胸を張ってお気に入りの1本と言える。本作は決して、ただの懲罰的な教育ビデオではない。映画として、現在でも斬新に思えるいくつもの要素を備えているからだ。まずストーリーテリング。本作の主要人物は4人、麻薬漬けの青年ハリーとその友人タイロンは麻薬の売買で一攫千金を狙っている。ハリーにはやはり麻薬に溺れた彼女のマリオンがおり、ふたりは儲けた金で洋服店を開くことを夢見ている。ハリーの母親サラは夫を亡くし孤独感をテレビで埋めているが、ある日願ってもない、好きな番組への出演依頼の電話を受け、お気に入りのドレスを着て出演できるように痩せ薬に手を出す。この基本設定が語られた後は普通の映画らしい物語はなく、概ね4人の中毒症状が悪化していくのを追っていくだけと言っても過言ではない。

そのゴールが分かりきっている話を、異常な映像と編集によって全く退屈に感じさせないのだ。4人が薬物を飲んだり打ったりするシーンでは、いくつもの細切れのカットでその様子がリズミカルに映される。背筋の凍るポップさだ。そして、シーンの時間間隔が狂って伸び縮みし始める。長時間にわたるキャラクターの行動は早回しに、しかしカメラワークはひどくスローに。鋭敏になった感覚をそのまま映像化したかのごとく、麻薬による幻覚や幻聴もシームレスに挟み込まれていく。有り体に言えば悪夢の中にいるようだ。キャラクターがハイの状態の時はまだ良い。観客のみが薄ら寒さを感じているだけだが、一転して落ちた状態になると描写が完全にホラーのそれに一変する。

本作は、自分は麻薬になど手を出さないと信じている大多数の人間とは全く無関係な映画にも思える。だが、それは大きな誤りだ。サラのケースを見ると分かりやすく、孤独な彼女のささやかな楽しみは、元々テレビを見ながらチョコレートを食べることだった。奇しくも「チョコ」は日本で大麻の隠語として使われているが、つまり彼女は最初からテレビ依存症で砂糖依存症なのだ。他のキャラクターたちも、孤独感を紛らわせるために麻薬を使っている節がある。もしかしたら、友人関係・恋人関係すらも麻薬の代用品だったのかもしれない。

本作が容赦ないのは、確実に何かに依存している我々観客に対しても人差し指を突きつけるその姿勢と、このような救いのない物語をジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、エレン・バースティンとアカデミー賞俳優ばかりに演じさせているところだろう。ハリーたちの輝かしい夢は、白い粉の上に立つ楼閣だ。劇中では鎮魂歌のように何度も中毒的なテーマ曲「ルクス・エテルナ(永遠の光)」が流れ、人生の困難を手っ取り早くショートカットしようとした4人は、望み通り死後の世界を先取りする。生き地獄に引きずり(ドラッグ)込まれるのだ。ダイエット中のサラがご馳走を夢想する飯テロシーンがあるが、身を滅ぼすほどの依存は自分に対するテロに他ならない。ラスト、同じポーズをする4人は生まれ変わることを夢見ているのか。その夢こそは叶うのだろうか。答えは分かりきっているのに、本作の鑑賞を自傷行為的に繰り返してしまうのはなぜなのか。……キマっているだろう。

【ストーリー】
ニューヨーク・コニーアイランド。サラは一人息子のハリーと暮らしている。サラの唯一の楽しみは、TVを見ながらチョコレートを食べること。ある日大好きなクイズ番組のスタッフを名乗る人物から出演を依頼されたサラは、サイズアウトした赤いワンピースを着るために「ダイエット薬」に手を出す。ハリーは恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)との未来に向けて友人のタイロン(マーロン・ウェイアンズ)と麻薬売買を始める。それぞれに夢を抱いていたはずの彼らは、やがて抜け出せない地獄へと堕ちていく――。

【キャスト】
エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ 他

【スタッフ】
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ヒューバート・セルビー・Jr.、ダーレン・アロノフスキー

 

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