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『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』世界のレジェンド山野井泰史、その天才と狂気【前編】クライマー山野井はどれ程凄いのか?

◆今週公開の注目作

『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』

文:たんす屋(神社好きの中年Youtuber)

 

いよいよ、今週末から公開となる『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界』。この登山ドキュメンタリーにみせかけて、実は現代人が観るべき圧倒的な人物列伝、の公開にあわせて、紹介を2回にわたってしたいと思います。前編は「ネタバレなし編」ということで、普段トレッキングしたりキャンプしたりアウトドアが好きという人でもあんまり縁のない「本気登山」世界の事情と、その中で山野井さんがどのくらいの存在なのか?そのあたり、映画に対する興味の入り口を内容紹介と共にしてみたいと思います。

山野井さんのこれまでの実績については「山と渓谷」のヤマケイオンラインがざっと分かっていいかと思いますので見てみてください。

■ピオレドール生涯功労賞受賞者・山野井泰史の軌跡を振り返る 〜ダイジェスト〜
https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=1769

 

「登山界のアカデミー賞」といわれるピオレドール賞。登山界にとっては映画みたいなチャラチャラしたエンタメ界の賞を比喩に使われることは本意ではないかもしれないが、ま、わかりやすくということでお許し願いたい。2009年に創設されたピオレドール賞の中でも生涯功労賞というのが、いわゆる殿堂入り。現時点でレジェンドとされている13人の登山家たちだ。その中に山野井泰史はいる。日本人ではない、アジア人初だ。あの植村直巳も三浦雄一郎も野口健もいない。山野井泰史はMLBでいえば、オールタイムオールスターに入ってることになる。イチローのレベルを超えている世界的日本人だということだ。

実際、この13人の中には聞いたことがあるかもしれないが、世界に14座ある8000m峰全てを完全制覇した“超人”ラインホルト・メスナーがいる。メスナーは14座制覇という見栄えのするスペック的な部分もあるが、あの8848mのエベレストに「無酸素」で「単独」で登頂したということで、もう月に人が到達して、アップルコンピュータもある70年代後半の“科学的な常識“で考えても「無酸素エベレストは無理だ」と言われていたのに、まるでアルプスの山に行くような装備で軽々と登ってしまってしまい登山界に衝撃を与えた人物だ。彼が少人数もしくは単独でヒマラヤなどの高地に挑む、いわゆるアルパインクライミングを一般化させたのは間違いない。

ピオレドール生涯功労賞のレジェンドたちは他に、映画「エベレスト3D」にも出てくる英国人のダグ・スコット、今作でも語られるポーランドのヴォイテク・クルティカなどがいる。メスナーがスペック的にも実力的にも心の面でも図抜けた存在であることはありつつだが、そこに連なる一群(超一流の一群)の中に実は山野井泰史はいる。

山野井の登山家としての強みはフリークライミング・岩登りの技術を身に着けて、アルパインクライミング世界に登場したことで、意外かもしれないがヒマラヤに登る登山家は、誰でもボルダリング的な、道具をなるべく使わず自然の岩壁を登るということができるわけではなく、その意味でヨセミテの巨大な岩壁を修行の場とした山野井は戦闘力の高いクライマーだったのだ。さらに高度8000m超の「無酸素」状況でも動ける体を持っていたし、「単独」を行う心の強さ、冷静に自分を診る高度の判断力もあった。だから私から見ると、実力的にはメスナーの次は山野井が受賞してもよかったくらいなのである。それほどのクライマーだったと思っている。(※その後、フリークライミング能力の高いアルパインクライマーは続々世に出てくる、山野井はその嚆矢となった)

山野井の殿堂入りが13人目について不当とは言わないが、彼がその実積と実力と(実は人気)の割に一般には知られていないのは確かである。それはきっとメディア映えする動きを一切してこなかったからだろう。第一、彼はエベレストを目指さなかった。目指せばTV局も他のマスコミも、どんどんついて山野井を書き立てたであろう。だが彼はそれをやらず、スポンサーも取らず普段の仕事の給料でできる範囲で山に挑み続けた。

それについて「もっとうまくやれば」と思う方もいらっしゃるかもしれない。現代のプロ・アスリートたちはエージェントを付けて、効率的に仕事を選び、それに見合う報酬を受け取り、さらにはスポンサーのためにできることをやり、お金をもらい、世の中に希望を与え、それが次のチャレンジの糧となる。

山野井はなぜそれをやらない?そう思う方にこそ、是非この映画を観てほしい。彼の人生の中にその答えがある。それこそが、アルパインクライマーの中で、図抜けて命を失うリスクの高い「ソロクライマー」として君臨し続けられた山野井の危機管理だと思う。

アルパインクライミングというスポーツは、難易度が高い程評価される。オーバーハングの壁を登った、滑落の危険性が高い不安定なルートから登った、誰も成功していない壁を登ったー。

つまり、命の危険性が高い程褒められるという側面がある。モータースポーツやボクシングなども同じようなところがあるスポーツだが、それは衆人監視(管理)の元で行われ、何かあった時には、誰かの助けが入り最悪の状況を避けるための動きができる。だがアルパインクライミングにはそれがない。ソロクライミングとなれば、外界とは完全に遮断された「孤立・無援」、さらにその状況は過酷だ。

「ネットで中継すればいいじゃないか」

そういう声も聞こえてきそうだが、そのようにして大規模なプロジェクトを動かして遭難した登山家もいた。高度8000m「無酸素」のぼんやりした意識の中での高度な判断力を問われるソロクライマーの頭の中に、SNSの「頑張れ!」「期待してます!」などの複数の声はリスクにしかならない。彼の脳みそは100%、自身の身体と周りの状況分析に使わなければならなかった。

山野井の登山は現地に行く前から始まっている。どこの山のどの壁を、どのようなルートから登頂する、そのためにどんな準備をして、どんなトレーニングをすれば、何時間で落とせるー。そんな想像力を最大限働かせる山野井の脳みその中には「チャレンジしがいのある、おもしろい山」ということしかない。話題になるとか、金になるとか、みんな勇気を与えるとか喜んでもらうとか、一切ない。だから彼の登山はよどみなく、針の孔を通すような精緻さで、恐ろしげな壁を制してしまうし、同じ理由でエベレストには行かないのだ。

山野井が本編中のインタビューで言い放つ「100%死なないと分かっているなら、(その山には)行かない。」は単なる無謀の言葉ではない。彼は危機管理の圧倒的な達人なのだ。だが、その眼を見てほしい。危機管理の圧倒的な達人が、その洞察力・判断力の限界を試してみたいという、天才ゆえの狂気が滲み出しているところをー。

 

※後編に続きます:【後編】彼は何故生きて還り続けられたのか?

 

 【ストーリー】
「誰も成し遂げていないクライミングを成功させて、生きて還る」世界の巨壁に単独で挑み続けてきたクライマー・山野井泰史。彼は2021年、登山界最高の栄誉、ピオレドール生涯功労賞を受賞した。しかし、山野井の挑戦は終わらない。伊豆半島にある未踏の岩壁に新たなルートを引こうとしていた。そして再びヒマラヤにも…。“垂直の世界”に魅せられた男の激しい生き様とは?貴重な未公開ソロ登攀映像とともに振り返り、山野井の生涯のパートナーである妻・妙子への取材も通して問いかける。

【スタッフ】
監督:武石浩明
撮影:沓澤安明、小嶌基史、土肥治朗
編集:金野雅也
MA:深澤慎也
選曲:津崎栄作
企画・エグゼクティブプロデューサー:大久保竜
チーフプロデューサー:松原由昌
プロデューサー:津村有紀  
TBS DOCS事務局:富岡裕一

2022年/日本/5.1ch/16:9/上映時間:109分
製作:TBSテレビ
配給:KADOKAWA
©TBSテレビ

公式HP:http://jinsei-climber.jp
公式Twitter:@jinsei_climber
公式Facebook:@jinseiclimber

11月25日(金)角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

 

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