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『貞子DX』来る、きっと来る。今度の貞子はネット経由で24時間以内にやって来る!

◆今週公開の注目作

『貞子DX』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

現代の日本にホラーアイコン、貞子を知らぬ者はいないだろう。シリーズ1作目の『リング』は1998年公開と24年も前の作品だが(祝!24周年!)、何度も続編が作られてきた。途中からは、映画自体のタイトルも『リング〇〇』から自身の名を冠した『貞子〇〇』へと変わった。4作目『貞子3D』では画面から飛び出し、6作目『貞子vs伽椰子』では『エイリアンVS.プレデター』のように、『呪怨』シリーズのアイコンである伽椰子とまさかの共演。貞子は手を替え品を替え、またそのチャームで人々を“呪って”きた(「チャーム」には「呪い(まじない)」の意味もある)。呪いは強さを増し、『リング』では1週間、『貞子vs伽椰子』では48時間だった死へのカウントダウンも、今回でさらにその半分に(呪!24時間!)。大盤振る舞いである。

さて、そんな『貞子DX』。「DX」はデラックスではなくディー・エックスと読み、デジタルトランスフォーメーションのことを指しているらしい(「サダコ・デラックス」ではあるタレントを彷彿とさせる。もちろん出演していない)。デジタルトランスフォーメーションとは元々、デジタル技術が人々の生活を向上させるという考え方なので、本作にはデジタイゼーション(デジタル化)の方が合っているような気もするが、とにかく、貞子がインターネットを媒介して感染する致死性ウイルスと化すのである。ご存じ、貞子はこれまで呪いのビデオ、つまりアナログなVHSによってそれを見た人を呪い殺してきた。しかし今時、ビデオデッキがあるお宅などほとんどない。本作では、そんな不憫な貞子を憐れんでか、親切な何者かがビデオのデータをネット上にアップしてしまうのだ。

昭和生まれで、おそらく生前VHSを見たこともなかったはずなのに、それを完璧に使いこなしていた才能あふれる貞子はネットをも使えるようになった。理論上は、世界中の人間を呪える力を手に入れたのだ。『リング』では「不幸の手紙」のように、ダビングしたビデオを他人に見せれば呪いが解けた。しかし、本作での呪いはウイルスとは言っても、うつせば治る風邪(迷信だが)とは違う。その方法では呪いの輪を広げるだけだ。“治療法”を模索するのは、小芝風花演じる主人公の文華。何とIQ200らしいが、その彼女さえ翻弄するので貞子のIQは200以上なのだろうか。手強い。

ちなみに、通常の計算ではIQ200などという値は約1000億人に1人しか出現しないレベルらしい。一応、過去にマリリン・ボス・サバントという女性がIQ228としてギネスに載ったことがあるようだが――サバント(Savant)という性は『レインマン』で取り上げられたサバン症候群の「サバン(フランス語で「賢者」の意味)」と偶然同じスペルなのが面白い――、つまり地球上に1人もいないレベルだ。(呪いのことは置いておいて)そんな荒唐無稽な設定の本作は、実際はホラーの皮を被ったコメディだ。監督の木村ひさしが過去に撮っていたドラマ『トリック』の雰囲気にも近く、ちゃんとインチキ霊媒師も登場する。

ホラー部分は、遠くから徐々に死の存在が近づいてくるホラー映画『イット・フォローズ』の要素を混ぜたような感じだ。貞子が様々な人の姿になって襲ってくるところやテーマも同作と似ている。詳しくは言わないが、今回の貞子は生(性)と死の衝動の象徴ともとれる。精神分析的に言えば「エス(es)」のようなものだ。エスは「イド(id)」とも呼ばれる。“井戸”から出てくる“S”adakoにはピッタリである。本作は何と貞子を用いてヒューマンなドラマにも挑戦しており、何と最終的には(ある意味)デジタルトランスフォーメーションする。イロモノな外見に反してメッセージは至って真面目だ。なんだかんだで文華はとんちが利いているので、「こんなの貞子じゃない!」と思った方も、どうやって“峠”を越えるのかを予想しながら鑑賞していただきたい。

【ストーリー】
“呪いのビデオ”を見た人が24時間後に突然死するという事件が全国各地で発生。IQ200の大学院生・一条文華(小芝風花)は、TV番組で共演した人気霊媒師のKenshin(池内博之)から謎の解明を挑まれる。呪いがSNSで拡散すれば人類滅亡と主張するKenshinに対し、「呪いなんてあり得ない」と断言する文華だったが、興味本位でビデオを見てしまった妹の双葉から一本の電話がかかってくる。「お姉ちゃん助けて。あれからずっと白い服の人につけられてて……」文華は「すべては科学的に説明可能」と、自称占い師の前田王司(川村壱馬)、謎の協力者・感電ロイド(黒羽麻璃央)とともに、<呪いの方程式>を解き明かすべく奔走する。しかし24時間のタイムリミットが迫る中、仮説は次々と打ち砕かれ――。

【キャスト】
小芝風花、川村壱馬(THE RAMPAGE)、黒羽麻璃央、八木優希、渡辺裕之、西田尚美、池内博之

【スタッフ】
監督:木村ひさし
脚本:高橋悠也
音楽:遠藤浩二
世界観監修:鈴木光司
主題歌:「REPLAY」三代目JSOULBROTHERS from EXILE TRIBE(rhythm zone / LDH JAPAN)
製作:『貞子DX』製作委員会
配給・制作:KADOKAWA
©2022『貞子DX』製作委員会

10月28日(金)全国ロードショー

公式サイト:movies.kadokawa.co.jp /sadako-movie/

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