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【今週公開の注目作】『ストレンジ・ハーベスト インランド・エンパイアの怪事件』点と点を繋げたら、身の毛もよだつ星座が浮かび上がった。

◆今週公開の注目作

『ストレンジ・ハーベスト インランド・エンパイアの怪事件』
7 月17 日(金)全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画ファンであれば聞き覚えがあるかもしれない「インランド・エンパイア」という名前。これは昨年亡くなった巨匠デヴィッド・リンチが2006年に撮り、結果的に遺作となってしまった映画のタイトルにもなっているが、カリフォルニア州にある実在の地域の名前だ。「内陸の帝国」を意味するこの地域に含まれるサンバーナーディーノ郡は、アメリカ全国平均よりも犯罪率が高い。本作『ストレンジ・ハーベスト インランド・エンパイアの怪事件』はそこで起こった奇妙で異様なある連続殺人事件を究明しようとする作品である。

殺人鬼の名は「ミスター・シャイニー」。彼の犯行は、1990年代から15年以上も断続的に続いていた。被害者の特徴はバラバラ、殺害方法にも一貫性がない。被害者との関係性は特に見出せず、現場に指紋も残っていない。当初は連続殺人なのかも不明だったそれぞれの事件を後から結びつけたのは、犯人しか知り得ない不気味な三角形のシンボルだった。

あまりに有名な連続殺人鬼に、デヴィッド・フィンチャーの同名映画でも題材となったゾディアックがいる。警察への手紙に暗号を用いたゾディアックと異なり、シンボルが書かれたミスター・シャイニーの手紙に暗号はなかった。それなのに、書いてある内容はまるで意味不明だった。「人間を“送る”」とか、「偉大な妖魔が“門”より訪れる」とか、比喩か妄想か判別できない不可解な文章の羅列に警察は混乱。しかし、亡くなった被害者たちの状況からは、ミスター・シャイニーが警察をおちょくっているようには見えなかった。思わず目を背けてしまうほど無惨な姿となった彼らは、謎めいた儀式の一端を担わされたのだ。白く濁り、焦点の合わない目が天井に描かれた三角形を見つめている。まるで、人の命を消し去る小さなバミューダ・トライアングル。その“窓”の向こうに隠された真実があるかのように……。

……さて、このインランド・エンパイアの怪事件は、全くもって実在しない。本作はモキュメンタリーホラーであり、警察の捜査を詳細に追っていく精巧な実録犯罪ドキュメンタリー、に見えるように作ってある。偽ドキュメンタリーとは言え、特に殺害現場のリアリティは圧巻……いや、凄惨と表現しなければ不謹慎だろうか。ひと欠片の尊厳さえ奪いつくされてしまった本物の遺体がそこにあるかのような、痛ましく悍ましい瞬間がいくつも記録されている。死の意味を他人が暴力的に定義するのは、何と冒涜的な行為だろう。『セブン』で被害者たちが背負わされた意味よりも理解不能なカオスが、しかし漠然と秩序(コスモス)に沿った形に並べられていく気味悪さ。その三角形の向こう側を覗き込もうとすれば、あなたも“180度”変わってしまうのかもしれない。偽が真に。疑が信に。

【ストーリー】
カリフォルニア州インランド・エンパイアの一角、サンバーナーディーノ。2010年7月9日、911に通報が入った。それは、数日間連絡の取れない友人の安否を確認してほしいという内容だった。保安官が邸宅に足を踏み入れると、幼い娘を含む一家3人が血を抜かれて殺されており、天井には謎のシンボルが描かれていた。殺人課刑事ジョセフ・カービーは、1993年から95年に発生し迷宮入りした連続殺人事件を思い出す。儀式的な手口、際立った残忍性――その符合は偶然とは思えなかった。そして当時、犯人が「ミスター・シャイニー」と名乗り警察に送りつけた手紙にも、同じシンボルが記されていた。15年前の悪夢は、まだ終わっていなかったのか――。

【キャスト】
ピーター・ジッゾ、テリー・アップル、アンディ・ラウアー 他

【スタッフ】
監督・脚本:スチュアート・オルティス

 

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