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『セブン』4K版|神は言った、「光あれ」と。しかし長雨の都会にその光は届かない。

◆今週公開の注目作

『セブン』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

あなたが人生で最も衝撃を受けた映画は何だろうか。その問いを投げかけられた時、本作の名を挙げる方は多そうだ。そう、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』である。フィンチャーはデビュー作の『エイリアン3』で興行的・批評的に大失敗してしまい、もう映画は撮りたくないとまで思ったようだが、その後に繰り出した大逆転の特大カウンターパンチが本作だった。言わずと知れた名作ではあるが、この度4K版IMAX上映が行われるということなので改めて振り返っておこう。今となっては漫画等の影響で日本でもかなりポピュラーな概念になった、“7つの大罪”になぞらえた猟奇連続殺人事件を追う刑事たちの物語である。

毎日のように犯罪が起き、雨続きの天候同様に何年も心が晴れない老刑事サマセット。犯人逮捕にかける情熱も失い世を憂う彼に、退職まで後1週間のタイミングでふたつの災難が降りかかる。直情的な新人刑事ミルズとのバディ結成と、猟奇連続殺人の始まりの事件だ。「大食」の罪名を付された被害者は、まさに大食によって殺されていた。スパゲッティの海に沈んでいた超巨体の彼は、死ぬまで食べさせられ続けていたのだ。自分には荷が重いからと担当辞退を申し出るサマセットだったが、翌日には金にがめつい弁護士が「強欲」の罪により殺され……。

不謹慎ながら、何とも興味をそそる出だしである。映画のオープニング・クレジットでは名もなき犯人が犯行の準備をしている様子がスタイリッシュに描かれているが、事件ごとに付けられる“タイトル”も相まって、前衛的なアーティストのようにも見える。サマセットは、かつては違ったのだろうが今や厭世感の強い人間になってしまっており、こんな世界に子どもを産み落とすのは避けるべきという反出生主義的な考えを持っているし、犯人はある種の世直しをしているわけでサマセットやミルズの合わせ鏡とも言える。『ダークナイト』におけるジョーカーとの戦いのごとき、善と悪のぶつかり合いのようだ。作品自体も、銀残しという手法により退廃的な色調になっているためアート映画的な雰囲気が強く、通常のサスペンスとは一味も二味も違う作品になっている。

クライマックスの1歩手前に訪れる、これまた通常のサスペンスではありえない衝撃の展開からラストの絶望に至るまで、無慈悲な完璧さで計算し尽くされている。詰み、だ。神が世界を創造したのと同じ1週間で、“彼”の世界も滅び新たに生まれ変わる。開かれたパンドラの箱に残されたのは一筋の希望なのか、それとも……? 瑞々しい美しさをあえて手放し、湿った汚らわしさにまみれた本作の映像を4Kで見るというのもなかなか倒錯した体験のような気がするが、すでに過去に鑑賞済みの方も今一度劇場でその不条理さに打ちのめされてはいかがだろうか。

【ストーリー】
舞台は雨が降りしきる大都会。刑事を続けることに疲れ果てた退職間際のベテラン刑事サマセットは、赴任したての血気盛んな新人刑事ミルズと共に、犯罪史上類を見ない”連続猟奇殺人事件”を担当することになった。はじまりは月曜日。極度の肥満の男が、絶命するまで無理矢理食べさせられ続け殺されたという事件現場には、「GLUTTONY=大食」と書かれたメモが残されていた。翌火曜日には、大物弁護士の死体が血で書かれた「GREED=強欲」という文字と一緒に発見される。正体不明の犯人は、キリスト教の「七つの大罪=憤怒・嫉妬・高慢・肉欲・怠惰・強欲・大食」のいずれかに該当する者に狙いを定めて刑を執行していることをサマセットは確信。ミルズにあと五人殺される事を告げる。次の犯行を阻むため捜査を続ける二人だったが、次第に絶望へと追い詰められていく…。犯人は一体誰なのか?その真の目的とは?

【キャスト】
ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロウ、ケヴィン・スペイシー 他

【スタッフ】
監督:デヴィッド・フィンチャー

公式サイト:https://warnerbros.co.jp/c/news/2024/12/4014.html

 

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