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『ベネデッタ』聖と性は紙一重。そしてそれこそ人の性。挑発的な巨匠が今、世にも意地悪な踏み絵を仕掛ける!

◆今週公開の注目作

『ベネデッタ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画を撮る度に一部(五分?)の人を怒らせる監督、それがポール・ヴァーホーヴェンだ。SF映画『スターシップ・トゥルーパーズ』は(お国のために戦って死ぬ覚悟のある人のみ)完全に平等に扱われる世界で、主人公ら軍人が虫型の宇宙生物と光線し散っていくのを戦意高揚のプロパガンダ的に…“見える”ように描いた。ヴァーホーヴェンはナチス・ドイツに侵略されたオランダのハーグで育ち、近所にはナチスのミサイル基地があったので、ナチスと敵対する連合軍からの爆撃も彼にとっては日常だった。よく飛行機の残骸と人間が降ってきたという。そんな幼少期を過ごしたために、その後に作る数々の作品は善悪に二分できない、一筋縄ではいかないものばかりになった。しかしその灰色の作風は、人によって白っぽく見えたり黒っぽく見えたりするのだ。

それは本作『ベネデッタ』もそうで、今回は宗教をテーマにしている。17世紀のイタリアに実在した修道女、ベネデッタ・カルリーニの物語だ。彼女は幼少期から何度も奇跡体験に遭遇し、キリストが語りかけてくるビジョンを何度も見た。自分が危険に襲われていると、大げさな音楽とともにキリストが颯爽と登場し助けてくれるのだ。修道女は結婚できないため、「キリストと結婚した」という表現が用いられることがあるが、ベネデッタにとってキリストはまさしく白馬の王子様。そのうち彼女の掌にはキリストが十字架に磔にされた際の傷、いわゆる聖痕まで現れ、聖女としてあれよあれよと言う間に修道院長の座への梯子を登っていく。

禁欲的な修道院に長くいると、感じるのが当たり前の欲望が抑えつけられフラストレーションが溜まり、異常な行動に出る場合がある。しかし、本作はベネデッタ目線で描かれているので、どこまでが妄想なのか分からない。修道院は昔から、修道女を性的に描くナンスプロイテーション映画の舞台に用いられてきた。本作はその最新型で、ベネデッタは父親の虐待から修道院に逃れてきた女性バルトロメアと愛し合うようになる。木彫りのマリア様も彼女らを“手助け”する。「何と罰当たりな!」と思っただろうか? しかしその行為は現在であれば、少し不謹慎かもしれないが火あぶりにされたりはしない。それならば逆に、男性の聖職者たちが隠れて欲望を発散し、男性至上主義で熾烈な権力闘争が行われている教会に問題はないのか?

文字だけだと至極真っ当な主張に思えるだろうが、そこはポール・ヴァーホーヴェン。教会と女性の神秘のベールを剥ぎ取り、何でも見せてしまう(R18+)。そのやりすぎ具合は、敬虔な信徒以外も怒らせてしまうかもしれない。しかし、それはあまりにも正論すぎるからなのではないか。まあ、本当にベネデッタが罰当たりなら、きっと最後には神が審判を下されることだろう。喜んで踏み絵の上で地団駄を踏むような、最後の最後まで皮肉たっぷりなヴァーホーヴェン節に感化され、あなたも十字架を見ると首を傾げてしまうようになるかもしれない。そうすればアラ不思議、十字架が少し違った形に見えてくる…。

【ストーリー】
17世紀のペシアの町(現在のイタリア・トスカーナ地方)。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家しテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで、周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた…。

【キャスト&スタッフ】
監督:ポール・ヴァーホーベン
脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーベン
原案:ジュディス・C・ブラウン『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』
出演:ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキア、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソン

2021年/フランス・オランダ/131分/5.1ch/原題:BENEDETTA/配給:クロックワークス/R18+
(c)2020 SBSPRODUCTIONS-PATHÉFILMS-FRANCE2 CINÉMA-FRANCE3 CINÉMA

公式サイト:https://klockworx-v.com/benedetta/

2月17日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開!

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