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『プロジェクト・サイレンス』国家の犬 VS 改造暗殺〇〇! 本当の獣はどっち?

◆今週公開の注目作

『プロジェクト・サイレンス』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ポリティカルな要素とエンタメの融合に定評がある韓国映画から、今度はシチュエーション・スリラー的な作品が誕生した。それがこの『プロジェクト・サイレンス』だ。本作の舞台は空港へ向かう海上の大橋であり、主人公らが序盤でこの橋にたどり着いてからはずっとそこから動かない。というより、この橋から抜け出せるかどうかが生死に直結している。一見開かれた空間のようでいて、実質閉じ込められている。生き残るためには、キャラクターの能力や周囲の車両など、置かれた状況をフル活用しなければならない。故に、パニック映画であると同時にシチュエーション・スリラー的なのだ。

主人公は国家安保室の行政官であり、シングルファーザーでもあるジョンウォン。彼が留学予定の一人娘を空港まで送るために濃霧立ち込める橋を走行していると、ある車の危険運転に端を発する多重玉突き事故に巻き込まれ、海上70mで立ち往生してしまうことに。それだけならまだ良かったのだが、軍の極秘実験の被検体を移送する車両もクラッシュしてしまっていた。“エコー”と呼ばれる被験体はパニックに陥っている人間たちを襲って回り、タンクローリーは横転し、ヘリコプターは墜落し、橋は崩壊し始める。行くにも戻るにも、絶望的な長さの距離だ。果たして、ジョンウォンは娘とともに橋を脱出できるのか?

この長過ぎる橋のモデルは、ふたつあるように思える。まず見た目と空港行きという点で、ソウルに隣接する仁川(インチョン)広域市から仁川国際空港がある永宗島(ヨンジョンド)へ伸びる仁川大橋だ。長さは約21キロメートルもある。また、同じく仁川広域市と永宗島を繋ぐ橋としては永宗(ヨンジョン)大橋もあり、長さは4.5キロほどだが、2015年には実際に10メートル先も見えないほどの霧の中で106台もの車両の玉突き事故が起こった。ならば劇中の極秘実験も、というのは発想が飛躍しているかもしれないが、しかし今後行われないとは言い切れない。人類は人間相手にも改造実験を行った前科があるのだし……、まあ劇中の実験の内容についてはここでは秘密にしておこう。

本作の美点は、難しい話なしに事態を悪化させる出来事がポンポンと立て続けに起き、観客を退屈させないところにある。序盤の玉突き事故のシーンは、不謹慎ながらも掴みバッチリのパニックシーンになっているし、ジョンウォンのキャラクターの移り変わりもエモーショナルな部分で観客を引き付ける。国民ひとりひとりの無事よりも選挙が大事で、事故の被害者には目もくれない人物として登場するが、娘や個性豊かな被害者とサバイバルする中で変化が訪れるのだ。“サイレンス(沈黙)”を強いる悪は果たして誰なのか……。ジョンウォンを演じ、『パラサイト 半地下の家族』などにも出演したイ・ソンギュンは残念ながら去年の末に亡くなってしまったが、本作も代表作のひとつと呼べる出来になっているだろう。ちなみに、映画内の動物の生死を気にする方が多いので見る前に安心させてあげたいが、本作に関しては無事とは言い切れない。その点については覚悟して鑑賞してほしい。

【ストーリー】
360°海に囲まれた空港大橋—―。濃霧の橋上で激しい多重事故が発生。爆発により有毒ガスが蔓延し、さらには救助のヘリコプターさえ墜落してしまう―—。崩壊寸前の橋の上に取り残された生存者は116人。そして、全方位逃げ場のない絶望的状況の中、移送中の軍事実験体〈エコー〉の脱走が判明する。〈エコー〉は、音と声を聞き分け、匂いと体温を察知し、確実に標的を仕留める能力を持つ。一寸先も見えぬ霧の中、生存者全員が、いまや制御不能となった〈エコー〉の標的となっていた――。

【キャスト】
イ・ソンギュン、チュ・ジフン、キム・ヒウォン 他

【スタッフ】
監督:キム・テゴン
脚本:キム・テゴン、パク・ジュソク、キム・ヨンファ

 

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