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【今週公開の注目作】『サイレントヒル レストア版 』その町は、今も地獄の業火に焼かれ続けている。

【今週公開の注目作】

『サイレントヒル』レストア版
2026年9月24日~10月12日「SPACEPART3byPARCO」にて上映

公式HP:https://www.cinequinto.com/shibuya/movie/detail.php?id=1559

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

今年は、映画版『サイレントヒル』が公開されてからちょうど20年。その記念として、レストア版が劇場で公開される。原作であるコナミのゲーム版「サイレントヒル」は、カプコンの「バイオハザード」と並んでホラーゲームの金字塔としてあまりに有名だ。ちょうど1年前には日本を舞台とした「サイレントヒルf」がリリースされ話題となった。そして、ちょうどレストア版公開と同時にシリーズ最新作「サイレントヒル タウンフォール」が発売となる。ファンはもちろん、これまで触れてこなかった方にとって非常に良いタイミングだ。劇場からこの禍々しい世界に足を踏み入れていただくとしよう。

ゲームを原作にした映画は多々あり、最も知られているのはそれこそミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『バイオハザード』シリーズだろう。だが、そちらはジョヴォヴィッチ演じる主人公が映画オリジナルであることもあり、ホラーアクション映画として独自の路線を行っており、良くも悪くも原作とは乖離したものだった。一方、本作ではラダ・ミッチェル演じる主人公ローズは……やはり映画オリジナルのキャラクターである。親が失踪した養女を探し、無人の町サイレントヒルを彷徨うというストーリーは基本的には原作を踏襲しているが、それでも多々原作との相違点がある。ゲームと映画はそもそも全く別の媒体であり、プレイ時間と上映時間では圧倒的に前者の方が長いため、そのまま映画に置き換えるのは不可能だし、それを目指しても結局は別物になるのが定めだ。では、本作が原作ファンからそっぽを向かれるような惨事になっているのかというと……、奇妙にも、「これこそサイレントヒルだ!」との賛辞の声が多い印象だ。その理由はやはり、世界観を見事に表現できているからだろう。

原作ゲームの大ファンであったクリストフ・ガンズ監督は、当初は「サイレントヒル2」を映画化したいと考えていたが、その土台として本作を撮った。原作では父親が主人公だったのを母親に変え、実在するペンシルヴェニア州の町セントラリアをモデルに、サイレントヒルを滅びた炭鉱町という設定にした。セントラリアと同じく、サイレントヒルは数十年前の地下火災から今なお、そしてこの先数百年にわたって焼かれ続ける運命にある。立ち昇る煙が霧と灰に置き換えられた町は、出所不明のサイレンにより“裏”の世界に姿を変える。立ち並ぶ廃墟は、赤錆とも臓物とも見分けがつかない赤黒い姿に変貌し、身体が不自然に欠損した世にも悍ましい異形のクリーチャーたちが跋扈し始める。しかし、これは異常な環境が生み出したミュータントや未知のウィルスによる突然変異などではなく、そこが「バイオハザード」との大きな違いでもあるが、精神世界の具現化と表現する方が適切だろう。なればこそ、シリーズは「サイコロジカルホラー」とも評される。

映画に登場するとほぼ確実に死ぬと揶揄されるショーン・ビーンがローズの夫として出てくるが、サイレントヒルに“招かれ”ない彼は、ほとんどずっと蚊帳の外だ。この事実が、メタ的ながらも町の特徴を非常に端的に示している。養女シャロンと有刺鉄線で結ばれたサイレントヒルの秘密が明らかになると、今も焼かれ続ける炭鉱町の設定が一気に宗教色を帯び、それが原作にもある別の宗教的要素と結びつく。つくづく、よく考えられた映画化だ。恐怖描写のひとつひとつにきちんと意味があり、表(現実)世界の鏡のように機能しているため、全てが終わった頃にホラーの裏に潜む深い悲しみが煙のようにじんわりと立ち昇ってくる。

 

奇しくも、来月にはまたもや『バイオハザード』の映画が公開される。6作続いたジョヴォヴィッチ版の後、原作に忠実なのを売りにしたリブート作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』とNetflixドラマ版が作られたが、どちらも評判が良かったとは言えない。そして、新たな『バイオハザード』は、監督のザック・クレッガーによればやはりこれまでとは全く別物のようだ。しかし、原作ファンである彼は正典を表面的になぞることはせず、核となる体験そのものを映像に焼きつけた。時に、違うようでいて同じ、という逆説は成り立つ。新たな『バイオハザード』のように。そして本作『サイレントヒル』のように。

【ストーリー】
ローズは、幼い養女シャロンの原因不明の夢遊病に頭を悩ませていた。時折シャロンが口走る「サイレントヒル」という耳慣れない名前に解決の糸口を求めたローズは、ある日それが実在するゴーストタウンであることを突き止める。反対する夫を振り切り、シャロンを連れて封鎖されたサイレントヒルを目指すローズだったが、町に入ったところで事故を起こし気を失ってしまう。しばらくして目覚めると、そこは霧に包まれた灰の降る世界だった。ローズが失踪したシャロンを探していると、誰もいないはずの町に突如サイレンが鳴り響く。その途端、再び灰が降り始め、視界は赤錆と腐肉に塗れた世界に一変していくのだった……。

【キャスト】
ラダ・ミッチェル、ショーン・ビーン、ローリー・ホールデン、アリス・クリーグ、デボラ・カーラ・アンガー、ジョデル・フェルランド 他

【スタッフ】
監督:クリストフ・ガンズ

 

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