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『非常宣言』着席の瞬間から乗客と観客がシンクロする!新年最初のフライト (飛行/恐怖)はこれで決まり!

◆今週公開の注目作

『非常宣言』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「一期一会」という言葉に、良いイメージを持つ人は多いだろう。一生に一度きりの出会いなのだから大切にしなければ、と。たまたま同じ公共交通機関に乗り合わせた相手などはその典型だ。しかし実際、世の中には絶対に会いたくない人間も存在する。テロリストだ。そのような“人生を変える”相手と運悪く出会ってしまったら? それも逃げ場のない飛行機の中で。

本作は、ハワイに向け飛び立った旅客機スカイコリア501便の機内で、致死性ウイルスによるバイオテロを実行する男と巻き込まれた乗客、そして地上にいる彼らの家族を描くパニック・アクション・サスペンス・ドラマだ。機内の混乱は、幼い娘を連れた父親パク・ジェヒョク(イ・ビョンホン)の目線で、地上の混乱は、同便に乗った妻のため奔走する刑事ク・イノ(ソン・ガンホ)の目線で描かれる。これだけでも十分興味を惹かれるが、本作の秀逸さは、並の映画ならそれで解決、という方法をいくらとっても事態が好転しないところにある。

例えば、「機内ではwi-fiサービスが使える」という設定。上空と地上で情報共有ができるから解決が早まるかと思えば、そんなことはない。乗客が、前日にアップロードされたテロ予告動画を見てこの便が標的だと分かっても、すでに逃げ場はない。目の前にいるテロリストの素性を地上の警察に調べてもらっても、ばら撒かれたウイルスはなくならない。そもそも、男は自分もウイルスで死ぬ可能性があるにもかかわらずわざわざ機内に乗り込んでいるのだ。乗客がひとり、またひとりと体調不良を訴え始め、やがて死者が出た頃には、ウイルスの危険性を知った地上の人々は着陸を反対するようになり、その様子を知った乗客は絶望する…といった具合に、二重のサスペンスによって乗客/観客は追い詰められていく。

本作は2時間21分あるのだが、これが良い意味で長さを感じさせる。「これが結末か」と思わせるシーンがいくつもあり、それぞれがハードながらも納得できる展開でありながら、さらに絶望的な事態に向かっていくのだ。劇中の燃料とコントロールを失っていく機体のごとく、少し上昇したと思えば急降下するストーリーテリングで、観客の価値観も上下左右に揺さぶられる。自分がこの便に乗り合わせてしまったなら、どのような行動をとるべきだろう? 着陸するとして、現実的にどこの空港に? 限界が近いこの機体では、目標ラインを超えて着陸してしまう「オーバーシュート」の危険もある…(奇しくも、この語は日本では「感染爆発」の意味でも用いられる)。高度を落としていく501便の行く末は、着陸か不時着か。

かくして、我々に向けても非常宣言が布告された。

ーー各人は、さらなるウイルスの感染を防ぐため口元を覆い、発声を控えるべし。みだりに席を立たず、着地の衝撃に備えよーー

【ストーリー】
娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェイ・ヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で執拗にふたりにつきまとう謎の若い男(イム・シワン)が、同じ便に搭乗したことを知り不安がよぎる。KI501便はハワイに向け飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が死亡。直後に、次々と乗客が原因不明で死亡し、KI501便は恐怖とパニックの渦に包まれていく。一方、地上では、妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)が警察署にいた。飛行機へのウイルス・テロの犯行予告動画がアップされ、捜査を開始するが、その飛行機は妻が搭乗した便だったことを知る。また、ウイルス・テロの知らせを受けた運輸大臣のスッキ(チョン・ドヨン)は、緊急着陸のために国内外に交渉を開始する。副操縦士のヒョンス(キム・ナムギル)は、乗客の命を守るため奮闘するが、飛行を続けるタイムリミットが迫り、「非常事態宣言」を発動。しかし、機体はついに操縦不能となり、地上へと急降下していく。見えないウイルスによる恐怖と、墜落の恐怖。高度1万メートル上空の愛する人を救う方法はあるのか—?!

監督:ハン・ジェリム
出演:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン

2022/韓国/141分/スコープサイズ/5.1ch/字幕翻訳:根本理恵/原題:비상선언/配給:クロックワークス/G
©2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト:klockworx-asia.com/hijyosengen
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@hijosengen_official

2023年1⽉6⽇(⾦) 全国公開

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