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【今週公開の注目作】『オールド・オーク』古き大樹は今もそこに立つ。木陰に一筋の光をこぼしながら。

◆今週公開の注目作

『オールド・オーク』
4月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開

かつては、世界中に交易やインターネットが広がれば、人類がひとつの大きな輪となって繋がれるという夢があったかもしれない。しかし皮肉にも、現代は「分断」が珍しくもない時代となってしまった。本作『オールド・オーク』の劇中には、全く出で立ちの異なる者同士が共に食事をして絆を深める、言うなればことわざ「同じ釜の飯を食う」をそのまま映像化したようなシーンが登場する。「仲間・会社」を意味する英語「カンパニー(company)」も、語源を辿ると「共にパンを食べる」から来ており、そこには世界共通の理があるようにも感じられる。だが、ここがまた悲しいところで、日々SNSなどで目にするのは人々が対立し、弱肉強食……いや、弱い者がさらに弱い者を食うドッグ・イート・ドッグの光景だ。世界中にへばりつき仮初めの“団結”を形作っているヘイトという名の腫瘍に、米寿を過ぎたばかりの巨匠ケン・ローチ監督が今メスを入れる。

本作の舞台となるのは、イギリスの田舎にひとつ残った古いパブ、オールド・オーク。元々炭鉱(mine)の町として栄えていたのだが閉鎖により今や見る影はなく、パブの店主で無口なのに口が悪い頑固親父のTJ含め皆が厳しい生活を送っている。オールド・オークは共に苦楽を分かち合ってきた人々の憩いの場となり、店名の看板が外れかけながらもそこに根を張っていた。ところが、町にシリア難民の家族がやってきたことでその足元が揺らぎ始める。友人たちは余所者を排除しようと嫌がらせをしだし、難民を受け入れようとするTJと真っ向から衝突する形になってしまったのだ。難民家族の長女ヤラと温かく交流するTJだったが、次々に彼の大事なものが奪われていき……。

非常にシンプルなストーリーで、通常の映画らしい魔法のごとき解決は望めない。TJは1歩進んで時に3歩下がる、もはや歩みと呼んで良いものか躊躇われるほどの遅さで茨の道を行く。難民たちに共感を示すほど、昔馴染みから反感を買ってしまう。住人たちの貧しさの原因は、明らかに今やってきたばかりのヤラたちにはないというのに。しかし、やり場のない怒りをどこかにぶつけなければ気がすまない。「貧すれば鈍する」。そこに、かつてストライキで団結した仲間たちの勇姿はない。それほどまでに、貧困は重篤な病だ。身体が老いるよりもずっと速く、心を蝕んでいく。

イングリッシュオーク(ヨーロッパナラ)はイギリスを象徴する木だ。苦しむ者をその木陰で休ませてきた古き大樹は、変わらずここに立ち苦しむ者を待っている。TJの歩みの意味は、そこに留まることにこそあったのかもしれない。聖人たちが実践していた「清貧」は、金銭的に貧しくとも心までは貧しくならずに生きる姿勢だ。誰でも、自分に余裕がなくなっていると感じたら5秒おいて「それは目の前の誰かのせいではない」と考え直さなければいけない。イギリスから遠く海を越えた日本でも、本作の語る問題が共通しているのは絶望的な状況かもしれない。しかしある種、これはチャンスでもある。互いに乗り越えるために、共にこの問題を咀嚼するのだ。Problem of mine(自分事)として。

【ストーリー】
イギリス北東部、とある炭鉱の町で唯一のパブ、「オールド・オーク」。活気溢れる時代から30年の時を経て、今は厳しい状況に陥っているが、町に住む人々にとっては最後の砦となる止まり木のような存在だ。店主のTJ・バランタインは、試行錯誤しながらなんとかパブを維持しているが、町がシリア難民を受け入れ始めたことで、パブは居場所を争う諍いの場になってしまう。先行きを危ぶむTJだったが、カメラを持ったシリアの女性ヤラと出会い、思いがけない友情を育むことになる。果たして、彼らは、互いを理解する方法を見つけられるのだろうかー?

【キャスト】
デイヴ・ターナー、エブラ・マリ、クレア・ロッジャーソン、トレヴァー・フォックス 他

【スタッフ】
監督:ケン・ローチ

配給:ファインフィルムズ
(C)Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023
公式サイト:https://oldoak-movie.com/

 

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