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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』“続編の天才”ジェームズ・キャメロンが贈る今年最後の衝撃。圧倒的な映像と、深みを増した物語にどっぷり沈もう。

◆今週公開の注目作

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、今年最後にして最大級の話題作と言えるだろう。「最大の」と言い切ってしまわないのはもちろん、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『トップガン マーヴェリック』、『RRR』などがあったからだ。本作は間違いなくそれらと肩を並べる、言わば2022年の映画四天王最後の一席。そしてシリーズ2作目として、きちんと世界観を拡張してくれる一作となっている。

前作が惑星パンドラの「森」を描いていたとすれば、今回はもちろん「海」。本シリーズには青肌の人型エイリアン(シリーズのテーマを考えれば“スカイ・ピープル”である人類こそがエイリアンとも言える)のナヴィが登場するが、前作の時点でこの青色に中々慣れなかった観客が一定数いたのは、海のシーンがなかったからかもしれない。もしくは、主人公の人間ジェイクが海兵隊マインドを引きずったまま、ナヴィの体を借りただけのアバター状態だったからか。本作で妻のネイティリ、その子どもたちとともに登場するジェイクは、ネイビー・ブルーならぬナヴィ・ブルーを自然にまとっている。また、森の部族であるオマティカヤ族に加えて海のメトカイナ族が出てくるが、彼らのオマティカヤより淡い青肌を見るだけで、海と共存しているのが伝わってくる。

先月には『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が公開され、深海の帝国に住む青肌のタロカン人がナヴィと被ると巷では言われていたが、本作が与える衝撃は少しも目減りしていない。メトカイナは、ナヴィにも多様性があり、青にも様々な美しい色合いがあると教えてくれる。さらに、本シリーズは全編パンドラを舞台にしているためほとんど地球や宇宙の映像がなく、個人的にはそこを不満に感じてもいたが、本作を見てそれで良いのだと思えた。海こそが宇宙のように描かれているからだ。鯨のような生物トゥルクン(偶然だがタロカンに語感が似ている)との無呼吸・無重力の遊泳は、観客の呼吸さえ奪う。

13年前の前作の時点で、映像には文句のつけようがなかった。ただし、ストーリーがそこに追いついていないようにも思えた。5作目までの構想があると分かっている今から考えれば、前作は助走に過ぎなかったのかもしれない。すでに基本的な部分は語り終えているので、さらに深みを増したストーリーを語ることに成功している。見ればすぐ、ジェイクよりむしろ新キャラクターである子どもたちの方が主人公然としていることに気づくだろう。特に次男のロアクと養女のキリは、今後も物語を追っていくにふさわしい魅力的な人物だ。前作のエンディングでジェイクはアバターから身も心もナヴィとなったので、本作では新たなアバターが登場する。この設定が、3作目以降の『アバター』世界をさらに広げていってくれるのかと予感させる。

監督のジェームズ・キャメロンは、本作で興行収入歴代トップクラスの成績を上げなければならない重圧を背負っている。つまり、自身の作品である『タイタニック』と『アバター』を超えなければならない。しかし、逆に言えばあの『タイタニック』を上回ってみせた実績があるわけだ。『アバター』シリーズほど映画館で見ることに意味がある…いや、映画館で見なければ意味がない作品もない。通常の映画より滑らかに見えるハイ・フレーム・レート方式でも上映されているが、好き嫌いが分かれるであろうからお好きな方で見ると良いだろう。ただし、奥行きを増したストーリーに合わせる意味でも、3D版、それもできればIMAX 3Dでの鑑賞を強くおすすめする。ああ、背水の陣であるはずなのに、この偉大な“海”を背にして自慢気に笑っているキャメロン、“あなたが見える”。

【ストーリー】
舞台は第1作目から約10年後、地球からはるか彼方の神秘の星・パンドラの世界。元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)とパンドラの先住民ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)の子供たちからなる家族の物語。一家は神聖なる森を追われ海の部族に助けを求めるが、その楽園のような海辺の世界にも人類の侵略の手が迫っていた。

【キャスト】
サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガーニー・ウィーバー/スティーヴン・ラング 他

【スタッフ】
監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
製作:ジョン・ランドー

公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2

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12月16日(金)劇場公開

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