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【今週公開の注目作】『オデュッセイア』画面の端々から漂う潮と汗の匂い。ノーランが挑む、泥臭すぎる神話の旅。

【今週公開の注目作】

『オデュッセイア』
9月11日(金) 全国ロードショー
9月4日(金)~10日(金) IMAX®先行上映決定
公式サイト:https://odyssey-film.jp/

「ギリシャ神話の映画」と聞いて、パッと思い浮かぶイメージはどんなものだろう。真っ白なトーガをまとった美男美女、ピカピカに光る黄金の鎧、そして背景にはいかにもCGで作られた神殿やド派手なモンスター。これまでのハリウッドが描いてきた神話ものといえば、どこか浮世離れしたゲームのような世界観が定番だったように思う。だからこそ、クリストファー・ノーラン監督が次回作にホメロスの古典『オデュッセイア』を選ぶと聞いたときは、正直「なぜあのノーランが、今さら神話映画を?」と首を傾げた映画ファンも多かったのではないだろうか。日本でも先行上映がスタートし、SNS上では早くもその規格外の映像体験にざわつく声が広がっているが、いよいよ今週末から待望の全国拡大公開を迎える。

実際にスクリーンに映し出される映像を観てみれば、映画ファンの懸念は一瞬で吹き飛ぶはずだ。そこに広がっているのは、私たちがよく知るファンタジー映画の風景ではなく、ただひたすらに冷たい海水を浴びせられ、泥にまみれて生き延びようとする男たちの生々しい姿だ。

今回のノーランのアプローチは、ある意味でどこまでも愚直だ。長編映画として初めて「全編IMAXフィルムカメラのみ」で撮影されたというだけでも技術的なトピックとして十分凄まじいが、それ以上に画面から伝わってくるのは現場の圧倒的なフィジカル感だ。スタジオの緑色のスクリーンの前で演技をするのではなく、古代の仕様そのままに作られた木造帆船に乗り込み、モロッコやギリシャ、アイスランドなどの荒れ狂う海へ本当に船を繰り出している。主演のマット・デイモンをはじめとするキャスト陣は、吹き荒れる突風や容赦なく打ち寄せる波のなか、何時間も自分たちの腕で重い櫂を漕ぎ続けているという。彼らの顔に浮かぶ疲労の色も、潮風で錆びつき傷だらけになった青銅の甲冑も、作り物の枠を超えて驚くほどリアルだ。神々の怒りや怪物の脅威を、ファンタジックな魔法ではなく「人智を超えた自然の猛威」として捉え直す手つきは、いかにも現実の質感にこだわるノーランらしい。

もちろん、172分という3時間近い長尺のなかで、放浪を続けるオデュッセウスの旅と、故郷イタケ島で彼を待ち続ける妻ペネロペ(アン・ハサウェイ)や息子テレマコス(トム・ホランド)のパートが入り乱れて進むため、観る側にもそれなりの集中力と体力が求められる。神話のダイジェスト的なエピソードの多さに、少し腰が重く感じる瞬間があるかもしれない。また、一つ目の巨人キュクロプスをはじめとする怪物たちの描写が、これまでのファンタジー大作に慣れ親しんだ観客にどう受け止められるか、好みが分かれる部分もありそうだ。

それでも、哀愁と執念をにじませて漂流するマット・デイモンの泥臭い熱演や、ルドウィグ・ゴランソンが古代の楽器や銅鑼を激しく打ち鳴らす重低音の劇伴は、スクリーンの前で観ているこちらの息を止めさせるほどの引力がある。手軽でスマートな映像が溢れる今の時代に、莫大な手間と体力をかけて「映画館でしか味わえない途方もないスケール」を叩きつけてくるその姿勢には、理屈抜きで圧倒されてしまう。映画館のシートに座りながら、荒海を漂流する船の片隅に放り込まれたような感覚を味わえる一本。すでに先行上映で浴びた人も、今週末の全国公開を待っていた人も、まずはフラットな気持ちで映画館へ足を運んでみてほしい。

<ストーリー>
紀元前。10年に及ぶトロイア戦争を、知略を尽くした「トロイの木馬」作戦によって終結に導いたイタケの王・オデュッセウス。しかし戦後、愛する妻ペネロペと息子テレマコスが待つ故郷へ向け船を出した彼を待ち受けていたのは、海神ポセイドンの怒りによる過酷極まる放浪の旅だった。一つ目の巨人キュクロプス、魅惑の歌声で船乗りを惑わすセイレーン、孤島の魔女キルケや不死の精霊カリュプソなど、人智を超えた試練に部下たちを次々と奪われながらも、オデュッセウスは知恵と勇気を振り絞り、生きて故郷へ帰還することを誓う。一方、王の不在が続くイタケ島では、オデュッセウスの死を信じ込ませて宮殿を牛耳ろうとする不遜な求婚者たちがペネロペに結婚を迫り、テレマコスの命すら脅かしていた。延べ20年にわたる過酷な試練の果てに、英雄は再び家族を抱きしめることができるのか――。

<キャスト>
マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、サマンサ・モートン、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン

<スタッフ>
監督・脚本:クリストファー・ノーラン 

製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
エグゼクティブプロデューサー:トーマス・ヘイスリップ
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
プロダクションデザイン:ルース・デ・ヨンク
編集:ジェニファー・レイム
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
VFXスーパーバイザー:アンドリュー・ジャクソン
特殊効果スーパーバイザー:スコット・R・フィッシャー
衣装デザイン:エレン・マイロニック
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画     
全米公開日:7月17日(金)
2026/アメリカ/英語/172分/カラー/日本語字幕:アンゼたかし/吹替翻訳:木村純子/字幕・吹替監修:藤村シシン/原題:The Odyssey/G区分

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