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『ブラック・フォン』戦慄の“グラバー邸”にようこそ。ここでは絶たれた電話線こそが最後の生命線となる。

◆今週公開の注目作

ブラックフォン

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

グラバー邸は、1978年のアメリカ、コロラド州郊外に存在した。外から見ただけでは周りの住宅と何ら変わりない普通の住宅にすぎないが、堅固な扉に閉ざされ、内部の音を漏らさない地下室がある。その部屋には、断線した黒電話と簡素なベッドが置いてあるが、家主ではなく子どもたちのためのものだ。家主の子どもたち、ではない。子どもなら誰でも良い。この家に招かれた…いや、誘拐されてきた子であれば。観光名所になどなるはずがない。ここはイギリスの貿易商トーマス・ブレーク・グラバー(Glover)の家ではなく、連続誘拐殺人犯グラバー(The Grabber)の家なのだ。

最近はあまり聞かないが、ほんの数十年前にはシリアルキラー(連続殺人犯)による凶悪な事件が数多く報道されていた。特にアメリカには名の知れたシリアルキラーが多い。1970年代に事件を起こしていた者だと、ピエロの格好をして少年たちを襲っていたジョン・ウェイン・ゲイシーや、ハンサムだったことで知られ、若い女性たちを次々に手にかけたテッド・バンディ、今でもその正体が確定していない「ゾディアック」などがいる。本作のグラバーは架空の殺人鬼だが、ゲイシーをモデルにしたキャラクターである。彼は“実在”したのだ。

 

グラバーは真っ黒いバンで一人ぼっちの少年に近づき、マジシャンを自称して子どもたちを油断させたところで車に連れ込む。誘拐した子どもには、気味の悪い仮面で顔を隠し、文字通り笑顔を貼り付けたまま接する。人の心がない、とお決まりの言葉でなじるのは簡単だが、彼は機械のように無意味に人殺しをしているのではない。楽しいからやっているのだ。そこには確実に心が存在する。演じている名優イーサン・ホークは以前、本作の監督スコット・デリクソンと『フッテージ』でタッグを組んでいるが、その原題と同じくシニスター(邪悪)なキャラクターで、人間の深い闇を見せる。

 

しかし、本作の主人公はグラバーではない。忽然と消えた友人を心配していた矢先に自身も誘拐されてしまった少年フィニーと妹グウェン、そして殺された子どもたちだ。地下室に幽閉されたフィニーは、鳴るはずのない黒電話のベルの音を聞く。電話の相手は死んだはずの被害者たちで、グラバーに殺されたこと以外はほとんど覚えていない。グウェンは予知夢を見ることができ、断片的な情報からフィニーを必死に探そうとする。本作は、薄暗い歴史と超自然的な要素をかけ合わせるという面白い試みを行っている。

 

原作は、あのスティーブン・キングの息子ジョー・ヒルの短編だ。同じく殺人鬼のゲイシーをモデルにした殺人ピエロのペニーワイズが登場する『IT』に似た雰囲気があり(グウェンが雨の中黄色いレインコートを着るオマージュシーンがある)、大人たちは総じて役に立たない。兄妹は酒浸りの父から虐待を、学校ではいじめも受けており、頼れるのは互いと友人のみ。いつだって恐ろしいのは死者よりも生者の方だ。死者にはもう電話をかけることしかできないのだから。しかし、我々が聞くべきは加害者でなくまさにその被害者の声だ。この電話線はすでに切れているように見えるが、暴力渦巻くこの世界では目に見えない繋がりこそがライフラインとなるのだ。

【ストーリー】
子ども殺しの犯人に捕まり、防音の地下室に閉じ込められた13歳の少年フィニーは、断線した黒電話から以前の被害者からの電話を受け取る。

【キャスト】
イーサン・ホーク、メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウ

【スタッフ】
製作:ジェイソン・ブラム(ブラムハウス・プロダクションズ)
監督:スコット・デリクソン(『ドクター・ストレンジ』、『フッテージ』、『エミリー・ローズ』)
原作:ジョー・ヒル「黒電話」
配給:東宝東和 
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/blackphone
Twitter:@uni_horror
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Instagram:@universal_eiga
#ブラックフォン

 

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