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『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』人類に残された道はふたつ。神に絶対服従するか、神を殺すか。

◆今週公開の注目作

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

今から約3年前に公開された、トム・クルーズが飛行中の赤い複葉機に乗り……いや、機体の“上”に立ちながら我々観客に語りかけてくる映像を覚えているだろうか。当時は撮影中の『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作の宣伝映像ということになっていたが、思い返してみればその約1年後に公開された『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』にそのようなシーンはなかった。そう、映像に映っていたのは本作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』のアクションシーンだったのだ。強風に煽られながらもにこやかで、複葉機が機体を大きく傾けながら急降下していく間も爽やかにこちらへ手を振り続ける余裕っぷりに、それ自体が映画のワンシーンであるかのように錯覚したが、まさにその通り。本作において、そのシーンはもはや毎作恒例となった驚愕のアクションパートのほんの“ワンシーン”でしかない。

62歳の今になっても、毎年常人なら死んでいそうな不可能スタントに挑戦し、不可能と思われた生還を当然のように果たしている偉大なアクションスター、トム・クルーズ。『ミッション:インポッシブル』はハリウッドアクション映画の最前線であり、他のアクション映画よりもシリーズ前作と競うことで常に最高到達点を更新してきたシリーズだ。新作が発表されるだけで奇跡とも言えるが、本作もやはり、当然のように凄まじい。

前作を簡単に振り返ろう。昨今、現実世界も騒がせているAIの脅威についての物語で、人類は「エンティティ」なる超高度な人工知能に凌駕されつつあった。サイバー空間は全てヤツの庭であり、その恐るべき演算能力にかかれば未来予知すら可能。神か、全物質の動きを完璧に把握することで未来の状況を導き出せる超人的な知性の概念「ラプラスの魔」と呼ぶにふさわしい存在だ。かつて主人公イーサン・ハントの大切な女性であったマリーの命を奪った宿敵ガブリエルは、その大天使の名前通り、エンティティの指令通りに動く“神の軍勢”となりイーサンらに襲いかかった。イーサンとガブリエルはエンティティに繋がる2本1組の鍵を奪い合い、ひとまずはイーサンの勝利に見えたが……というところで前作は終わった。

 

本作ではエンティティがさらに世界に魔の手を伸ばし、その力に心酔する者が増えている。仲間と思った組織のメンバーにもそのような輩が入り込み、より誰も信じられない状況だ。鍵を持っているだけではエンティティを止めることはできず、1秒毎にエンティティによる人類滅亡計画が着々と進んでいく……だが、忘れるなかれ。エンティティが世界の支配を目論んだとしても、イーサン/トムはすでに様々な不可能作戦(スタント)に挑むことで世界を掌握している。先述したように空中も、本作の見せ場となる深海までもが彼のテリトリーなのだ。それに比べればサイバー空間など狭すぎる。

集大成と謳われているだけあり、本作はこれまでのシリーズをきちんと追っていると嬉しい様々なサプライズがある(とは言え、見ていなくても分かるようきちんと回想シーンとして描かれる親切設計)。最低限、前作さえ見ていれば話は分かるが、これまでの作品の要素を伏線として蘇らせることでイーサンの人生の総括にもなっている。まさに「ファイナル・レコニング(総決算、最後の報い)」だ。彼は時に、仲間ひとりの命のために世界を危険にさらすが、彼ひとりの命に世界の命運がかかっていると言ってもまた過言ではない。しかし、彼は決してひとりではない。前作に引き続き、本作はあらゆる意味で人間はAIを凌駕する存在であるとする高らかな宣言であり、その証明だ。神にとって人間は虫(バグ)と変わらないかもしれないが、神の演算をかき乱すバグでもある。本作がシリーズファイナルとならないことを願いつつ、劇場にて人間のしぶとさをしかと体感していただければ。

【ストーリー】
全ての“ミッション”はここにつながる――。映画の常識を変え、不可能を可能にし続けてきた『ミッション:インポッシブル』シリーズの集大成にして最高傑作、『ファイナル・レコニング』。トム・クルーズ演じるイーサン・ハントの運命は? そしてタイトルが持つ“ファイナル”の意味とは…?

【キャスト】
トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ 他

【スタッフ】
監督:クリストファー・マッカリー
脚本:クリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセン
製作:トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー

公式サイト:https://missionimpossible.jp/

 

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