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『ミッシング』みんな誰かに傷ついて、誰かを傷つけている。

◆今週公開の注目作

『ミッシング』

文:Nami

電車に揺られながら毎日のように開催される一人反省会。

職場での自分の行動、友人と遊んだ時の自分の行動、ふとした時に発した自分の言葉。「あの時、誰かの気に障るようなことを言わなかったか」「誰かを傷つけていないか」考え出したら、永遠に止まらない。同時に、自分が傷ついた誰かの言葉たちがエコーのように脳内で流れる。そしてまた、反省をする。という日々を筆者は送っているが、不思議な事にたいていの場合、思ったことは霧のようにモヤモヤと濁り、徐々にスッと消えていく。これというきっかけはないが、たぶん“変わらない日常”たちが取り戻してくれているような気がする。

本作はそんな、時に救いをもたらす“変わらない日常”が、娘の失踪をきっかけに突然壊れてしまった家族が描かれる。筆者は本作を、自身の日常とかけ離して見ることはできなかった。むしろ、日常から少し手を伸ばした先にある世界のように捉えてしまってしょうがなかった。

まず、改めて気付かされたのは、言葉の暴力は想像以上に恐ろしくて、想像以上に身近に潜んでいるということだ。それは、登場人物の言動で表現されている。例えば、主人公・沙織里は、SNSでの誹謗中傷に苦しむのだが、決して悲劇のヒロインとして描かれていない。彼女は彼女で娘への思いが強すぎるあまり、ときに誰かを罵ったり、殴ったりして傷つけている。沙織里を支える夫・豊も、沙織里の味方でいる一方で、客観的に物事を捉えるあまり、娘への思いから過剰な行動を取る沙織里に傷つける言葉を度々言う。そして、失踪事件を追う記者・砂田もまた、組織と人情の間で言葉を超えた表現という暴力に葛藤する。相手を傷つけると分かっていても、反対に相手に傷つけられると分かっていても、言葉の暴走に呑み込まれていってしまう。そんな人間の残酷な行動を、本作は容赦なく映し出している。そして、そんな彼女らの様子が、決して他人事ではないと静かに訴えかけてくるのが本作の何より恐ろしいところだ。

物語が進むにつれてきっと多くの人が思うだろう。娘の失踪によって日常が消えてしまった家族に、救いは訪れるのだろうか?日常を取り戻すことはできるのだろうか?と。ネタバレになってしまうため伏せるが、さすが“人間描写の鬼”と称される吉田恵輔監督。惜しい作品によく見る、取ってつけたような結末など存在しない。彼女らが崩れてしまった日常と向き合う中で抱えた沢山の感情を、抱きしめるように丁寧に、繊細に、優しく包み込んでくれる。哀しくて、苦しくて、優しくて、あたたかい。そんな言葉で表現できる感情だけではない全ての感情たちを、ぜひ自分の心で受け止めてほしい。

【キャスト】
石原さとみ、青木崇高、森優作、有田麗未、小野花梨、小松和重、細川岳、カトウシンスケ、山本直寛、柳憂怜、美保純、 中村倫也

【スタッフ】
監督・脚本:吉田恵輔
音楽:世武裕子
企画:河村光庸
プロデューサー:大瀧亮、長井龍、古賀奏一郎
撮影:志田貴之
製作幹事:WOWOW
企画:スターサンズ
制作プロダクション:SS工房
配給:ワーナー・ブラザース映画
©︎2024「missing」Film Partners

公式HP:missing-movie.jp
公式X:@kokoromissing
公式Instagram:@kokoromissing #ミッシング

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