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『マッド・ハイジ』「チーズ好きにあらずんばスイス国民にあらず」。そんな発酵した…もとい腐った国家を、完全武装少女ハイジがぶっ壊す!

◆今週公開の注目作

『マッド・ハイジ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ついこの前、『プー あくまのくまさん』が公開された。A・A・ミルンの原作がパブリックドメインとなったため、くまのプーさんを殺人モンスターにして血とハチミツたっぷりに描き、イメージを損なったとして多くのプーさんファンを怒らせたB級ホラーだ。そして再び、みんながよく知るあのキャラクターがイメージを一変させてここに誕生した。しかし、それほど怒る人はいないような気もする。すでにテレビで「低燃費~」とか言っていたり、ロッテンマイヤーさんとは違う謎の家庭教師と共演していたりするからだ。そう、『アルプスの少女ハイジ』は本作『マッド・ハイジ』として生まれ変わった! 「おしえておじいさん、スイス国旗はなぜ赤と白でできてるの?」と聞かれれば、「それはもちろん血とチーズの色だからさ!」(あっチーズは黄色…?)と答えたくなる映画として。

本作はそのタイトルに違わず、舞台設定からして狂っている。永世中立国として平和なイメージのあるスイスだが、今回は違う。マイリという名の独裁者が統治し、マイリの作る洗脳作用のあるマイリズチーズ以外が規制された全体主義国家だ。普通にヤギのミルクから作ったチーズは麻薬のように闇取引されており、乳糖不耐症の人に人権はない。マイリを演じているのは、ポール・バーホーベン監督が全体主義国家を風刺した『スターシップ・トゥルーパーズ』で主演を務めたキャスパー・ヴァン・ディーン。劇中でプロパガンダ映像も流れるので、同作にオマージュを捧げているのがよく分かる。乳糖不耐症は先天的な原因によっても起こるので、このスイスはある意味優生思想を掲げている。言うまでもなく、ナチス…ならぬ、“ナチーズ”政権下なのだ!

そんなスイスのアルプスで穏やかに暮らしていたのが、ご存じ主人公の少女ハイジ。そこまでは良いとして、一緒に暮らしているおんじ(おじいさん)はアニメ版と違い眼帯をしている(まあ原作だとおんじは過去に傭兵だったようなのでリスペクトがあるとも言える)。ハイジはおんじに反対されながらもヤギ飼いのペーターと付き合っていたが、ペーターが自家製チーズを裏で売りさばいていたため軍に処刑され、おんじも奪われたことで国家への復讐を決意する。完全にオトナ向け、まさにエロ・グロ・ナンセンスを地で行く内容だ。とは言え、おんじの仇の名がスープで有名な「クノール」(元々ドイツの企業)だったりして、脱力系ギャグがそこかしこに散りばめられた笑いの絶えない楽しい映画になっている。

製作陣は本作を「スイスプロイテーション(スイス+エクスプロイテーション)映画」と呼んでいる。エクスプロイテーション(搾取)映画とはエロ、グロ、ナチス、女囚などの要素を用いた俗悪な内容で観客を釣ろうとするもので、本作はまさにそれらとスイス要素を合体させた作品なのだ。エクスプロイテーション映画の代表作『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』へのオマージュらしきセリフもあるし、テイストとしてはチャリンコ版『マッドマックス』などとも表現される『ターボキッド』にも近い。

ところがただのウケ狙いの映画にあらず、むしろ本家『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のイモータン・ジョー周りを思わせる描写も出てくるし、語ろうとしていることは至極倫理的だ。ハイジの本名「アーデルハイト」は元々、「高貴」を意味する単語から来ている。そしてこれはたまたまだろうが、奇しくも「アドルフ」の語源も同じ。もしかしたら、槍斧ハルバードを装備したハイジが悪をたたっ斬るというシュールな見た目以上にやんごとない映画かもしれない。ロッテンマイヤーさんが、ハイジとともに囚われたクララを厳しく“教育”するロットワイラーという矯正施設長に変わっているのが最高だし、詳しく言わないが今後の展開も楽しみになる。「プー あくまのくまさん」を楽しめた方にもそうでない方にも、アニメ『アルプスの少女ハイジ』のファンにもそうでない方にもオススメの一本だ! 異論は認めません。

【ストーリー】
チーズ製造会社のワンマン社長にしてスイス大統領でもある強欲なマイリは、自社製品以外のすべてのチーズを禁止する法律を制定。スイス全土を掌握し、恐怖の独裁者として君臨した。それから20年後。アルプスに暮らす年頃のハイジだったが、恋人のペーターが禁制のヤギのチーズを闇で売りさばき、見せしめにハイジの眼前で処刑されてしまう。さらに唯一の身寄りであるおじいさんまでもマイリの手下に山小屋ごと包囲されて爆死。愛するペーターと家族を失ったハイジは、血塗られた戦士へと変貌を遂げる。復讐の鬼と化したハイジは、邪悪な独裁者を血祭りにあげ、母国を解放することができるのか!?

【キャスト】
アリス・ルーシー、デヴィッド・スコフィールド、マックス・ルドリンガー、アルマル・G・佐藤、キャスパー・ヴァン・ディーン、ケル・マツェナ 他

【スタッフ】
監督:ヨハネス・ハートマン&サンドロ・クロプシュタイン

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