MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『メカバース:少年とロボット』まさかのシンガポールから現れた映画という名の“ロボットアニメ”。監督の我が子への思いが時空を超える!

◆今週公開の注目作

『メカバース:少年とロボット』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

劇場では今、山崎貴監督による『ゴジラ-1.0』が上映中だ。筆者はまだ見ていないが、割と評判が良いので気になっている。同作の予告にある「監督・脚本・VFX:山崎貴」の文字に、映画制作に関わったことのない身としてはどれかひとつ担うだけでも十分すごいのになぁと素朴な思いを抱いていたが、どっこい上には上がいた。何せ、本作『メカバース:少年とロボット』を11年もかけて作り上げたリッチ・ホーなるその男は、監督・脚本・VFX…と製作・撮影・音楽・美術・衣装の全てを担当しているというのだ。いや、彼は俳優・声優として劇中にも登場しているので、そこに「演技」も加えることになるだろう。マルチタレントすぎる。一体全体彼は何者なんだ。

数年前までは、アジアのSF映画についてあまり聞いたことがなかったように思う。しかし、例えば『ブレードランナー』では有名すぎる(謎の)日本語ネオンが、筆者のオールタイム・ベストである『クラウド アトラス』では未来の韓国「ネオ・ソウル」が、ちょうど劇場公開中の『ザ・クリエイター/創造者』にも未来のアジア「ニューアジア」が出てくる。欧米のSF映画には未来的なイメージとしてアジア的なものが頻繁に登場するにもかかわらず、当のアジアにはSF作品が多くなかったのだ。ところがここ最近で、中国映画『流転の地球』や中国のSF小説が原作のドラマ『三体』、韓国映画『スペース・スウィーパーズ』などが作られている(『三体』は2024年配信予定だが、全てNetflixで見られる)。そして、『メカバース』は何とシンガポールのSF映画だ。レアもレア、激レアなシロモノである。

ストーリーは分かりやすく、宇宙を巻き込んだ戦争の中、地球の資源を狙い攻めてくる火星の軍勢を迎え撃つ新兵の少年カイとその相棒ロボット・リトルドラゴンの友情と戦いの物語になっている。軍人だったカイの両親は幼い頃に戦場に出たきり帰って来ず、カイはいつかの再会を夢見て入隊した。同期の仲間は、気の良いマッチョながら意味不明なことしか喋らないロックなどクセが強い者ばかり。厳しい訓練にも中々ついていけないが、人格を持ったリトルドラゴンとの絆を育みながら日々を耐え抜いていたところ、前触れもなく火星の兵に遭遇してしまう…。

設定自体はシリアスな部分もありつつも、本作は基本的にコメディだ。ほとんどがギャグであり、青春ものとしての爽やかさにも溢れている。ロボットの操縦方法は『パシフィック・リム』を、カイとリトルドラゴンの関係は『バンブルビー』を思い出させるが、リッチ・ホー監督は日本のアニメに強く影響を受けているらしい。「リッチ」という名にふさわしく声優陣は非常に豪華で、カイ役には『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の小野賢章、リトルドラゴン役には『鬼滅の刃』の花江夏樹がキャスティングされている。カイたちをビシバシ鍛える曹長役は、トム・クルーズなどの吹き替えでお馴染みの森川智之だし、監督自身が演じている、いつも良いところを持っていく大尉役は『スター・ウォーズ』シークエル・トリロジーのカイロ・レンを吹き替えた津田健次郎だ。

色々とライトすぎる作品ながら、意外と硬派でもある。何しろ、ヒロインがいないのだ。『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』のファイルーズあいも吹き替えを担当しているが、ヒロイン役ではない。リトルドラゴンのシステム音声役だ。何と贅沢な! 映画というより、少年時代に見た懐かしいアニメを思い出すような鑑賞体験になるのではないだろうか。監督が本作にかけた思いがYouTube上の動画で見られるが、幼い我が子を楽しませる物語として11年前に始動したプロジェクトが周りの人間の心を打ち、ようやく完成へと至ったことが語られている。

もちろん、『パシフィック・リム』や『バンブルビー』と同クオリティの作品とは言わない。しかし、思いの強さでは決して負けていないはずだ。子どもに読み聞かせる絵本のような、子どもに見せるテレビアニメのような感覚で作られた映画。これもまた、ひとつの立派な映画のあり方だろう。上記の動画の中で、監督の息子が見せる表情が全てを物語っている。劇場に向かう際はぜひお子さんを、または心の中の少年を一緒に連れて行こう。

【ストーリー】
人類が宇宙の謎を解き明かし、宇宙空間の自在な移動を可能にするゲート「ヘブンズ」が開発された時代。地球の豊富な資源である水を求め、火星帝国の攻撃による第二次宇宙戦争が始まり、「ヘブンズ」の先では地球軍と火星軍との熾烈な戦いが繰り広げられていた。先の大戦で地球軍のエースパイロットだった父を失い、母親までも地球を守るため土星へと飛び立ち姿を消した少年カイ。喘息の持病に苦しむも、成長した彼は父と母の歩んだ前線で命をかけて戦うパイロットを志し、メカコープアカデミーの門を叩く。彼はそこで、パートナーとなるAI搭載のロボット「リトルドラゴン」と出会い、共に強くなることを心に誓う。そしてアカデミーの仲間達との切磋琢磨を経て、地球を守るヒーローへと成長していく。果たしてカイは地球を守ることができるのか。そして銀河の先に姿を消した、母との再会を果たすことができるのか。不可能へと挑み続ける男たちの物語が、いま始まる。

【キャスト】
ジョナサン・シー、リッチ・ホー 他

【声優】
小野賢章、花江夏樹、森川智之、津田健次郎、伊藤健太郎、ファイルーズあい 他

【スタッフ】
監督・製作・脚本・VFX・撮影・音楽・美術・衣装:リッチ・ホー

制作年:2023年/制作国:シンガポール/上映時間:95分
© 2023 Heavens Pte Ltd All Rights Reserved
公式HP:mechaverse.jp

2023年11月17日(金)全国公開

バックナンバー