『アンビュランス』サイレンが聞こえたら道を開けろ！救急車(マイケル・ベイ)のお通りだ！

2022.03.23

◆今週公開の注目作

『アンビュランス』

マイケル・ベイ作品を劇場で拝めるのは久々だ。前作の『6アンダーグラウンド』(2019)はNetflixでの配信だったし、前々作の『トランスフォーマー/最後の騎士王』は2017年公開と5年も前の作品。ベイは学生向け食堂のおばちゃんのごとく、毎作ド派手な爆発シーンをてんこ盛りにしてくれるサービスの良さで知られており、その様子は“ベイヘム”(ベイ+メイヘム(＝破壊行為、大混乱))と呼ばれ愛されている。スタントマンや出演者以上に、“出演車”は過酷な目に遭うのが確実だ。

そんなベイが今回オファーしたのは、何とアンビュランス(救急車)。主人公ウィルは妻の手術費のため、義兄弟で犯罪者のダニ―と3200万ドルの銀行強盗を実行するも失敗。そして逃走車として選んでしまったのがたまたま、ウィルが誤射した瀕死の警官を乗せた救急車だったのだ。普段の行いは非常に良いはずなのに、Mr.救急車は特別捜査班に追われるウィルたちとともにベイヘムでメチャクチャになったロサンゼルスの街中を駆けずり回ることになる。「アンビュランス(ambulance)」の由来である、ラテン語の「ambulare(＝動き回る)」を体現するように。

もちろん、出演車だけでなく出演者にも注目だ。ウィル役は、DC映画『アクアマン』でヴィランのブラックマンタを演じて注目されたヤーヤ・アブドゥル＝マティーン二世(3200万ドルくらい余裕で出せそうな名だ)。ダニー役は、マーベル映画『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』のヴィラン、ミステリオ役のジェイク・ギレンホールであるため、DCとマーベルのヴィラン同士の共演ということになるのだ。

救急車の中で警官を助けようと奮闘する救急救命士キャムを演じているのがエイザ・ゴンザレスであることもまた興味深い。彼女は“カーチェイス・ミュージカル”映画『ベイビー・ドライバー』で銀行強盗側を演じていたからだ(後、『ワイルド・スピード』シリーズにも出演している)。ヴィランの性質を備えたキャストが、強盗しつつも人命救助するという、善悪の入り乱れたストーリーになっている。

アメリカ映画(に限らないが)を見ていると、よく家族を守るために他人を危険に晒す人物が登場する。本作のウィルたちもそうであるが、(ダニーは置いておいて)少なくともウィルはそれを良しとはしない。ベイ作品は脳の活動を止めて楽しめるのがひとつのウリだが、本作の場合はこの善悪というテーマについて考え出すと止まらなくなる。アクションも、人命救助も同じだ。止めたら、そこで終わり。ノンストップで走り続けなければならないのだ。

…とは言え、考えることの弊害はある。「治安の悪さで知られるロサンゼルスもここまでじゃないだろう」とか、「3200万ドルなんて『アルマゲドン』の製作費(1億4000万ドル)に比べればはした金だろう、ベイが払えば良いのでは」とか余計なツッコミも浮かんでくる。比較的低予算らしい本作の製作費より高いのか安いのかも気になるし…。だが、天然のボケであるベイには思う存分ツッコんであげるのが正しい対応なのだ。ロサンゼルス(＝天使たちの街)の天使たちも笑って許してくれるだろう。上機嫌でウィルたちを「お迎え」に来ないことだけを祈りつつ鑑賞するのがオススメだ。

【ストーリー】
妻の手術資金を工面するため、元軍人のウィルは血のつながらない兄のダニーに助けを求めるが、犯罪に手を染めるダニーが提案したのはLA史上最高額の銀行強盗＜3,200万ドル＝約36億円＞だった！
しかし、覚悟を決めて挑んだ強盗は計画通りにはいかず、警察に追われる事態に。窮地に陥った2人が逃走用に乗り込んだのはなんと救急車！しかもそこにはウィルに撃たれてしまった瀕死の警官が…。
一緒に乗り合わせた救命士キャム(エイザ・ゴンザレス)も巻き込みLA中を猛スピードで大爆走！豪快に吹っ飛ぶ車、ド派手な爆炎…パトカーのみならずヘリまで出動！単純な強盗だったはずが、街全体が大混乱の事態に…！2人は瀕死の警官を死なせることなく大金を奪い逃げきれるのか⁈まさに絶体絶命のノンストップ・アクションの幕が上がる！！

【キャスト】
ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル＝マティーン二世、エイザ・ゴンザレス　ほか

【スタッフ】
監督：マイケル・ベイ

3月25日(金)より、ロードショー

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