『ロード・オブ・ザ・リング：力の指輪』あの壮大な景色が再び眼前に広がる。世界を滅ぼす指輪の誕生秘話となるか。

2022.09.10

この映画は、つまり―

史上最大規模のドラマがここに！
映画『ロード・オブ・ザ・リング』の雰囲気を全て受け継ぎ、さらに前の時代を描く！
ファンタジーでありつつも、“現実”

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◆配信中の注目作

『ロード・オブ・ザ・リング：力の指輪』（2022）

Amazonプライムで視聴する⇒こちら

文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

最近では、「10時間の映画」などと例えられるTVドラマが増えてきた。1話1話に巨額の予算が投じられ、ルックもクオリティも映画と比べて全く見劣りしないからだ。そして今、その中でも最も映画クラス、いや、ある意味映画を超えてしまったドラマが現れた。Amazonプライム独占配信の『ロード・オブ・ザ・リング：力の指輪』である。

本作はすでにシーズン5まで作られることが決定しており、ドラマ史上最高の制作費がかけられたと言われている。その額何と、少なくとも10億ドル(約1400億円)！　20年前に公開された、ピーター・ジャクソン監督による映画『ロード・オブ・ザ・リング(以下LotR)』3部作の総制作費ですら、“わずか”2億8100万ドルである。さらに言えば、Amazonは本作のドラマ化権を得るために2億5000万ドルを費やしているので、1話を作り始める前から映画3作分に匹敵する金額がかかっているのだ。

そこまで“力”の入ったこの『力の指輪』、実際内容はどうなのかと言えば…圧巻だ！　映画版を思い出させる完成された世界観とビジュアルはきっちり引き継がれ、どこを切り取っても絵画のような美しさ。まるで地球ではない場所で撮影したかのようだ。この世界でも、『LotR』に登場したエルフやドワーフなど様々な種族がひしめき合い、時に談笑し、時に口論している。『LotR』らしさは健在で、良い意味での「理解しきれなさ」も残っている。

まず、簡単に『LotR』シリーズのストーリーを振り返ろう。『LotR』3部作の主人公でホビットのフロドは、育ての父ビルボから1つの魔法の指輪を受け取る。この指輪は大昔に邪悪な存在であったサウロンによって作られ、強者が手に入れると世界を支配できるという危険な代物だ。『LotR』3部作は、この指輪を消滅させるまでの物語だ。次に、ジャクソンは『LotR』から60年前のビルボの冒険を『ホビット』3部作として映画化する。『力の指輪』はさらにそれから3000年以上前の、指輪が作られた時代を描いている。

この指輪こそが「力の指輪」だ。全部で20個あり、3個はエルフに、7個はドワーフに、9個は人間に与えられた。そしてそれら全てを支配できるのが、フロドが持っていた指輪。第2話の時点ではまだ指輪は登場しないが、聞き覚えのある名前が出てくる。ガラドリエルとエルロンドだ。『LotR』でもお馴染みのこの2人は長命のエルフのため、本作に若き姿で登場する。特にガラドリエルは『LotR』時のような神秘的な存在でなく頑固な戦士として描かれており、新鮮だ。本作でも『LotR』のように、悪はすでに潰えたと思われている中で徐々に不穏な空気が染み出してくる。エルフ、ドワーフ、ハーフット(ホビットの一種族)、人間サイドの4つのパートが同時に進むので、第1話を見ても何が何だか分からないかもしれない。

しかし、中々理解しきれないのは当たり前。『LotR』シリーズの鑑賞は、その世界と歴史に対峙することと同義なのだ。実は、トールキンによれば、主に舞台となる中つ国(ミドル・アース)を含めたこの世界は、我々が生きている地球(アース)のかつての姿とのこと。自分が生きる世界の全てを知るのは難しい。ならばいっそ、分からないままその中に飛び込んでしまえば良いのだ。様々な人種が団結し、強大な邪悪に立ち向かう話は、指輪が消滅してから久しい現代に生きる我々にとっても他人事ではない。指輪は形を失ってなお、目に見えない“力”となって今なお存続しているのだ。“力”に打ち勝つ方法は、本作で活躍する偉大な先人たちに学ぶと良いだろう。