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『ザ・スイッチ』いつでも相手の立場に立って考えることが大事。交互に訪れる恐怖と笑いに酔いしれろ!

この映画は、つまり―
  • 期待を裏切らない「入れ替わりもの」!
  • B級ホラーだからこその語り口!
  • クリストファー・ランドン監督ならではの、複雑で目を引くキャラクターたち

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◆配信中の注目作 

『ザ・スイッチ』(2020)

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文:屋我平一朗(ホラーが主食の映画ブロガー)

入れ替わりものは定番の映画ジャンルのひとつ。「オレがアイツでアイツがオレで」というやつだ。同性で入れ替わるパターンと異性で入れ替わるパターンがあり、後者の場合、古い邦画では大林宣彦監督の『転校生』、最近のものだと『君の名は。』などが挙げられる。このジャンルの先駆けはジョディ・フォスターの『フリーキー・フライデー』で、13日の金曜日に中学生役のジョディが母親と入れ替わってしまう。『ザ・スイッチ』では異性同士で入れ替わるが、他の作品と違い夢はない。むしろ悪夢だ。13日の金曜日に、普通の女子高生が殺人鬼おじさんと入れ替わってしまうのだから(ちなみに『ザ・スイッチ』の原題は『Freaky』)。

監督のクリストファー・ランドンは、以前タイムループ・ホラーコメディ『ハッピー・デス・デイ』と続編『ハッピー・デス・デイ 2U(トゥ・ユー)』を手がけた。普通のホラー映画では真っ先に死ぬような奔放な女性キャラクターを主人公にした上、ループものの傑作『恋はデジャ・ブ』を下敷きにして、最初はサイテーな彼女を段々と魅力的なヒロインに成長させ、「ただのB級ホラーだろう」と高を括っていた観客の度肝を抜いた。本作でも、その手腕は遺憾なく発揮されている。他人の不幸は蜜の味、いじめられっ子女子高生のミリーが中年の殺人鬼ブッチャーの姿で叫び慌てふためく姿は、彼女には悪いが非常に可笑しい。対して、女子高生の姿になったブッチャーは少々ケバいが完璧なメイクで登場し、「マーダー(殺人)バービー」と呼ばれる。これはギャグでもあるが、ランドンらしい多面的なキャラクター描写ともとれる。

外見からはその人の全ては見抜けない。ランドンはゲイを公言しており、本作では意識的にジェンダーに関する様々な描写を入れている。何のエクスキューズもなくゲイの男子がミリーの友人として登場するし、ミリーとブッチャーの入れ替わりでは双方が異性の外見や性役割を利用した行動をとる。皮肉にも、ミリーはいじめっ子に仕返しできる肉体を手に入れた。最悪な入れ替わりではあるが、相手の立場に立って初めて見えることもある。幸か不幸か、我々には実際に他人と入れ替わるチャンスはないが、本作は相手の内面を受け入れる尊さを描いている。「ただのB級ホラー」? いや、B級ホラーだからこそ語れることがあるのだ。見た目はブラックコメディだが、あなたにも本作の内面の美しさが伝わりますように。

【ストーリー】
ミリーは、片想い中の同級生にも認識されない地味な高校生。親友たちと普通の学生生活を送っていたが、ある13日の金曜日、連続殺人鬼“ブッチャー“に襲われ謎の短剣で刺されてしまう。間一髪、命は取り留めたミリーだが、次の朝目覚めるとミリーとブッチャーの身体が入れ替わっていた。女子高生姿のブッチャーが虐殺計画を進めるなか、中年男姿のミリーは24時間以内に身体を取り戻さないと一生元の姿に戻れないことを知り…。

【キャスト】
キャスリン・ニュートン、ビンス・ボーン

【スタッフ】
監督:クリストファー・ランドン

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