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『アーミー・オブ・シーブズ』ゾンビには勝てずとも、金庫のことならこのKY男に任せとけ!

この映画は、つまり―
  • 『アーミー・オブ・ザ・デッド』の前日譚にして、本家を超えた…かも?
  • 主演俳優が監督も兼任し、キャラクターの魅力倍増!
  • 金のために死ぬな!ロマンに生きろ!

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◆配信中の注目作 
『アーミー・オブ・シーブズ』(2021)

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

本作はゾンビパニックで荒廃したラスベガスを舞台に、一攫千金を求めた傭兵たちの戦いを描いたNetflix映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』の前日譚である。同作のキャラクターの中で特に異彩を放っていたのが、今回の主人公ディーター。へなちょこでゾンビを怖がってばかりいるが、どんなに複雑な金庫も攻略する男だ。『アーミー・オブ・ザ・デッド』に登場する金庫は、何とも仰々しく「神々の黄昏」と名付けられていた。同作の雰囲気にピッタリの「世界の終わり」という意味なので、その由来にそれ以上の理由もなさそうだったが、本作で本当の意味が明かされる。設計者のハンス・ワーグナーが、同性の作曲家リヒャルト・ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指輪』をモチーフにして作り上げたのだ。「神々の黄昏」は4部作のこの劇の最終パートに当たる。つまり、その前に「ラインの黄金」、「ワルキューレ」、「ジークフリート」と名付けられた3つの金庫が存在する。そして、最も開錠が簡単な「ラインの黄金」でさえ、ダイヤルの組み合わせは4億1300万通り。…ゾンビと戦う方が楽なのでは?

本作の監督は、前作のザック・スナイダーから、ディーター役を演じたドイツ人俳優のマティアス・シュバイクホファーにバトンタッチ。監督自ら自分の役にフォーカスした作品を撮っているので、当然キャラクターの魅力が存分に引き出されている。ディーターはKYだ。Kinnko Yaburiの略である。幼少期から金庫に魅せられ、イメージトレーニングを繰り返しながら腕を磨いてきた。これまでは銀行員として地味ながら真っ当に生きてきたが、趣味で再生回数0の金庫好きYouTuberもやっていたところを強盗団(シーブズ)にスカウトされる。彼にとって金庫はパズルだ。解かれないために作られるパズルなどない。だが、腕は確かなのに、時間がないと急かされながらも金庫の前でマイペースに指のウォーミングアップを始めたり、『ニーベルングの指輪』のうんちくを語り出したり、バレるかもしれないのに大音量でワーグナーを流し始めたりする。やはりKY(Kuuki ga Yomenai)である。ことあるごとに女性顔負けの甲高い声で「キャアアア」と叫んでもくれ、そのキュートさが観客の心をガッチリ掴む。

タイトルにある通り、本作はあくまで強盗団の話であってゾンビ(亡者)は出てこない。しかし、5人の強盗団のうち何人かは金の亡者だ。逆に、ディーターはオタクなので、金庫という作品を読み“解く”ことこそが目的。つまりロマンに生きている。『アーミー・オブ・ザ・デッド』は、娘を亡くしたザック・スナイダーの復帰作で、やりたいことを詰め込んだ作品だった。だが、同作ではそこまで濃く各キャラクターを描いていなかった。本作は、好きなことの追求を賛美しつつコメディ色を強め、より魅力的な主人公たちを生み出した。鑑賞後に『アーミー・オブ・ザ・デッド』でのディーターを思い出すと、さらに深い感慨に浸れるだろう。好きなことができないのなら、ゾンビであるのと変わらないのだ。

【ストーリー】
謎の女性にスカウトされた銀行員のディーターは、欧州を股にかけて伝説の金庫3つを狙う強盗一味に加担する。

【キャスト】
マティアス・シュバイクホファー、ナタリー・エマニュエル、ルビー・O・フィー

【スタッフ】
監督:マティアス・シュバイクホファー
脚本:シェイ・ハッテン
製作:ザック・スナイダー、デボラ・スナイダー、ウェスリー・コラー、シュバイホーファー、ダン・マーグ
音楽:ハンス・ジマー、スティーブ・マザロ

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