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『ヴェノム:ザ・ラストダンス』自らをも蝕むほどに凶悪な、そしてこれまでで最も甘い“毒”。

この映画は、つまり―
  • 色々あったSSUも、本作と次作でおしまい。めでたしめでたし……?
  • とりあえずバカップル・エディ&ヴェノムは健在
  • 死が我らを分かつまで……

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◆配信中の注目作

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

せっかく生まれた世界が滅んでしまうのは実に悲しい。かつての勢いはまだ取り戻せていないものの今後も続いていくマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を見ていると、余計にそう思う。滅んでしまう世界というのは、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)だ。おそらく、昨年末の『クレイヴン・ザ・ハンター』が最後の作品となるのだろう。スパイダーマンの名を冠しながら、結局彼を登場させることは叶わなかったSSU……なんと皮肉な結末だろうか。昨年は『クレイヴン・ザ・ハンター』の他に『マダム・ウェブ』と今回取り上げる『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の3本が公開され、年間の公開本数だけで言えば全盛期のMCUと変わらなかったのに、MCUと対照的にそのことごとくが批評的にも興行的にも失敗してしまった。

一昨年の、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)の終わりが見えている中公開された『ザ・フラッシュ』が(批評的には)一矢報いたのが記憶に新しいが、SSUはそれもできなかったのが痛い。正直言って、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』はこれまでの『ヴェノム』シリーズをそれなりに気に入っている筆者にとってもかなりのポンコツ映画であった。しかし、シリーズを追いかけてきた方ならばこの走馬灯を見ずに死ぬなど許されない。……気力と時間とヴェノム愛があると自負している方だけついてきてほしい。もう後戻りはできない。

まず本作、話運びが非常にアンバランスだ。いきなり、ヴェノムらシンビオートの創造主らしきヌルなる敵が登場する。だが、かつてシンビオートの反乱により宇宙の果てに封印され、ヴェノムと宿主のエディ・ブロックが持つ“コーデックス”なる鍵を探し求めていることがヌル自身の独り言によって説明される。観客は初耳だが本人が言うのだから間違いないのだろう。そして手下のシンビオート・ハンターである不死身の化け物ゼノファージをエディ&ヴェノムの下に送り込むのだ。ちなみに、ゼノファージはボスと違ってワープができる。アンバランスである。ともかく、ヌルは駆け落ちした娘とその彼氏を血眼になって探している父親のようなものだ。ヴェノムが“娘”らしいかは置いておいて。ついでにそのカップルは人間社会でも犯罪者として追いかけられており、シンビオートの研究施設があるエリア51で最後の異種武闘会、いやさ舞踏会が始まるのだった……。

ワイルドに見えるヴェノムらシンビオートの言動はかなりマイルドで、これまでより子ども向けの印象が強い。だが念のため言っておくと、見所はきちんとある。まずはいつものエディ&ヴェノムのイチャイチャだ。シリーズファンは、きっとこれが見たくてずっとついてきたのであろうから、その点は心配しなくて良い。そして、1作目の時点で(一部の)観客の期待を裏切ってしまったグロ要素。これに関しては、もしかしたらシリーズ中で最も顕著かもしれない。ヴェノムが人の頭を喰うだけでなく、『ファーゴ』のワンシーンを思わせるゼノファージの殺戮シーンまである(やはりアンバランスだ)。

他にも、ソニー製作のスパイダーマン作品であった『アメイジング・スパイダーマン』のヴィラン・リザードを演じたリス・エヴァンスが全く関係のない役で再登場したり、シンビオートたちのアッセンブルがあったりと、(色んな意味で)気になる部分がある。ああ、MCUの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でヴィラン・ミステリオを演じたジェイク・ギレンホールが若い頃に出演した『ドニー・ダーコ』の主人公ドニーよ。ヒーローのような名前の彼に、滅びゆくこのSSUを救ってはもらえないだろうか? 同作のアイコンであるウサギとヴェノムはよく似ているのだし……なんて愚痴っても仕方ない。望みは薄くともSSUが成功する道はあったはずだと信じているが、残念ながらそうはならなかったのだ。であれば、死がヴェノムと我ら観客を分かつまでの束の間で、ともに最後に1曲踊ろう。“たった”110分間のダンスを。

【ストーリー】
<俺たち2人>でいることが、世界を破滅に導く。ヴェノムに隠された秘密を知る、無の神にして世界の破壊者ヌルが、2人を分かつ最大最凶の敵として登場! シリーズ最大スケールで描かれる2人の決死の逃亡劇と、ヴェノムの秘密を狙って容赦なく立ちはだかる最強の敵、シンビオートの創造主ヌルとの壮絶な戦い。「あいつは相棒なんだ」「エディ、最期まで一緒だ」。あたり一面が火の海と化すほどのラストの死闘の末に、<俺たち>2人が迎える最終章(ラストダンス)とは……。

【キャスト】
トム・ハーディ、キウェテル・イジョフォー、ジュノー・テンプル、リス・エヴァンス、スティーヴン・グレアム、ペギー・ルー 他

【スタッフ】
監督・脚本・製作:ケリー・マーセル
原案:ケリー・マーセル、トム・ハーディ

 

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