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『最後まで行く』悪事にはギュッと目をつぶり、しかし刮目して見よ。この暴走クライムサスペンスの行く先を!

この映画は、つまり―
  • ぜひ日本版リメイクが公開されるこのタイミングで!
  • 緩急の効いた予測不能のドライブ!
  • どんな“最後”にたどり着く?

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◆配信中の注目作

『最後まで行く』(2014)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『最後まで行く』は、2014年の韓国産クライムサスペンスだ。『ヴィレッジ』などで知られる藤井道人監督によって日本版リメイク作品が撮られたばかりで、同作は5月19日に公開を控えている。オリジナル版がすでに配信されているので、見比べるために予習するにはちょうど今が絶好のタイミングなのだ。

韓国映画ファンの中には、その直訳めいた無骨で独特な邦題に不思議な魅力を感じている方も一定数いるのではないか。本作も例に漏れず、あまり他では聞かないような響きのタイトルだが、まさに内容を的確に表している。物語は、横領している刑事のゴンスが内部監査を切り抜け、同時に母親の葬儀にも出席しなければいけないという、究極のジレンマに陥っているところからいきなり始まる。スピード制限無視で車を走らせていた彼は注意が散漫になり、飛び出してきた男を轢いてしまう。死体をトランクに入れ再び走り出したゴンスは全てをひた隠しにしようとするが、これがかなり危なっかしいのだ。

ゴンスが死体を隠そうとする場所は、何と母親の棺の中。確かに二度と掘り起こされることはないだろうが…、このある意味では合理的ながらもぶっ飛んだ発想がまさに韓国映画らしい。このジャンルの映画につきものの「見つかるか、見つからないか」のサスペンスは普通五分五分といったところだろうが、焦るゴンスのやることなすことが完璧に上手くいくはずもなく、「見つかりそう」が9割のままストーリーが進んでいく。これがサスペンスの他に滑稽さを生み、非常に緩急の効いたストーリーテリングになっている。アクセルを踏み込んだと思ったら急ブレーキ、を繰り返す危険なドライブだ。

しかも、ゴンスの秘密は正体不明の男にバレており、タイムリミットまで課される羽目になってしまう。印象的なシーンでかかる音楽は、有名なショスタコーヴィチの『ワルツ第2番』。アルトゥル・シュニッツラーの『夢小説』を映画化した、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ ワイド シャット』で用いられたあの曲だ。この悪夢のような状況に、ゴンスはきっと「ああ、これらが全て夢なら良かったのに!」と思ったことだろう。

“最後”とは、通常行き止まり(デッドエンド)を意味する。袋小路、列車の終着駅、物語の結末…、もう先には行けない場所だ。本作の悪夢的状況も例に漏れず、きちんと壁に囲まれたところで終わりを迎えるが、それは見る者の想像を超えて「これで良いのか!?」と戸惑わせるエンディングだろう。だが良いのだ。これでこそ韓国映画なのだ。日本版リメイクは、この高いハードルを超えた出来になっているのか。それを確かめるためにも、まずはこの爽快なほどの危険運転に翻弄されてほしい。

【ストーリー】
殺人課の刑事ゴンスは、母の葬儀を抜け出し車で警察署へと向かっていた。急遽署内に監査が入る事になり、ゴンスは横領の証拠を隠さなければならなかった。しかし、無謀な運転が仇となり誤って通行人を轢いてしまう。なんとか隠蔽しようと考えたゴンスは、死体を持ち帰り母の棺桶に入れて一緒に埋葬する。そして数日後、警察内部でこの被害者不明のひき逃げ事件に対する捜査が始まり、あろうことかゴンス自身が事件の担当となってしまう。そんな中、謎の男からゴンス宛てに電話が入る。男は電話口で囁いた。「お前が殺した事を知っている―。」と…。

【キャスト】
イ・ソンギュン、チョ・ジヌン、シン・ジョングン、チョン・マンシク、シン・ドンミ 他

【スタッフ】
監督・脚本:キム・ソンフン

 

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