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『ミッドナイト・クラブ』いくつもの“予感”を抱かせて、物語はどこに進む?傑作続きのマイク・フラナガン監督が贈るホラー・ドラマ。

この映画は、つまり―
  • 今最も腕のあるホラー監督!?『ドクター・スリープ』のマイク・フラナガンによるドラマシリーズ
  • 「物語る」ことの意味
  • 感動するホラーなんてアリ!?

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◆配信中の注目作

『ミッドナイト・クラブ』(2022)

Netflixで視聴するこちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

現在、最も勢いに乗っているホラー監督と言えば誰だろう? 若手ながらすでに現代ホラーのクラシックとも言われている『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスターや、常に斬新なホラーを作り続け、昨年の『マリグナント 狂暴な悪夢』ではついにホラーという枠すらブチ破ったジェームズ・ワン…。他にも多くの候補がいるが、筆者はマイク・フラナガンを推したい。『シャイニング』の続編である『ドクター・スリープ』や、同じスティーブン・キング原作の『ジェラルドのゲーム』などを映画化した監督だ。彼は、最近は映画ではなくNetflixのホラー・ドラマを作り続けているが、例えば『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』ではホラー×家族ドラマ、続編の『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』ではホラー×ラブストーリーと、2つの要素を完璧に融合させている。

そのフラナガンは、新作『ミッドナイト・クラブ』に何を混ぜたのか。第1話を見ただけで、かなり多くの要素が登場する。舞台は1990年代、主人公で秀才のイロンカは大学入学を控えながら、治る見込みのない甲状腺乳頭がんを宣告される。治療を諦めた彼女は、同じように若くして死を待つだけの者たちが“余生”を過ごすホスピスに入居する。若者たちは大人の目を盗んで真夜中に集まり、百物語じみた会合を行っている。その名こそ「ミッドナイト・クラブ」、クラブの真の目的は、あの世と交信すること。このホスピスには過去、奇跡的にがんが完治した入居者もおり、建物はカルト教団の施設として使われてもいたらしい…。ちなみに、『エルム街の悪夢』の主役ヘザー・ランゲンカンプがホスピスの医師役で出演している。

ホスピスは外見的には綺麗で上品だが、その中でイロンカは何度も不気味なビジョンを見る。これは、『シャイニング』の中で超能力を持つ少年ダニ―がビジョンを見るのに似ている(霊安室に続いているらしい不気味なエレベーターも登場)。あなたも同様に、雑多な要素から今後の展開をいくつも予感するだろう。また、個性豊かな若者たちの“クラブ”と聞いて思い出すのは青春映画『ブレックファスト・クラブ』だ。本作の場合は青い春というより青白い春となりそうだが…、若者たちが語る物語は嘘のようによくできていて、しかし真実のかけらを含んでいるようで、“耳”が離せない。

人が物語るとき、その人ならではの編集がなされる。フラナガンはそこに自覚的で、「物語る」ことについて『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』では恐ろしいほど美しいラストを用意してみせた。本作の若者たちの物語からも彼らの想いや死生観などが浮かび上がり、エピソードが進むごとに本作という物語の形が見えてくる。ホラー部分については、若者たちの物語らしくジャンプスケア、つまり驚かしが多い(第1話のジャンプスケアは驚愕の21回で、ギネス記録)。もちろん意図的にやっているのだが、今回はホラーよりも感動的な要素が強い。もしもホラーに苦手意識があるならば、本作を見てホラーの懐の広さを知っていただければと思う。真夜中の暗闇が優しく抱きしめてくれるだろう。

【ストーリー】
このクラブに入会できるのは、死期が間近に迫った者だけ。ようこそ、ミッドナイト・クラブへ。

【キャスト】
イマン・ベンソン、イグビー・リグニー、ルース・コッド、ヘザー・ランゲンカンプ 他

【スタッフ】
監督:マイク・フラナガン 他
脚本:マイク・フラナガン、リア・フォング

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