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『イン・ジ・アース』帰れや帰れ、あの森に。暗くて深い、樹の海に…。見る者全てを置き去りにする、カルトな森ホラー!

この映画は、つまり―
  • イギリスの変人監督ベン・ウィートリーがまたもや放つ強烈なカルトホラー!
  • 緑と赤の波状攻撃が観客を襲う! ポリゴンショックに注意!
  • 予想していたパンデミック映画には見えないけれど…?

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◆配信中の注目作

『イン・ジ・アース』(2021)

Netflixで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

カルト映画(「カルト集団が出てくる映画」も含む)と言えば、最近だと『ミッドサマー』が有名だろう。『ミッドサマー』はアメリカ・スウェーデン映画だが、ブッ飛んだ映画に関してははイギリスも負けていない。そもそも、『ミッドサマー』の元ネタにもなっている『ウィッカーマン』はイギリス映画なのだ。そして本作『イン・ジ・アース』もまた相当におかしな作品になっている…というか、監督のベン・ウィートリーのフィルモグラフィーにはヘンな作品しかない。

あなたが良質なB級ホラーを掘るのが趣味ならば、日本で見られるウィートリー作品の中で最も古い『キル・リスト』の名を聞いたことがあるかもしれない。形容しがたい怪作で、配信もされていないレア映画だが、DVDレンタル自体は可能なので興味があれば探してみると良いだろう。中年男性の殺し屋2人組がシゴトを行ううち、より得体のしれない事態に巻き込まれていくホラーだ。次作の『サイトシアーズ ~殺人者のための英国観光ガイド~』は旅行しながら他人を殺しまくるカップルを描いたブラックコメディだった。ここまでは知る人ぞ知るホラー監督だったが、ここから一気に多くの人の目に触れるようになる。

『ハイ・ライズ』はMCUのロキを演じているトム・ヒドルストンらハリウッドキャストを揃え、停電した高層マンションを舞台にしたスリラーだった。そしてキャプテン・マーベルことブリー・ラーソン主演の『フリー・ファイヤー』を撮ったが…、ほぼ全編が銃撃戦ながら、そう聞いてイメージされるものとは全く異なるオフビートコメディ…もといオフビート殺し合い映画になっていた。そしてなぜかヒッチコック作品のリメイク『レベッカ』を撮り…、『MEG ザ・モンスターズ2』を撮った。意味不明だ。『MEG2』に関しては未見なのでウィートリー節がどれほど効いているか分からないが、『MEG2』の前に撮られたこの『イン・ジ・アース』は、やはりカルト映画としか言いようのない奇怪な内容になっていた。

ウィートリーは、26のアルファベットにちなんだ死を見せてくれるホラーアンソロジー『ABC・オブ・デス』に短編『Unearthed(掘り起こされたモノ)』で参加していた。だが今回のタイトルはそれと逆に『イン・ジ・アース(地中)』。ロックダウンの最中に撮影されたこともあり、謎の感染症によって大打撃を受けている世界が舞台となっている。植物の根と菌類が共生して作られた、栄養分などを供給するネットワークである菌根について研究しているマーティンと案内人のアルマが、研究ステーション「ATU327A」を目指し森に分け入っていくが…というストーリーだ。ちなみに、アルマを演じるエローラ・トーチアは『ミッドサマー』にも出演している。

普通に考えればパンデミック・ホラーになりそうなものだが、普通とは程遠いウィートリーはそうしなかった。むしろ近いのは、やはり『ミッドサマー』と同じフォーク(民間伝承)・ホラーだ。元来、森は魔術などと結び付けられやすい場所である。グリム童話が作られたドイツにはシュヴァルツヴァルト(=黒い森)があるし、ドラキュラで有名なルーマニアにはトランシルヴァニア(=森の向こう側)がある。余談だが、目的地「ATU327A」の「ATU」とは、昔話をタイプ別に分けたものである「アールネ=トンプソン=ウター分類」の頭文字と同じ。そしてその中の327Aの項目にあるのは、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」だ。劇中でも超常的な力を持つ不気味な存在について言及されており、繋がりが示唆される。

しかしカルト映画なだけあって、テーマは複雑かつ難解。おそらく上記の説明もネタバレにはならないだろう。その代わり、本作は映像と音によって直接的に脳を揺さぶってくる。植物の緑色と、補色関係にある血の赤の対比が強烈だ。イギリスらしいブラックユーモアと交互に繰り出される痛すぎるゴア描写には気合いが入りまくっている。ただでさえ目がチカチカするのに、後半のもはや実験映画という他ない攻めた映像表現には目を焼かれる。掘り下げがいのある尖った映画が見たいなら、本作はうってつけだ。正直筆者にも本作の正体が分からないが、共生体(シンビオート)が登場する『ヴェノム』と同じく共生(シンバイオシス)がキーワードなので、もしかしたらウィートリーなりにコロナウィルスとの共存の道を模索したウィズコロナ映画…、なのかもしれない。

【ストーリー】
土壌の研究を専門とする科学者が、行方不明になった同僚を探すため入った森の中で知ることとなる、思いもよらぬ大自然の暗部。そしてその先には、おぞましい体験が待ち受けていた…。

【キャスト】
ジョエル・フライ、リース・シェアスミス、エローラ・トーチア、ヘイリー・スクワイアーズ、ジョン・ホリングワース、マーク・モネロ 他

【スタッフ】
監督/脚本:ベン・ウィートリー
製作:アンディ・スターク
撮影:ニック・ギレスピー
美術:フェリシティ・ヒクソン
衣装:エマ・フライヤー
編集:ベン・ウィートリー
音楽:クリント・マンセル

 

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