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『ヘッド・オブ・ステイト』新“米”の大統領 VS(&) “英”武の首相! 喧嘩ついでにテロリストを倒せ!

この映画は、つまり―
  • 2国のヘッドが、分断を引き起こすテロリストに立ち向かうバディ・アクション・コメディ!
  • イドリス・エルバ強い! でもこのジョン・シナ……弱い!!
  • 『ハードコア』『Mr. ノーバディ』の監督らしい気の利いたファイトシーンとギャグが満載

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◆配信中の注目作

『ヘッド・オブ・ステイト』

配信先:Prime Video

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

不思議なことだが、正反対のものは往々にして惹かれ合う。または、反発し合っていてもなぜだか離れられない。磁石のN極とS極、光と闇、犬猿の仲のふたりだって、いつでもセットで語られがちだ。本作『ヘッド・オブ・ステイト』の主人公たちもまさにそう。アクションスター時代の人気で新たなアメリカ大統領となった楽天家のウィル・デリンジャー(ジョン・シナ)と、元軍人で叩き上げのベテラン首相である皮肉屋のサム・クラーク(イドリス・エルバ)は何もかもが正反対のため、会うとすぐに喧嘩してしまう。ところがある事件が起こり、彼らは力を合わせて生き延びなければならなくなる。彼らが背負う国の名に共通して刻まれている文字は? UNITE(団結)だ! 本作はともに『ワイルド・スピード』シリーズに出演(共演、ではない)したふたりが組んだ、現代的なスタイリッシュさが足された昔懐かしの凸凹バディ・アクションものであると言える。割れ鍋に綴じ蓋だ。使い方が違う? いや、合っている。

冒頭、ふたりは小競り合いしながらエアフォース・ワン(大統領専用機)でNATO首脳会議に向かっているところをテロリストに待ち伏せされ、機体は撃墜、命からがら脱出してベラルーシに落下する。生き残っていることが敵にバレてしまい、部下もいない中でふたりは互いに背中合わせで戦わなければならなくなる。だいぶ絶望的な状況だが、作品のテイストはこれまた懐かしい、ドンパチの合間に不謹慎ギャグが連発されるタイプのアクション・コメディだ。エアフォース・ワンの機内で、デリンジャー大統領はエドワード・ノートンと共演した経験があると自慢する。そうするとすぐに、ノートンが主演の『ファイト・クラブ』の冒頭で飛行機が大破したのと同じような事態に見舞われるのだ(ちなみに、エアフォース・ワンを攻撃したテロリストのオルガを演じているのはカトリーナ・“ダーデン”という女優である)。

監督は、ケレン味たっぷりのアクションが満載の『ハードコア』や『Mr. ノーバディ』で知られるイリヤ・ナイシュラーなので、今回のアクションも見所がたくさんある。ただし、陸軍の経験があるクラーク首相はともかくデリンジャー大統領は役作りで訓練しただけの人間なので、ジョン・シナのくせに珍しく弱い! その代わり、ファイトシーンが単純でなく小技が効いている。その辺りにある物を使って戦ったために起こる影響も取り入れられた作りで、格闘の展開が流れるように繋がっていく快感があって気持ち良い。流血シーンはあれグロシーンはあまりなく誰でも見やすいが、ここぞという時の一発は痛く、重く感じられるように撮られているのがさらに痛快だ。

ナイシュラー作品では登場人物のキャラクターが漫画のように立っているのが面白く、国のヘッドふたりはもちろん、彼らを手助けするMI6のノエルや愛国者CIAのマーティ、テロリストたちに至るまで皆印象的だ。特にマーティはジャック・クエイド(今年は彼の年だ)が演じており、様々なガジェットを使いながら大人数のテロリストを返り討ちにするシーンは劇中でも特に見応えがある。他にも、編集のテンポで爆笑させられる巧みな必殺ギャグもあり、満足度は高いだろう。設定からしてバカ映画っぽくはあるが、現代において重要なシンプルなメッセージが力強く響いてくる。国名のヘッドについているUNITE、それこそが切り札なのではないか、と。

【ストーリー】
イギリス首相とアメリカ大統領のあからさまなライバル心は、英米の協調関係を危うくしている。しかし凶悪な敵に命を狙われた2人は、国境を越えて必死の逃亡を続ける中で互いに助け合うことを余儀なくされる。 MI6の有能なエージェントであるノエルの協力を得て、2人は世界の脅威となる陰謀を阻止する方法を見いださなくてはならない。

【キャスト】
イドリス・エルバ、ジョン・シナ、プリヤンカー・チョープラー・ジョナス、カーラ・グギーノ、ジャック・クエイド、パディ・コンシダイン、スティーヴン・ルート、サラ・ナイルズ 他

【スタッフ】
監督:イリヤ・ナイシュラー

 

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