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『スランバーランド』かわいいジェイソン・モモアに会いに行こう。夢のようなファンタジーアドベンチャー!

この映画は、つまり―
  • 子どもの自分を呼び覚ます懐かしさ満載の体験
  • かわいい成分だけ抽出したジェイソン・モモア
  • 夢を見る楽しさを思い出させてくれる

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◆配信中の注目作

『スランバーランド』(2022)

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

夢は大抵ストーリーに脈絡がなく、それでも1話完結だ。見たい内容が見れるわけでもない。続きを見たくなる夢があっても、ほとんどの場合は再開されない。筆者も一度だけ夢の中でエミリー・ブラントに会ったことがあり、しかもなぜか日本語で会話できた気がするが、あれから一度も再会できていない。夢と自覚しながら見る明晰夢の状態でない限り夢の中で自分勝手な行動はできないし、自覚できても頭を使いすぎると眠ったままでいられない。「夢を見る」とはよく言ったもので、まさにスクリーンに映るアバンギャルドな映像を見せられているに等しく、“観客”は黙ってそれを受け入れなければならない。何とも夢のない話だ。こんな捻くれた考えを持ってしまったのも、大人になったからなのだろうか。

どうせ映像を見るのなら、夢を扱った映画を見れば良いのではないか。しかも、この『スランバーランド』では絶対にジェイソン・モモアに会える。本作は、灯台の家に住む主人公の少女ニモが母に次いでファンタジー好きな父まで亡くし、会ったこともないおじに引き取られるところから始まる物語だ。ニモは、父が「フリップ」という名のエキセントリックな相棒と冒険を繰り広げた話を聞くのが好きだった。おじとの生活に慣れず、悲しみに暮れたニモは夢を見る。何と夢の世界には本当にあのフリップがおり、荒れ狂う「悪夢の海」には願いを叶える真珠が眠っているという。かくして、宝物を探す大冒険が幕を開ける――。

あらすじから分かるように、非常に明快なファンタジーアドベンチャーだ。基本的にファミリー向けなので、話の展開も複雑に凝っていたりはしない。では子どもしか楽しめないのかと言えば、それは違う。いや、ある意味では合っている。『ピーター・パン』などと同じく、見ている内に大人の自分は眠りに落ちていき、心の中の子どもの自分が目を覚ますのだ。ニモ役のマーロウ・バークリーは幼い頃のシアーシャ・ローナンに似ており、おじ役のクリス・オダウドはスティーブン・スピルバーグに似ている(スピルバーグと違って、おじは夢を見ないという設定なのがニクい)。夢は自分の記憶の再構築であると言うから、知っている顔が別人として出てくる様はまさに夢を見ている感覚に近い。

本作では人々の夢は繋がっており、ドアなどの入り口で行き来できる。『インセプション』にも似ているが、他人の夢の中で死んでしまえば二度と目が覚めない。だが危険を冒すのが冒険なのだ。ニモはトラックで誰もいない街を爆走し、飛行機で雄大な雪山を飛び越し、ボートで暗い悪夢の海に向かう。灯台のように光る真珠を目指して…。子煩悩で知られるモモアは、いつものパワフルな印象を封印し非常に楽しそうにフリップを演じている。彼にとって、本作は父が息子/娘に読み聞かせるような物語なのだろう。「スランバーランド(まどろみの国)」の名の通り、見ていて眠くなったとしても、そこでモモアに会えるかもしれない。どちらが夢で現実か。自分は蝶か人間か。もはやどちらでも良い。どちらにしたって夢がある。

【ストーリー】
最愛の父を亡くした11歳の少女の夢の中、スランバーランドで繰り広げられる、壮大な宝探しの冒険を描くファンタジーアドベンチャー。

【キャスト】
ジェイソン・モモア、マーロウ・バークリー、クリス・オダウド、カイル・チャンドラー、ウェルチェ・オピア、インディア・ド・ボーフォート 他

【スタッフ】
監督:フランシス・ローレンス

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