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【配信エンタ】『オーバー・ユア・デッド・ボディ』言われなくても、おまえ/あなたの屍は越えてくよ!

この映画は、つまり―
  • 夫婦は一番近い“他人”
  • アクション重視の87ノース・プロダクションズ制作……なのに!?
  • 姓/生を共にしたふたりに死角はない

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◆配信中の注目作

『オーバー・ユア・デッド・ボディ』
配信先:プライムビデオ

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

人はよく「家族」と「他人」を区別する。日常会話で「他人」と言うと、実際には「身内以外の者」というニュアンスが込められる場合が多いが、読んで字のごとく自分以外の人は間違いなく“他人”だ。『家族になろうよ』なんて歌もあったが、たとえ夫婦になったとしても相手は自分と同じにはならない。そういう意味では、夫婦はこの世で最も距離の近い他人である。「遠くの親類より近くの他人」とはよく言ったものだ。もちろんこれがただの言葉遊びであることは承知しているが、血の繋がった他人である家族と違い、血の繋がりのない正真正銘の他人である配偶者は、悲しいかな離れる時は一瞬だ。向かい合っていたふたりは、はじめは歩み寄って互いを抱き留めた。しかし一度すれ違えば、互いは正反対の方向に歩み去っていく。ふたりが噛み合わなくなれば、音楽性の違いで解散だ。

本作『オーバー・ユア・デッド・ボディ』においても、年の差夫婦である映画監督のダンと舞台女優のリサの愛は冷えきっている。せっかくホラー界の女王サマラ・ウィーヴィング(演じるリサ)が妻だというのに、サマラのイニシャルと同じそのドSっぷりに弱気なダンは嫌気が差してしまったのだ。さらにそこに魔が差して、離婚ではなくリサの殺害を決意する。ダンはリサに気付かれないように、誰にも犯行を見られないように、しかし知人にはラブラブアピールを忘れずに、森の奥の別荘へ連れ出す。……ところが。

よく、元々他人として出逢う夫婦がだんだん似てくると言われるのも不思議な話だ。本作もまさにそうで、実は相手を殺そうとしているのはダンだけではなかった! 相思相殺。似た者同士仲良くやれれば良かったのだが、S極とN極だったのが両方S極になってしまったものだから反発し合うのは必至。凸と凹が両方凹になってしまえばもう相手をボコボコにするしかない。ふたりの倫理観がブッ飛んでいるのではない。ふたりは誓いを果たそうとしているだけに過ぎない。結婚とは、“死がふたりを分かつまで”。そういうことなのだ。……ところが。実は、この別荘にはすでにふたりの計画に水を差す先客がいた。世間を賑わせている脱獄犯2名とイカれた看守1名が潜伏していたのだ!

こんな具合に、本作は先の読めないどんでん返しの連続で、最後まで飽きることなく楽しませてくれる。痛快なブラックコメディだ! ……いや、嘘をついた。本作は『ブレット・トレイン』などで知られるデヴィッド・リーチ監督が立ち上げた、アクション重視の87ノース・プロダクションズ制作ながら、そのアクションはスタイリッシュではない。何せ、登場人物は(極悪人も含むが)普通の人間なのだ。必然、もっさりとした格闘シーンになる。結果、本作は非常に“痛”なブラックコメディになってしまった! 軽快な連撃の代わりに鈍重な一撃が印象的で、何度も顔をしかめながら爆笑してしまう。残酷描写も過激にエスカレートしていくので、一般人はお断り。サマラファンなら大好物だろう。

……ところが、だ。本作の最も素晴らしい点は予測不能なストーリーでも、笑えないほど痛そうなアクションでもない。本作の核にあるのは、壊れそうになっても夫婦はどうあるべきかという夫婦論なのだ! おそらく世界中のどこにもあるような配偶者への不満が罵詈雑言となって飛び交い、しかし配偶者からの銃弾よりも痛い真っ当な反論が胸をグサリと突き刺す。そして本当の他人が現れた時、夫婦は他人とは思えないほどのチームワークを見せつける。ダンの絶妙なヘタレさを体現するジェイソン・シーゲルと、キツい性格と思わせて時折繊細さを見せるサマラのふたりの名演によって、驚くべきことに本作は確かにラブストーリーになっているのだ! 死がふたりを分かつまで? そうはさせないさ、オーバー・マイ・デッド・ボディ(おれの目の黒いうちは)!

 

【ストーリー】
主人公である不仲の夫婦、ダンとリサは互いに相手を殺すという目的を秘めて人里離れた山荘を訪れる。ところが、その山荘に脱獄犯2人と職務放棄の看守が逃げ込んでいたことによって、それぞれの綿密に練られた殺害計画が狂っていく。

【キャスト】
ジェイソン・シーゲル、サマラ・ウィーヴィング、ティモシー・オリファント、ジュリエット・ルイス 他

【スタッフ】
監督:ヨーマ・タコンヌ

 

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