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『ちひろさん』ちひろさんが、少し楽に生きられるヒントをくれる。

この映画は、つまり―
  • 『愛がなんだ』今泉力哉監督の最新作!
  • 元風俗嬢のちひろさんを有村架純が熱演!
  • ちひろさんの言葉に心がふっと軽くなる。

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◆配信中の注目作

『ちひろさん』(2023)

Netflixで視聴するこちら

文:カカオ豆

出会ったばかりで、まだ2回くらいしか話したことないのに、親友にも言ってない秘密をつい打ち明けてしまいたくなる人が稀にいる。本作の主人公である”ちひろさん”は、正にそんな人だ。海辺の町の小さな弁当屋で働くちひろさんは、ホームレスのおじさんにも、子どもにも、動物にも、虫にも平等に接する。彼女の元には自然と人が集まり、話すとみんな笑顔になる。そう聞くと、ちひろさんって優しさの塊みたいな人なんだろうなーと思うかもしれない。確かに、優しい。だけど、ただただ優しいというわけではない。だって、ただただ優しい人って、なんだかちょっと胡散臭くないだろうか?(と筆者は思ってしまうのだが…)だから、ちひろさんに何でも話したくなるのは、優しいからだけではなく、いつだって正直だからだと思う。

ちひろさんは、元風俗嬢であることを一切隠すこともないし、時にはものすごい毒だって吐くし、近所のいたずら小僧が悪いことをすれば、ちゃんと叱りもする。そうやって嘘がないから、一緒にいると、自分も心の奥に隠している本当の思いを打ち明けたくなるのだろう。
それ故に、ちひろさんの元には心の奥に孤独を抱えた人たちが集まってくる。ちひろさんは、彼らに対してただ慰めるわけでも、上辺だけの思いやりの言葉をかけるわけでもない。その代わり、いつもちょっぴり素っ気なく思えるぐらいの言葉をかけてくれる。でも、多分それがちょうどいい。そうやって、人の心にさりげなく小さな光を灯すことができるのは、自らも孤独や寂しさを抱えているから…。だからこそ、ちひろさんは人の心の奥の奥の方にあるものを敏感に察してしまう。でも、それを無理やり引き出そうとせずに、いつだって適度な距離感で寄り添ってくれる。
ちひろさんに会いたくならないだろうかー。そうなのだ、本作を観ると、自分の目の前にもふらっとちひろさんが現れないだろうかと強く願いたくなるのだ。

本作は、ちひろさんと彼女の元に集う人々の何気ない日常を通して、人の心の暗い部分と明るい部分が、ありのままに繊細に描かれている。それらを否定もせず、肯定もしないところが、なんだか自分の生き方の全てもふわっと包み込んでくれるような気がして、ほっとした気持ちにさせてくれる。そして、ちひろさんがくれる言葉たちが、じんわりと心の中に広がっていき、明日からは少し肩の荷を下ろして生きられるような、そんな気持ちになれる作品だ。

 

 

【ストーリー】
きっと彼女に、会いたくなるー。
ちひろは、海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働く元・風俗嬢。
ちょっと口が悪くて、マイペース。そして自由。そんな彼女は街では浮いている。へんな”おとな”だ。
でもなんでだろう、彼女に会いたい。
ひとり母の帰りを待つ小学生、本音が言えない女子高生、そして無口なホームレスのおじさん・・・・ちひろの優しくない言葉と素っ気ない態度が、さびしくて不思議とあったかい。
この不思議を体験しに、さあ、ちひろさんに会いに行こう。

【キャスト】
有村架純、豊嶋花、嶋田鉄太、van、若葉竜也、佐久間由衣、長澤樹、市川実和子、鈴木慶一、根岸季衣、平田満、リリー・フランキー、風吹ジュン

【スタッフ】
原作:安田弘之『ちひろさん』(秋田書店「秋田レディース・コミックス・デラックス」刊)
監督:今泉力哉 脚本:澤井香織 今泉力哉 音楽:岸田繁
主題歌:くるり「愛の太陽」(VICTOR ENTERTAINMENT / SPEEDSTAR RECORDS)
製作:Netflix、アスミック・エース 制作プロダクション:アスミック・エース、デジタル・フロンティア 配給:アスミック・エース

公式サイト:https://chihiro-san.asmik-ace.co.jp/  PG-12

©2023 Asmik Ace, Inc. ©安田弘之(秋田書店)2014

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