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『ズーム/見えない参加者』/幽霊はいつも人間のすぐ側にいる。日常を侵食する最新系ホラー。

この映画は、つまり―
  • 大手映画批評サイト「ロッテン・トマト」にて、現在も脅威の満足度100%を維持!
  • コロナ禍だからこそ、まさに最も「今、配信で」観るべきホラー
  • 幽霊はいようがいまいが、“視える”

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◆配信中の注目作 
『ズーム/見えない参加者』(2020)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

あなたは幽霊の存在を信じるだろうか。答えはどちらでもかまわない。ホラー好きを自称する筆者も、積極的に信じているわけではない(「幽霊はいない」と確信してもいないが)。しかし、幽霊が実在するどうかはこちらの都合とは全く関係がない。…ある意味では、幽霊は常に、人間の進化し続ける技術…特にカメラとともに存在してきたと言える。古くより絵に描かれ、江戸時代末期に輸入された写真機によって「魂が抜かれる」と恐れられ、心霊写真が現れるようになり、今では多くの映像にも映っている。…もちろん映画も例外ではない。

本作は、最も現代的な幽霊映画である。全編(エンドクレジットまでも)が、コロナ禍のために普及したリモートでのミーティングを可能にするサービス、Zoomの画面で描かれた珍しいホラーだ。とは言え、このようにPC画面上で進行するタイプの映画はこれが初めてではなく、例えば2015年にはSkypeを用いたホラー『アンフレンデッド』が公開されている。やはり、霊媒師(ミディアム)いるところに幽霊あり、新たな媒体(メディア、ちなみにミディアムの複数形だ)あるところに幽霊あり、なのだ。

本作はロックダウン中のイギリスで撮影された。映画自体は、主人公ヘイリーが友人5人と霊媒師1人を集めて行うZoom上での交霊会のみを描いたシンプルなものだが、異常な生々しさに満ちている。顔を加工できるフィルター機能や、電波が悪く画面が止まるなどの「あるある」な何気ない瞬間の連続で、交霊会という非日常と日常の境を曖昧にする。一度不気味さを感じてしまえば、全てが恐怖の対象となるだろう。もちろん、自身らの名と同じ役名で互いを呼び合う無名の役者たちの迫真の演技も素晴らしい。

幽霊とは関係ないところでも、観客は常時不安定な気持ちにされる。交霊会自体に懐疑的な観客でも、健気に会を進行させようとする真面目なヘイリーに感情移入し、ふざけて妨害してくるジェマに対してだんだん苛立ちを募らせる。かと思えば、恐怖の後、変なタイミングでくしゃみをするヘイリーに対し、今まで泣いていたジェマたちと一緒に思わず笑ってしまう。緊張と緩和の繰り返しで、観客は映画のテンポにまんまと乗せられる(余談だが、くしゃみをすると魂が抜けるという古い言い伝えがある…)。

低予算だけにチープな映像に見えるかもしれないが、それはつまり我々がいつも見ている光景とほぼ同じということだ。上映時間は1時間弱というかなり短い時間にもかかわらず、「早く終わってくれ」と願うほど濃密な体験となるだろう。可能なら映画は劇場で観るに越したことはないと思うが、これほどPCで観るのがふさわしい作品も他にない。タイムリーでバラエティに富んだアイディアが詰まった本作は、アメリカのホラー作品配信サイト「Shudder(シャダ―)」で配信されてから約2年が経った今でも、大手映画批評サイト「ロッテン・トマト」で満足度100%という境地の数値を維持し続けている。

さて、もう一度問おう。あなたは幽霊の存在を信じるだろうか。恐怖に負けず、画質の悪いスクリーン(PC画面)の奥に、目を凝らしてほしい。幽霊は、ファインダー(発見者)の存在で形を得るのだ。…最後に、まさにこの記事の執筆中に筆者が体験しゾッとした怪現象を紹介しよう。英語のサイトで本作の情報を調べる中で、『アンフレンデッド』との類似点について書かれた箇所を翻訳にかけたのだが、「この映画では、『崖の上のポニョ』、『崖の上のポニョ』…(残り10回繰り返し)、『崖の上のポニョ』が出てきますが、『崖の上のポニョ』が出てこないのは『崖の上のポニョ』が出てこないのと同じです」と訳された。これは一体…。

【ストーリー】
新型コロナウイルスでロックダウン中のイギリス。6人の友人グループはロックダウン中も週に1度はZoomを介して定期的に集まろうと約束を交わす。ある時、グループの1人、ヘイリーが霊媒師をゲストに招き、みんなで「Zoom交霊会」をしようと提案する。メンバーはヘイリーの新しい提案にのり、いつもの飲み会のノリで和気あいあいと交霊の儀式を始める。部屋の照明を落とし、ろうそくを用意して、霊媒師の先導で進行していたが、そのうちそれぞれの部屋で異変が起こり出す。霊媒師は除霊を試みたが効果はなく、不気味な現象は次第にエスカレートしていく。彼らは暗闇に潜む何かから逃れることができるのか?!

【キャスト】
ヘイリー・ビショップ、ジェマ・ムーア、エマ・ルイーズ・ウェッブ

【スタッフ】
監督:ロブ・サベッジ

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