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【配信エンタ】『デッドマンズ・ワイヤー』死なば諸共。細く冷たい命綱も、今だけは親友との絆。

この映画は、つまり―
  • それは一世一代の綱渡り。半世紀前の“激情”型犯罪
  • ビジネスVS被害者ビジネス
  • 結局どちらが正しいの?

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◆配信中の注目作

『デッドマンズ・ワイヤー』
配信先:U-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「死者(デッド)の口が開いた!」……これは、観た者に実に様々な感情を抱かせた、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のオープニングクロール最初の一文だが、失礼ながら本作『デッドマンズ・ワイヤー』に対しても同じように思った。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』等の名作で知られる巨匠ガス・ヴァン・サントの8年ぶりの新作だからだ(実際にはその間、ドラマのエピソード監督をしていたようだ)。そして、1997年の『グッド・ウィル・ハンティング』で起用した、ステラン・スカルスガルドの息子であるビルが主演ということで、約30年にわたる長年の縁も感じさせる。1977年、アメリカの都市インディアナポリスで起きた不思議な実話を、やはり不思議なテイストで映画化したのが本作だ。

現実には「デッドマンズ・ライン」と呼ばれたそれは、事件を引き起こした男トニー・キリシスが考案した改造ショットガンだ。銃の引き金にワイヤーを引っ掛けながら、ワイヤーの両端を輪っかにして自分と人質の首に巻く。彼らの身体が離れれば人質の頭が吹っ飛び、同時にトニーは警察に頭を撃ち抜かれる。逆の順番でも結果は同じ。運命共同体というわけだ。ここまでしてトニーは何を成し遂げたかったのか。彼はショッピングセンターを建てようとしていたが、テナントが集まらない原因をローン会社の企てだと“感じ”(ここが重要だ)、社長のM・L……は休暇でいなかったので、代わりにその息子のディックを人質にして償いをするよう求めたのだ。

アル・パチーノ演じるM・Lが、自分の代理で息子を殺されかけている父親にしてはあまりにふてぶてしく、または堂々としているため支配者側の巨悪に見えるが、トニーはトニーで信頼しづらい主人公である。先ほど、彼がビジネスの失敗がローン会社の拝金主義のせいだと“感じ”ていると書いたが、本当のところがどうなのかは明かされない。もしかしたら、単純にトニー自身が失敗しただけで、昨今SNSで毎日のように見かける、自分が不快な思いをしたという“お気持ち”を声高に表明しただけだったのかもしれない。彼自身にその自覚はなかっただろうが、その迸る怒りは皮肉にもテレビやラジオまで巻き込んでいき、一躍時の人となっていく。常に頭を狙われているディックが死人のような表情をしている横で、トニーは事件のおかげで憧れのラジオパーソナリティにも出会え、楽しんでいる様子すら見せる。スリラーというより、もはやオフビートコメディだ。トニーが真に被害者なのかは置いておいて、少なくとも“被害者ビジネス”では成功できたらしい。

はじめは主人公のトニーに何となく感情移入していた我々も、次第にディックの方に気持ちが移っていく。“悪”のローン会社側とは言え、劇中で最も誠実な彼こそ確実に最も可哀想な人物だ。現実のディックは後年、事件に関するインタビューで、ビル・スカルスガルドの出身地と同じストックホルム症候群によるものか、人質となった数日間でトニーを親友のように思った瞬間もあったと話している。死のワイヤーで繋がって初めて、富める者と貧しき者が仮初めにも理解し合えるのか。命懸け、“謝ったら負け”の勝負の行方は? 「結局なんだったんだ」と困惑すること請け合いのトニー・キリシス事件、感想はきっと二分されるだろう。現実では、すでにトニーはデッドマンとなってしまった。果たして、彼は妄想に取り憑かれた犯罪者だったのか。社会的強者に立ち向かった民衆の英雄だったのか。事件の3年前に達成された、大道芸人フィリップ・プティによるワールド・トレード・センターのタワー間の綱渡り。現代ならば、どちらのマン・オン・ワイヤーがよりバズるのだろうか……。

【ストーリー】
不動産ローン会社に財産を騙し取られたとして、同社に押し入り役員を人質にとった男は、自分の首と人質の首をショットガンとワイヤーで固定、ヘタに動けば自動発砲される“デッドマンズ・ワイヤー”という装置を使って警察すら近づけない状況で籠城する。謝罪や補償を訴える男が現場からのメディア出演など異常な行動に出始めると、世間は事件を真っ向から非難する者と犯人に同情を抱く者で二分されていく。膠着状態を打開しようと警察が突入に備える中、ついに犯人と社長が電話で話すことになるのだが―。

【キャスト】
ビル・スカルスガルド、デイカー・モンゴメリー、ケイリー・エルウィス、マイハラ、コールマン・ドミンゴ、アル・パチーノ 他

【スタッフ】
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本:オースティン・コロドニー
音楽:ダニー・エルフマン
2026年/アメリカ/105分/カラー/ビスタ
配給:KADOKAWA
© 2025 Starlight Digital Ventures, LLC. All Rights Reserved.

公式サイト:https://kadokawa.co.jp/deadmanswire
公式X:@KADOKAWA_pic

 

★配信エンタの過去記事はこちら

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『コンパニオン』運命を、“愛”を超えろ。真の“わたし(I)”になるために。

『室町無頼』これは時代劇の皮をかぶったアウトローたちの生存劇だ!

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