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『オーダー』法とぶつかり合うは、新たな世界の“秩序”……?

この映画は、つまり―
  • 実話ベースの配信作品だからこそ、より多くの方に
  • ナチスは今も生きている……
  • 劇中の“ある書籍”は予言書となってしまうのか

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◆配信中の注目作

『オーダー』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

キャストや監督を考えれば、本作が日本では劇場公開されずAmazon Prime Video限定での配信となったのは残念だ。しかし、普段劇場まで中々足を運ばない方にも届く可能性があるとすれば、そう悪くはないかもしれない。この『オーダー』は、実録犯罪ものを得意とするジャスティン・カーゼル監督による、1980年代前半にアメリカで実際に起こった事件を基にしたシリアスなクライムスリラーでありながら、現在の世界と無関係とはとても思えない問題を描いているからだ。

主演のジュード・ロウが演じているのは、FBI捜査官のテリー・ハスク。ニューヨークからアイダホの田舎町に移って平穏に過ごそうとしていたが、そこで凶悪な思想を持つ団体が暗躍していることを知る。詳しい過去が明かされず、どこか人として壊れてしまっているかのような危うさを持つこのベテラン捜査官は、実在の人物ではない。テリーが追う人物こそが実際に歴史に残っている方だ。もちろん、悪い意味で。

本作の最大の悪役は、ニコラス・ホルト演じるロバート・ジェイ・マシューズ(ボブ・マシューズ)。ボブはネオナチ思想を掲げる白人の若者であり、白人至上主義国家の樹立を夢見ていた。タイトルにある「オーダー」とは、ある書籍に登場する架空の白人至上主義組織の名だが、ボブの手によってそれは現実のテロリストグループとなった。(彼らの論理では)有色人種が白人の権利を侵害している現状を打破するため戦う救世主であり、“悪”の政府を打ち倒さんとする軍だ。文字通り“軍資金”目的で強盗を繰り返し、爆弾テロも行った。本作ではボブのプライベートな良き(?)父親としての一面も描かれるが、周りの仲間すら困惑させるほどの彼の秘密も徐々に明かされていく。

ホルトは、去年末に配信が始まった『陪審員2番』では善人演技が光っていたし、外見が非常に白人至上主義者らしかった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でも「根は良いヤツ」だったが、本作では紛うことなきヴィランを演じており、彼の演技の幅には改めて驚かされる。劇中できちんと「良い人」の役を務めている『レディ・プレイヤー1』のタイ・シェリダンは本作唯一の良心だ。が、やはり一番の見所はジュード・ロウだろう。謎が多く、ある種ボブの鏡でもある架空のキャラクター・ハスクを、鬼気迫る演技でそこに確かに“実在させ”ている。彼の名がロウ(law)であるのも偶然ながら面白い。法定ドラマ『LAW & ORDER』ならぬ、「ロウ(law、法) VS オーダー(order、秩序)」という、(あくまで当人たちにとっての)正義同士の対決のように見えてくるからだ。

ボブが大きく影響を受けたある書籍は、他にも多くの人間に悪影響を与えている。この書籍自体はフィクションだが、テロを起こす際の手順などが書かれており、実際にそれを実行してしまった例もある。しかも、その内のひとつはかなり記憶に新しい。恐ろしいのは、それがまさに現実の法となり秩序となっていく未来が予想できることだ。ディストピア時代は本当に到来しているのかもしれない……。

【ストーリー】
衝撃的な実話に基づいて製作された『オーダー」は、見る者を引き込むスリラーだ。主演はジュード・ロウ。ベテランのFBI捜査官、テリー・ハスクを演じている。ハスクは、テロリストがアメリカ連邦政府の転覆を企てているのを突き止める。

【キャスト】
ジュード・ロウ、ニコラス・ホルト、タイ・シェリダン、ジャーニー・スモレット 他

【スタッフ】
監督:ジャスティン・カーゼル

 

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