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『ボストン・キラー:消えた絞殺魔』終わり良ければ全て良し…なのか?実際の連続殺人事件を追った女性記者の実話。

この映画は、つまり―
  • 1960年代にアメリカの女性たちを恐怖に陥れた連続殺人事件
  • 女性視点から女性殺人事件を見る
  • さらに現在の“未解決事件”へと繋がっていく

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◆配信中の注目作

『ボストン・キラー:消えた絞殺魔』(2023)

ディズニープラスで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

世界には多くの未解決事件がある。19世紀末のロンドンで起こった切り裂きジャックによる娼婦連続殺人事件。1960年代~1970年代にかけてアメリカで起こったゾディアック事件。そして、一応は解決したことになっているがその全容はまだ明らかになっていない事件もある。それが本作で扱われている、1960年代前半にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで起こった連続事件、ボストン絞殺魔事件だ。邦題には「ボストン・キラー」とあるが、正しくは犯人は「ボストン・ストラングラー(ボストン絞殺魔)と呼ばれていた。

犠牲者は13人で、全員女性。ただし年齢は上が85歳、下が19歳とバラバラで、性的に暴行された後に女性自身のストッキングなどで首を絞められていたのは共通していたものの、暴行の仕方にも、また直接の死因にも一貫性がなかった(首を絞められながらも刺殺された者がいる)。そのため当時の警察は最初、犯人も、またどの殺人がボストン・ストラングラーによるものかも分かっていなかった。絞殺事件が途絶えてしばらくすると、殺人ではなく被害者が約300人とも言われるほどの連続婦女暴行事件が起こる。犯人が緑の服装をしていたという証言からグリーン・マン事件と呼ばれていたが、この件で逮捕された容疑者が絞殺事件についても自白したのだ。警察は結局物的証拠を掴めないまま、犯人しか知り得ない情報が含まれたこの自白だけを根拠にして事件は幕を閉じた。

本作の主人公は警察ではなく、絞殺魔を追っていた実在の女性記者ロレッタ・マクラフリンとジーン・コールだ。彼女らは誰も注目していなかったそれぞれの絞殺事件が連続殺人事件であるといち早く気づき、犯人に「ボストン・ストラングラー」という名を与えた。ところがやはりこの時代に女性が仕事で活躍するのは難しく、様々な制約がロレッタたちを縛り付ける。しかし、より女性記者のほうが注目を引けるからと、紙面にはロレッタたちの写真が載せられたりする(犯人に狙われるかもしれないのに!)。気味の悪いちぐはぐさだ。

また、ロレッタは事件にのめり込むあまり幼い息子たちとの関わりも減り、当時にしてはかなり理解がある方だったであろうロレッタの夫とも関係が悪化していく。ゾディアック事件を扱ったデヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』では、事件に魅せられた実在の作家が真実を追求するために深入りした結果、犯人に何かされたわけでもないのに人生が狂っていく。殺人事件は被害者家族や加害者家族、間接的に関わっただけの調査者などの人生も壊していくのだ。

常に暗く、重厚な雰囲気の中で捜査は進んでいくが、ボストンなのにロンドンの霧に迷い込むかのようで全ての答えにはたどり着かない。ボストン絞殺魔事件は未解決なのだ。正確に言えば、犯人はあくまでボストン・ストラングラーではなくグリーン・マンとして裁かれており、犯人の死後、2013年のDNA検査でようやく絞殺事件の最後の犠牲者に関してのみ犯行が証明された。この事件は多くの謎を残したまま、犯人はグリーン・マンだとして終結し、歴史の闇に葬られようとしている。そして現代社会でも、男が女を“殺す”ことに関して解決しきれたとは言い切れない。快刀乱麻を断つような結末になりようがない本作において、相棒となったロレッタとジーンの絆も断たれないのは唯一の救いと言えるだろう。

【ストーリー】
悪名高いボストン絞殺魔事件をいち早く報じた事件記者たち――レコード・アメリカン社のロレッタ・マクラフリンと、その同僚であり信頼できる友でもあるジーン・コール――二人の先駆的な記者たちの姿を実話を基に描いた犯罪スリラー。殺人犯の犠牲者がさらに増えるなか、二人は真実を明らかにするために自らの命を危険にさらしながらも、勇敢に調査を進めるのだった。

【キャスト】
キーラ・ナイトレイ、キャリー・クーン、アレッサンドロ・ニヴォラ、デヴィッド・ダストマルチャン、ビル・キャンプ、モーガン・スペクター 他

【スタッフ】
監督・脚本:マット・ラスキン

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