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『ナニー』水が呼んでいる。アメリカへの移民が体験する恐怖を新たな語り口で描くブラムハウス製作ホラー!

この映画は、つまり―
  • セネガル出身のアメリカ移民が遭遇する恐怖を描いた、ブラムハウス製作の珍しいホラー
  • サンダンス映画祭のグランプリ受賞作
  • 不思議なストーリーテリングで、もう一度見たくなる

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◆配信中の注目作

『ナニー』(2022)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

現在、劇場では「水」を大きくフィーチャーした『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開されている。超・超大作でストーリーもシンプル。対して本作『ナニー』はきっとかなり低予算だろうし、非常に不思議な筋運びの作品だ。『アバター』は水を明るく美しく描いていたが、本作では暗く不気味に見えるように用いている。

本作は、主にホラー映画を扱うブラムハウス・プロダクションズ製作の映画だ。N・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』や、エリザベス・モス主演の『透明人間』などもブラムハウス製ホラーだった。基本的には話の筋が分かりやすく、楽しみやすい作品が多い。例えば、『パージ』は年に一度だけ全ての犯罪が許されることになったアメリカである家族が恐ろしい事態に見舞われるという話だし、来年日本公開予定の『M3GAN/ミーガン』は両親を亡くした子どもの友だちになるようにと渡したAI人形が暴走する話。『ナニー』もあらすじ自体は、セネガル人でシングルマザーのアイシャが、アメリカで不法にナニー(長期的に子どもを親代わりに保育するプロ)として働きながら、母国に残した息子を渡米させるためのお金を貯めようとする、というものだ。

ホラーのはずなのだが、見始めても中々恐ろしいことが起こらない。ホラーでは普通、幽霊だったり殺人鬼だったり、観客が何を怖がるべきかが明白だ。もしくは、具体的な恐怖の対象が分からなくても、不穏な空気に満ちている。最初アイシャは、表面上は雇い主の夫婦と良い関係を保てているが、仕事以外の時間も拘束してくるし、支払い額が不足していてもごまかされ続ける。そういった、どこか軽視されているような嫌な感じは視聴者も一緒に味わいつつも、分かりやすい恐怖描写はほとんどないのだ。その代わり、夫婦の家に飾られているアフリカ人の写真や、アフリカで信仰されている富と多産の象徴で人魚の姿をした水神マミワタの絵など、意味深なシーンが散りばめられている。

映画前半の時点では多くの方が「これはホラーなのか?」と思うだろうが、後半になると本格的にホラーの様相を呈してくる。全ては水面下で起きていたのだ。リアルの我々の人生について考えてみてほしい。予知能力でもない限り、何か決定的に恐ろしい事態が起こるまで、それを予感することは不可能ではないだろうか? 点と点を繋いではじめて線になるように、何かが起こった時にはすでに手遅れであり、後から考えてようやく「あれは予兆だったのでは」と気づくのだ。アイシャが見る悪夢のシーンにはいつも水が映っている。アイシャが息子を呼ぼうとしている横で、あの水はアイシャを呼んでいたのだ!

本作を監督したのはシエラレオネ系アメリカ人のニキヤトゥ・ジュース。自身が移民の子であり、移民が感じる恐怖を映像化した本作は、インディペンデント映画の祭典であるサンダンス映画祭でグランプリ(審査員大賞・ドラマ部門)を受賞した。ホラーを見慣れている方でも、本作のストーリーテリングには新鮮さを感じられるのではないだろうか。クリストファー・ノーラン監督作品などはよく「二度見たい映画」と言われるが、本作もオチを知った状態で見返すことで腑に落ちる作品になっている。アメリカンドリームなど、ハッと目を覚ませば消えてしまう儚い夢なのかもしれない。

【ストーリー】
アイシャはニューヨークで特権階級の夫婦に雇われた不法就労のナニー。西アフリカに置いてきた息子をニューヨークに迎え入れるべく準備をしていると、恐ろしい何かの存在が彼女の現実の世界に侵入。苦労をしながら実現させようとしてきたアメリカンドリームが音を立てて崩れ始める。

【キャスト】
アナ・ディオプ、ミシェル・モナハン、シンカ・ウォールズ 他

【スタッフ】
監督・脚本:ニキヤトゥ・ジュース

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