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『深い谷の間に』人生山あれば、ともに登ろう。人生谷あれば、ともに下ろう。

この映画は、つまり―
  • SFスリラー・ロマンス・アクション?
  • いつもより“ゴージャス”なマイルズ・テラーとアニャ・テイラー=ジョイ
  • 真実は峡谷にかかる深い霧の奥に

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◆配信中の注目作

『深い谷の間に』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

本作『深い谷の間に』は、一言では言い表せない映画である。なぜなら、上映時間のちょうど半分でパカッと割ると、前半と後半で全く違う色をしているからだ。見終わってみれば「SFスリラー」とジャンル分けした方が一番すっきりするかと思うが、始まりはそれとは似ても似つかない。順を追って説明していこう。

本作の原題は『The Gorge(ザ・ゴージ)』。「峡谷」の意味だ。物語の舞台はまさに、世界のどこかの森の奥深くにある大峡谷。東西それぞれの断崖には、異なる国が所有する監視塔や機関銃といった物騒な設備がある。敵国の人間が峡谷を越えてこないか見張るためか? 違う。監視対象は、峡谷の底に横たわる深い霧のその向こうにあったのだ……。西側に配置された身寄りのないアメリカ人スナイパー、リーヴァイを演じるのは『セッション』のマイルズ・テラーで、東側に配置された死期が迫る父親を持つリトアニア人スナイパー、ドラサは『クイーンズ・ギャンビット』のアニャ・テイラー=ジョイが演じている。

世界の果てで1年間、ともにひとりぼっち。敵に見つからないほど遠くから頭を撃ち抜くスナイパーは常に孤独だ。しかし、双眼鏡で逆側を覗いているうちに、彼らは“ふたりぼっち”であることに気づく。筆談でのコミュニケーションを始めてからは、物理的な距離は1ミリも縮まらないままに、心の距離だけが近づいていく。本作の前半は、ミリタリーな雰囲気をほったらかしにしたキュートなロマンスになっている。極秘エリアのため互いにスマホを取り上げられているので、古風な伝達方法に頼らざるを得ないのだ。一説によれば、ゴージ(gorge)はゴージャス(gorgeous)と語源で繋がっているらしい。本作のアニャ・テイラー=ジョイは華美な装いをせずとも、これまで以上に最もゴージャスかもしれない。マイルズ・テラーも、年を重ねた影響なのか以前よりも色気をたたえた俳優になったように思う。

もしも、リーヴァイとドラサが互いに敵対心を持っている状態でストーリーが始まっていれば、12月時点で、第一次世界大戦中の史実にならったクリスマス休戦を経て敵兵同士が互いに愛し合うようになるというエモい展開が作れたのではと妄想してしまうが、その代わりにかなり微笑ましいテイストになっているので、これはこれで良しとしよう。さて、では後半の展開だが……ここでその深い霧は晴らさないでおくとしよう。一応改めて言っておくと、“霧”だ。映画好きのあなたになら何となく伝わるのではないだろうか。少なくとも、監督は『ブラック・フォン』などいくつものホラーを手掛けてきたスコット・デリクソンなのだから、その要素が入るのは疑いようもない。食事中に鑑賞すると料理がまずくなるのは確実だが、後味までは悪くしないのも保証しておこう。

【ストーリー】
高度な訓練を受けた2人の工作員は、極秘の大峡谷の両側を警備することになり、距離を縮めていく。谷の底から邪悪なものが出現し、2人は協力して生き残らなければならなくなる。

【キャスト】
マイルズ・テラー、アニャ・テイラー=ジョイ、シガニー・ウィーバー 他

【スタッフ】
監督:スコット・デリクソン

 

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