『ナックルガール』拳(けん)VS剣(けん)！その拳で敵を砕き、妹との未来を掴み、そして天高く掲げよ！

2023.11.06

この映画は、つまり―

韓国Webコミック原作、日韓共同製作、オール日本人キャスト！
ひと度見れば青い稲妻走る、三吉彩花のボクサー姿！
韓国映画よりもライトに、日本映画よりもヘビーに！

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『ナックルガール』(2023)　

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文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

かつて、日本のコミックを原作にして、韓国人スタッフ・キャストで映画化された作品があった。原作・土屋ガロン(狩撫麻礼)、作画・嶺岸信明の『ルーズ戦記オールド・ボーイ』をパク・チャヌク監督が映画化した『オールド・ボーイ』である。映画での日本・韓国コラボは、最近だと國村隼が重要キャラクターを演じた韓国ホラー『哭声/コクソン』や、キャストは日本人ながらオール韓国ロケで撮影された『聖地X』などがある。そして本作『ナックルガール』は、韓国の同名Webコミックを日韓共同製作・オール日本人キャストで映画化したアクション作品になっている。

主人公の若きボクサー・橘蘭（たちばならん）は将来を嘱望されているが、妹の柚希（ゆずき）とともに生い立ちは貧しく悲惨だった。虐待する父親の元を離れて伯父叔母の夫婦に育てられるが、伯父もまたアルコールの問題を抱えており、蘭との関係は険悪。早く最強のボクサーとなって柚希とふたり暮らしができるようトレーニングに励む蘭だったが、ある日起こった車の爆発事件で、車中から柚希と思われる女子高生の焼死体が発見される。警察から自殺と聞かされても納得のいかない蘭は、柚希が持っていたカードキーの出所を調べるうち、闇の組織が運営する格闘場に辿り着くが…。

蘭が見つけたのは現代のコロッセオ、アンダーグラウンドなリアルファイト・クラブ。負ければ死が待っており、勝てば殺しが待っている。しかし、ここで勝たなければ妹を見つけ出すことは叶わない。原作が漫画だけに、非常に漫画的で分かりやすい設定である。主演の三吉彩花のビジュアルがバチバチにキマっており、佇まいが実にクールだ。半年間ハードなトレーニングを積んだという話は伊達ではなく、説得力のある動きを見せてくれる。

しかし蘭の前に立ちはだかる大男・鬼頭もまたホンモノ。なぜなら、演じているのが本物のプロレスラーである納谷幸男だから！　我々観客はともかく、いくら三吉彩花がカッコ良いとは言えそれだけでKOを取れる相手ではない。そこで火を吹くのがナックルダスター（メリケンサック）だ。

拳（ナックル）の打撃力を格段に高め、刺客を次々に迎え撃つ。ただし、相手は元々ルール無用の奴ら。こちらが女だろうが、拳闘で挑もうが、情け容赦なく大勢で武器を持って襲い来る（まあ、日本のアウトローなら当然日本刀の1本や2本は持っておくべきだ）。そこからはもう拳×剣の戦いである。さすがに、『オールド・ボーイ』レベルに血なまぐさい描写はないが、ほどほどライトに、ほどほどヘビーにキレッキレのアクションを楽しめるのは美点だろう。前田公輝演じる蘭の元カレ・神谷が強いのは良いとして、細田佳央太演じる組織に恨みを持つメガネのハッカー・成瀬まで強いのには笑ってしまうが、それもまた漫画らしくて良い。

組織幹部役には窪塚洋介と伊藤英明がキャスティングされており、窪塚はミステリアスに観客の興味を引っ張り、そして伊藤はやはり（？）サイコな戦闘狂として映画を盛り上げる。蘭たちグラディエーターを戦わせる現代のブルーブラッド（貴族）、冷血なケダモノだらけの組織には「てめえらの血はなに色だーっ‼」と言ってやりたくなるが、安心してほしい。その色は、蘭がしっかり教えてくれる。