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【配信エンタ】『キャリー』“箱入り娘”が外に出た。パンドラの箱の外に。

この映画は、つまり―
  • ・古典的で現代的なホラーの旗手、マイク・フラナガン監督によるドラマ化
  • ・純真無垢なキャリーを塗り潰す赤と黒
  • ・閉じた物語から開いた物語へ

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◆配信中の注目作

『キャリー』
配信先:Amazonプライム

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画よりドラマの印象が強いかもしれないが、ホラー好きとしては監督マイク・フラナガンの名を覚えておいて損はない。彼はホラーの古典的名作を、いくつも現代に蘇らせてきた。いや、現代に生まれ変わらせてきた、と言った方が正しいだろうか。シャーリィ・ジャクスンの『山荘綺談』をドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』に。ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』に。エドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』もその中のひとつだ。そして、ちょうど今週予告編が公開となったが、今度はあの『エクソシスト』シリーズの新作映画『The Exorcist: Martyrs(原題)』をスカーレット・ヨハンソン主演で撮っている。同作に関しては、2023年の『エクソシスト 信じる者』から始まる“はず”だった新シリーズの代わりで、まさに瀕死の『エクソシスト』を現代に蘇らせるべく作られたものだが。

これだけでも十分注目に値する監督ながら、フラナガンのキャリアをざっくりと捉えた時、この「名作の現代的再構築」はふたつある軸の一方でしかない。もう一方の軸は、スティーヴン・キング作品の映像化だ。幼少期に全キング作品を読破したと豪語する彼は、2017年にNetflix配信の『ジェラルドのゲーム』で初めてキング作品を映画化し、その後も怒涛の勢いで恐怖の帝王の名を改めて世に知らしめていく。『ドクター・スリープ』で、前作となる『シャイニング』の衝撃までも含め再び観客に味わわせたかと思ったら、全く対照的な『サンキュー、チャック』で、まさか、観客を感動させてしまった(さらに言うと悪名高い『ミスト』の映画化も決まっているが、この辺りで止めておこう)。そして今回、彼は名作の現代的再構築とキング作品の映像化を同時にやり遂げることになった。ブライアン・デ・パルマ監督も手掛けた『キャリー』のドラマ化だ。

キャリーことキャリエッタ・ホワイトは10代の少女で、狂信的な母親とふたりだけで閉鎖的に暮らしている。男性にトラウマを抱えた母親は、日に日に大人に近づいていくキャリーの女性的な部分を忌み嫌い虐待を繰り返す毒親だ。キャリーには秘められたテレキネシスがあり、ストレスが限界を超えた時、衝動が周囲を破壊する力と化す。母親が恐れていた“その日”が訪れ、キャリー自身より流れた血は、やがて学校中を巻き込んだ赤い海へと繋がっていく……。これが『キャリー』の基本的なあらすじだ。デ・パルマ版でキャリー役を務めたシシー・スペイセクが実にホラーにぴったりの風貌で、観客はその弱々しい姿に感情移入を誘われながらも、覚醒後の眼力には射殺されそうだと恐れ慄く作りだった。失礼な言い方になっているかもしれないが、だからこそ終盤のプロムのシーンで彼女は確かに美しく輝いて見える。それが荒れ狂う直前の海の凪だとしても。

2013年にはクロエ・グレース・モレッツ主演でリメイクされているが、これはかなり意外なキャスティングだった。今回のドラマ版で、1400人の中からキャリー役に大抜擢されたサマー・H・ハウエル(12月公開予定のアクション映画『NORMAL ノーマル』にも出演)も、スペイセクよりはモレッツに近い。しかし、基本的な人間関係はそのままに舞台を現代に移したことで、外見的な特徴は些細な問題になった。隔絶された環境で生きてきたキャリーは、父の事故死により社会から認知され、強制的に学校に通わされる。スペイセクのキャリーのように神経質そうには見えないが、彼女のあまりに世間知らずで好奇心旺盛な様子は、時に他の生徒だけでなく我々観客までも苛立たせそうになるほどだ。非はないものの“異質”以外の何者でもない彼女はやはりいじめの対象となり、デ・パルマ版の時代にはあり得なかった苦境に立たされる。SNSでの拡散だ。純粋で真っ白だったキャンバスは、瞬く間に赤と黒の絵の具で塗り潰されていく。

ハウエルはスペイセクに似ていないと言った。しかし面白いのが、母親マーガレットを演じるサマンサ・スローヤンだ。何と、彼女の方こそがスペイセクを思わせる容姿をしている。娘を守るためと言いながら、陰謀論に染まった思考(やはり現代的だ)で学校にクレームを入れ、キャリーをコントロールしようとする姿は何とも悍ましい。また、様々な“普通”がキャリーにとっては“異質”で、あらゆる物事が恐怖の対象になる。このキャリーの主観的な恐怖の描写がホラー監督であるフラナガンの腕の見せ所になっている。本来なら若者特有のあり余る活力がテレキネシスとして負の方向にのみ出力されるため、次の瞬間には何が起こるか分からない。デ・パルマ版だけを知っていると、この非常に閉鎖的なはずの話が1話の終盤で思いもよらないスケールに広がっていきそうな予感に驚くだろう。いじめっ子にも同情したくなるディテールが描かれているものの、1話冒頭ですでに、我々のよく知る赤い炎と黒い煙の結末が仄めかされている。辿り着くのは果たしてそこか、その先か? 全8話はすでに配信中。答えは、すぐそこにある。

【ストーリー】
父親の突然の死により、公立高校という厳しい環境に身を置くことになったキャリー。そこで地域社会を揺るがすネット上のいじめ騒動、SNS時代の容赦ない同調圧力と何気なく人を傷つける風潮、そして思春期とともに目覚め始めた謎のテレキネシス能力という三重の試練に向き合うことを余儀なくされる。

【キャスト】
サマー・H・ハウエル、サマンサ・スローヤン、シエナ・アグドン、アリソン・ソーントン、ジョエル・オウレット、ジョシー・トータ、アーサー・コンティ、タライア・ドゥデク、アンバー・ミッドサンダー、マシュー・リラード 他

【スタッフ】
配信開始日:2026年10月7日(全8話一挙配信)
製作:Amazon MGMスタジオ
ショーランナー / 脚本 / 製作総指揮:マイク・フラナガン
製作総指揮:スティーヴン・キング
原作:スティーヴン・キング『キャリー』(1974年)

 

★配信エンタの過去記事はこちら

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