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【配信エンタ】『センチメンタル・バリュー』このドアの向こうは、あらゆる時代、あらゆる場所に繋がっている。

この映画は、つまり―
  • 白夜に一際輝く星、レナーテ・レインスヴェ
  • ヨアキム・トリアーとの三度目の黄金タッグ
  • 心の離れた父娘の、数十年ぶりの“家族写真”

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◆配信中の注目作

『センチメンタル・バリュー』
配信先:U-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

今最も勢いがあるスターは、ハリウッドの俳優ではない。イギリスやフランスの俳優でもない。北欧、ノルウェー出身の彼女の名はレナーテ・レインスヴェ。超話題作『バックルームズ』を見た方ならすでにご存じだろうし、同じA24作品の、セバスチャン・スタンと共演したシニカルなルッキズム・コメディ『顔を捨てた男』で知った方も多いだろう。または、北欧映画もチェックしている方ならば、『わたしは最悪。』で出会っただろうか。未だに北欧映画をホームにしながら、英語圏のものだと実質A24作品のみの出演で世界的なスターとなるに至った興味深い俳優だが、さらにキャリアを遡ると面白い事実が掘り起こされる。レインスヴェのデビュー作は、主演ではないが15年前のヨアキム・トリアー監督作品『オスロ、8月31日』だ。そして彼女がカンヌ国際映画祭で女優賞に輝いた『わたしは最悪。』を含め、本作『センチメンタル・バリュー』はトリアー監督との三度目のタッグとなり、本作は同映画祭で最高賞パルム・ドールに次ぐグランプリを受賞した。

日本では、これが『バックルームズ』と同年の公開であることに運命的なものを感じる。なぜなら、どちらも「家の記憶」の映画だからだ。『バックルームズ』では、過去に見たような、または全く覚えのないような家たちが現実の劣化コピーとなって異空間に広がっている。対して、『センチメンタル・バリュー』に登場するレインスヴェ演じるノーラの生家は、それ自体が主人公と言って良いほど重要な存在である。実際、冒頭で家を擬人化してストーリーが語られ始めるほどだ。老いた母が亡くなり、ともに葬儀を執り行った妹のアグネスとノーラのもとに、幼い日に家を出ていった映画監督の父グスタヴが帰ってくる。その本当の目的は、舞台恐怖症に悩まされながらも優れた舞台俳優として成功しているノーラに、新作の主演のオファーをするためだった。しかも撮影場所は、両親の不和という寒々しい記憶が残る、しかしセンチメンタル・バリュー(思い入れ)のあるこの家だという。

不躾な提案に当然怒るノーラの起用を諦め、グスタヴが目を付けたのは自身のファンでもあるスターのレイチェル(エル・ファニング)。レイチェルは嬉々としてグスタヴの脚本を読み込むが、明らかにモデルがいそうな主人公のキャラクターに戸惑いを覚えていく……。映画監督が主要人物として登場するドラマでは、監督自身の苦しみが作品に反映されているという筋書きがよく出てくる。本作も例に漏れず、この家のある一室は、未だにグスタヴの心を支配し続けている。それがアーティストとして成功しながらも、人間としてはどこか壊れている彼と、間接的にノーラの人間性までもを形作り、彼に作品を書かせているのだ。筆者が好きな歌詞で、ロックバンドのTHE BACK HORNが「表現は所詮排泄だ」と歌っている。アートに価値はないのかもしれない。しかし、ある人にとっては生きるために必要な行動なのかもしれない。毒素にも近い想いを吐き出すことこそが。

父との思い出のない姉妹にとって、例えばアグネスにとっては幼少期に出演した父の作品が、例えばノーラにとってはこの新作が、家族写真の代わりになる。床の傷、壁の凹みとともに家族のトラウマの連鎖を記憶してきたこの家は、ドラマが進むごとに新たな一面を見せる。そうして、ハウスは彼女らのホームへと生まれ変わっていく。時々、主にグスタヴが不謹慎すぎて笑ってしまう瞬間がありつつも、じっくりと演技で見せていく作品で、俳優の力を再認識させられる。だが同時に、“本物”にしか演じられない、演技では到達し得ない領域についても描かれているのが印象的だ。遠く離れた北欧の地の話であっても、確かに近くに、思い入れまで感じられる。やはり世界は、“家”という空間を介して繋がっているのかもしれない。

【ストーリー】
オスロで俳優として活躍するノーラと、家庭を選び息子と夫と穏やかに暮らす妹アグネス。そこへ幼い頃に家族を捨てて以来、長らく音信不通だった映画監督の父・グスタヴが現れる。自身15年ぶりの復帰作となる新作映画の主演をノーラに依頼するためだった。怒りと失望をいまだ抱えるノーラは、その申し出をきっぱりと拒絶する。ほどなくして、代役にはアメリカの人気若手スター、レイチェルが抜擢。さらに撮影場所がかつて家族で暮らしていた思い出の実家であることを知り、ノーラの心に再び抑えきれない感情が芽生えていく──。

【キャスト】
レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング 他

【スタッフ】
監督:ヨアキム・トリアー 『わたしは最悪。』
脚本:エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー
配給:NOROSHI ギャガ
英題:SENTIMENTAL VALUE/2025年/ノルウェー/カラー/ビスタ/5.1ch/133分/字幕翻訳:吉川美奈子/レーティング:G

© 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA
SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO
FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

公式サイト:https://gaga.ne.jp/sentvalue_NOROSHI/

 

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