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『エイペックス・プレデター』あなたを“殺す”ものがあなたを強くさせる。

この映画は、つまり―
  • 断崖絶壁に、怒涛の渓流に、殺人鬼に殺される!
  • シャーリーズ・セロン本人が演じたロッククライミング・スタント
  • サバイバルとは、強く生き抜くこと

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◆配信中の注目作

『エイペックス・プレデター』
配信先:Netflix

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

筆者は高所恐怖症である。だからと言って、ガラス張りのエレベーターに乗れなかったり、飛行機の窓から外の景色を覗けなかったりはしない。人々が日常会話の中で、気軽に「トラウマ」という言葉を使うのに似ている。だが実際、筆者が高さ数メートルのはしごに登るのも断固拒否したくなるくらい、それほどでもない高さであっても、いやむしろその中途半端な高さにこそ恐怖を抱いているのは否定しようもない事実だ。そして、筆者のような方には本作『エイペックス・プレデター』の鑑賞は地獄の体験になるだろう。

「地獄」と言えば、本当に偶然だが、本作の舞台は先週ご紹介した『地獄のサーファー』に引き続きオーストラリアの自然だ。ただし、同作が翡翠のごとき海を描いていたのに対し、本作で大写しにされるのは琥珀のごとき断崖。主人公サーシャとパートナーのトミーはロッククライマーで、文字通り“一歩”間違えればすぐさま数百メートル下へ滑落するような絶壁を楽しそうに登っていく。筆者からしてみれば、はっきり言って異常……もとい、非常に尋常でない者たちだ。しかし、サーシャは自然の脅威をほんの少し見誤り、それが彼女に(正しい意味で)トラウマを残す。

傷を癒すには足りないほどの時が過ぎ、サーシャは再び畏敬の念を抱かざるを得ないほどの大自然の中に身を投じる。彼女は単なるアドレナリンジャンキーなのか、何か別の目的があるのか。生還できない者も出ているような険しいルートを選び、カヤックで渓流を下りながらどこかを目指していく。サーシャにとっては、自然それ自体が残酷な殺人鬼だ。ところが本作はそれだけでは終わらない。邦題を見れば分かるように、さらに別の頂点捕食者(エイペックス・プレデター)が現れる。本物の殺人鬼だ! これまで高所や激流にハラハラしていた観客は、お次はクロスボウを構えながら命懸けの追いかけっこをねだってくる異常なサイコパスにヒヤヒヤさせられることになる。

メガホンを取ったバルタザール・コルマウクルは、実際の遭難事故を映画化した『エベレスト 3D』やイドリス・エルバがライオンと格闘する『ビースト』など、サバイバルがテーマの作品で印象的な監督だ。主演は現在50歳(とは思えない)のシャーリーズ・セロンで、彼女が著名なロッククライマーであるベス・ロッデンとのトレーニングで習得したスキルを存分に活かして撮影された緊迫のスタントシーンは、高所恐怖症の観客の心臓を幾度も止めようとしてくる。サーシャにさらなるアドレナリンを与えてくれる殺人鬼役は、何とあの『キングスマン』のタロン・エジャトンだ! これまでのイメージを覆す怪演に、思わず背筋が凍る……いや、虫酸が走る。

とは言え、本作が本当にやりたかったのはマンハントものではないように感じる。本作の原題は邦題よりシンプル、『Apex(頂点)』だ。これは、宇宙からの決死の帰還を描いた邦題『ゼロ・グラビティ』という映画が、最終的に原題の『Gravity』に至る物語だったのにも似ている。それはそうだ。サイコパスなど、自然の前ではあまりに矮小すぎる。それに、驕り高ぶる者より本当にしぶといのは、高き壁を下から一歩一歩よじ登って来られる者なのだ。偽りの捕食者は、真の強者の糧となる。それが自然の摂理というものだろう。

【ストーリー】
アカデミー賞受賞のシャーリーズ・セロンが主演の“狩るか、狩られるか”のサスペンス。悲しみを抱えながらオーストラリアの大自然でカヤックに挑む冒険家が、残酷な狩りの標的となる。

【キャスト】
シャーリーズ・セロン、タロン・エジャトン、エリック・バナ 他

【スタッフ】
監督:バルタザール・コルマウクル
製作:シャーリーズ・セロン、バルタザール・コルマウクル 他

 

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