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『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』嵐の中、友情の船は間もなく転覆する。友人に値しない人でなしは一体誰だ?A24製作の人狼系ホラーコメディ!

この映画は、つまり―
  • A24製作の人狼系ホラーコメディ!
  • “友人”じゃなくなった瞬間に犯人扱いされる恐怖
  • スマホの光で照らせる真実なんてたかが知れている

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◆配信中の注目作

『ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(2023)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

こんな英語なぞなぞがある。「決して沈まない船はなーんだ?」…。絶対に沈む船なら潜水艦だし、「決して沈まない」と言われていたタイタニックは結局ああなったので違うとして…。正解を発表しよう。「フレンドシップ(友情)」だ。しかし、現実に照らせばこの答えは間違っている。やはり簡単に沈没するからだ。

本作『Bodies Bodies Bodies/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』は、A24製作のとびきり意地悪で居心地が悪いホラーコメディである。大枠としては、陸の孤島と化した豪邸が舞台のクローズド・サークルものだ。主人公のソフィーたちは、ハリケーン・パーティ(ハリケーンの中、避難という建前で友人宅に集まって騒ぐ伝統)で“BODIES BODIES BODIES”というゲームを始める。まず、くじ引きで本人にのみ分かるよう“殺人鬼”を決め、部屋を暗くした後に全員がライトを持って屋敷中に散らばる。“殺人鬼”はこっそりと誰かの背中に触れにいき、触られた者は死亡扱いになる。死者を発見した者は「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ(死体だ)!」と叫び、そこからは電気をつけて推理パートに移行。自身も怯えた仲間のフリをしている“殺人鬼”が誰かを当てるのだ。

投票で多数派から“殺人鬼”と疑われた者は追放される。正しい人物を追放できたら“生存者”たちの勝ち、皆を騙せたら“殺人鬼”の勝ち。いわゆる「人狼」系のゲームだ。しかし、嵐で本当に屋敷は停電し、単なるお遊びのはずが本当に死者が出てしまう。犯人は友人の中の誰か。電波も途絶え、互いに疑心暗鬼になっていく若者たちは、死ぬ気で暗闇に潜む鬼を当てなければならない…。ゲームが現実になってしまう映画と言えばそれこそ『ジュマンジ』などもそうだが、本作はA24らしい様々なひねりが効いている。男性と女性、白人と黒人、異性愛者と同性愛者、富者と貧者、“殺人鬼”と“生存者”…マジョリティとマイノリティが容易く入れ替わり、話がどこに向かうのか分からない。

本作で一番恐ろしいのは、“殺人鬼”ではない。友情なるものの脆さだ。すっかり人狼ゲームの思考回路になっている面々は、ミステリーらしい確かな証拠集めからではなく、発言の揚げ足取りや明かされていく誰かの過去の行いの印象によって、とても推理とは呼べない当てずっぽうの思いつきで犯人探しをする。大抵映画では、白日の下で本音を明かすとそのキャラクターは信用される。しかし本作で白日は見えない。この暗闇の中で本音を明かすと、「本当はそんな風に思っていたなんて。信用できない!」と思われてしまう。友人だったはずなのに、今さらひどく表面的な情報だけで判断される。直に対面しながらも、スマホ越しにコミュニケーションをとっているのと変わらないのだ。

かくして“船”は沈んでいく。豪雨に耐えられないほど“船”の底が浅かったからか。船員同士が生存を賭けて言葉のナイフと言霊を込めた銃で殺し合ったからか。「電波がないと動けない現代のZ(ゾンビ)世代はこれだから…」と鼻で笑うのは簡単だが、例え友人(と思っている人)が相手でも、顔が見えない中でのやり取りは難しい。いつでも、雨上がりの水面のように澄み切った心の目で世界を見ていたいものだ。

【ストーリー】
引っ越してきたばかりの家で記憶喪失の幽霊を見つけ、SNSで一躍有名になった一家。だがそのせいで、彼らは謎に満ちた政府機関に目をつけられることに。

【キャスト】
デヴィッド・ハーバー、アンソニー・マッキー、ジャヒー・ディアロ・ウィンストン、ティグ・ノタロ、エリカ・アッシュ、ジェニファー・クーリッジ、ナイルズ・フィッチ、イザベラ・ルッソ、スティーヴ・コールター 他

【スタッフ】
監督・脚本:クリストファー・ランドン

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